論文名 | レビー小体型認知症の臨床診断基準;次期改訂に向けて |
著者名 | 小阪憲司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):133-138,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症という病名と診断基準が公表されたのは1996年であり,わずか十数年の間にこれが国際的によく知られるようになり,アルツハイマー型認知症に次いで2番目に多い認知症といわれるようになった.2005年にはその改訂版が発表されたが,まだいくつかの問題点がある.2012年に開催される予定である第5回国際ワークショップにおいて新たな改訂が行われる可能性があり,次期改訂に向けての問題点のいくつかを指摘した. |
キーワード | レビー小体型認知症,臨床診断基準,CDLBガイドライン改訂版,問題点 |
論文名 | レビー小体型認知症の神経病理 |
著者名 | 藤城弘樹,井関栄三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):139-146,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)の病理学的特徴と病理診断基準を示し,レビー病理とともにアルツハイマー病理がDLBの臨床像に関与していることを述べた.また,DLBの臨床経過と病理学的背景について考察するために,レビー病理の脳内分布とレビー病理の進展過程におけるアミロイドの関与を示し,DLBと認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の相違について概説した.DLBの多くが,レビー病理の新皮質型であると同時にアルツハイマー病理を伴う通常型に相当する事実は,臨床経過を反映したものであると考えられる. |
キーワード | レビー小体型認知症,神経原線維変化,老人斑,病理診断基準,アルツハイマー病 |
論文名 | レビー小体型認知症の認知機能障害 |
著者名 | 下村辰雄 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):147-154,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)では,記憶,視知覚・視覚構成・視空間能力,注意,遂行機能などが広範に障害されるが,アルツハイマー病(AD)と比較すると記憶障害が軽いが,視覚認知障害および視覚構成/視空間障害が強く,より低次の視知覚も障害されている.エピソード記憶障害はADより軽く,想起障害の関与が大きい.注意障害はADより広範で持続性・選択性・分配性注意のすべてが障害されている.DLBでは認知機能の変動が特徴的で,より多面的にその変動について聴取する必要がある. |
キーワード | レビー小体型認知症,認知機能障害,認知機能の変動 |
論文名 | レビー小体型認知症の精神症状 |
著者名 | 水上勝義 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):155-160,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)には高頻度に精神症状が出現する.とくに幻視,レム睡眠行動障害,誤認症状はDLBにしばしばみられる症状であり,また他の認知症やうつ病からDLBを鑑別する際に有用な症状である.老年期うつ病とDLBの鑑別はしばしば困難である.DLBの前駆症状としてうつ症状がみられることも少なくない.高齢のうつ状態の患者に対してはDLBの可能性を念頭において診療を進める必要がある. |
キーワード | レビー小体型認知症,幻覚,妄想,レム睡眠行動障害,身体表現性障害,うつ |
論文名 | レビー小体型認知症の神経症状 |
著者名 | 工藤由理,今村 徹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):161-167,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)ではパーキンソン症状がみられる.その特徴として,寡動や筋強剛が高率である一方,安静時振戦の頻度は低い.また,表情の乏しさや姿勢反射障害はパーキンソン病(PD)よりも目立つ.レボドパは比較的良好に服用できるが,PDほど有効ではない.ドネペジル塩酸塩はmotor scoreもADLも低下させない.在宅認知症患者の年間転倒発生率は正常高齢者の約2倍に当たるが,DLBでは転倒がとくに多く,パーキンソン症状に加えて構成障害と抗不安薬・睡眠導入薬服用が危険因子であった.とくにDLBの視覚認知障害合併例では,歩行時に視覚に関する情報処理が不適切なまま,床からの感覚情報の処理や目的への遂行機能を働かせることになり,低下している注意容量の限界を超えることでバランス障害を悪化させ,転倒する可能性があると考えられた. |
キーワード | パーキンソン症状,転倒,バランス障害,視覚認知障害,注意障害 |
論文名 | レビー小体型認知症の画像検査;MIBG心筋シンチグラフィーも含めて |
著者名 | 吉田光宏,山田正仁 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):168-175,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症の画像検査では,脳核磁気共鳴画像(MRI)における側頭葉内側および被殻の萎縮,PET検査では,後頭葉の糖代謝低下,および18F-ドーパによる線条体の取り込み低下,PIBを用いたアミロイドイメージングによる大脳皮質への集積,脳血流SPECTにおける後頭葉脳血流低下,123I-MIBG心筋シンチグラフィーにおける交感神経節後機能の低下などが特徴的である. |
キーワード | MRI,脳血流SPECT,脳代謝PET,MIBG心筋シンチグラフィー,レビー小体型認知症(DLB) |
論文名 | レビー小体型認知症の薬物療法 |
著者名 | 橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,22(2):176-183,2011 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)の治療の標的となる臨床症状には,中核症状である認知機能障害,幻覚・妄想・うつ・睡眠障害などのBPSD,パーキンソン症状,便秘や起立性低血圧などの自律神経症状が挙げられる.DLBの1つの症状を改善させる治療薬は一方で他の症状を悪化させる可能性があるため,DLBの薬物治療においては,「DLBだからドネペジル」のような画一的な治療ではなく,患者ごとに治療の標的とすべき臨床症状を見定め,副作用の出現に細心の注意をはらいながら治療を行うことが求められる. |
キーワード | レビー小体型認知症,薬物療法,ドネペジル,ケア |