老年精神医学雑誌 Vol.13-12
論文名 老人福祉施設におけるケアを考える
著者名 本間 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1389-1391,2002
抄録 (1)安全かつ安心して生活できることが老人福祉施設におけるケアの意義と考えられる.
(2)痴呆のある高齢者であっても自己決定権は尊重されなければならない.
(3)そのための有用な手段である成年後見制度がないがしろにされていないか.
(4)今後の単身高齢者あるいは虚弱高齢者世帯の増加を考えれば早急に対応が進められる必要がある.
(5)保健・医療・福祉関係者のなかでも施設関係者が率先して普及・啓発を行う意義は大きい.
キーワード 老人福祉施設,痴呆性高齢者,自己決定権の尊重,成年後見制度
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論文名 老人福祉施設におけるリスクマネジメント
著者名 柴尾慶次
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1392-1395,2002
抄録 老人福祉施設のリスクは,生活施設であるかぎり普通の生活同様に発生し,リスクの現実化による損失を最小限に抑えること,そのための予防と事後対応がリスクマネジメントの柱である.自立支援や自己決定の尊重は,ケアの質を向上させると同時に,リスクの幅を拡大する.ケアプランに基づく援助は,そのケアのエビデンスを明確にし,その範囲における責任,義務関係を明らかにする.抑制廃止と介護事故の両方の課題を解決するためにも,老人福祉施設のリスクマネジメント体制づくりが欠かせない.
キーワード 生活施設,抑制廃止,介護事故,エビデンス,ケアプラン
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論文名 老人福祉施設における利用者の最近の動向
著者名 遠藤英俊,水野 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1396-1398,2002
抄録 (1)3タイプの介護施設に約68万人の入所者の存在がある.
(2)介護施設の入所者の要介護度は平均で3〜4程度,施設によっては利用者層は異なり,施設側も対象を選択している.
(3)介護保険の開始後,介護施設の待機者の急増は在宅療養の困難と裏腹である.
(4)介護施設もユニットケア化が徐々に進み,ケアのパターンが変化しつつある.
キーワード 要介護度,ユニットケア,DCM(痴呆ケアマッピング)
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論文名 老人福祉施設における身体的ケアの実態と問題点
著者名 中村紫織,繁田雅弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1399-1404,2002
抄録 老人福祉施設には特別養護老人ホーム,養護老人ホーム,軽費老人ホーム,ケアハウス,有料老人ホームなどがあり,それぞれの特色を述べた.高齢者の身体的ケアにおける注意点として食事,入浴,整容,排泄,移動,寝たきり,褥瘡,感染症,緊急時の対応,高齢者の尊厳についてふれた.医療を必要とする要介護高齢者をどの施設で療養させるのが最も適切なのか,混乱している現状を踏まえ,医療・福祉施設の機能分担について論じた.
キーワード 老人福祉施設,特別養護老人ホーム,誤嚥,骨折,褥瘡
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論文名 老人福祉施設における心理的ケアの実態と問題点;老人保健施設の場合
著者名 三宅貴夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1405-1411,2002
抄録 老人保健施設は介護保険施設のひとつとして介護保険制度のなかで不可欠な重要な施設である.この施設には在宅の高齢者の生活を支える役割が期待されている.この施設の役割を踏まえた高齢者への心理的ケアは重要である.心理的ケアに関係する老人保健施設の背景,実態,問題点および提言を述べた.とくに職員の心理面の教育を強調した.加えて家族への心理的ケア,職員の労働条件や生活環境の整備の必要性についても述べた.
キーワード 高齢者心理,痴呆性高齢者,老人保健施設,精神障害,家族
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論文名 老人福祉施設における身体的ケアの新しい試み
著者名 鈴木せん,堀内ふき
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1412-1418,2002
抄録 老人福祉施設における身体的ケアについて,その健康管理の重要性と,具体的なアプローチについては,褥瘡予防のケアと口腔ケアを中心に述べた.褥瘡のケアは,基本的なケアの実践にて予防できるという考え方で,褥瘡ケアを例にしながら離床,リハビリテーション,失禁,栄養状態改善などの具体的な実践方法を述べた.口腔ケアについては,食事という健康観察の視点と,生活の楽しみ,さらには施設の高齢者の健康管理で重要な,誤嚥性肺炎の予防という視点からその実際を述べた.
キーワード 老人福祉施設,褥瘡予防,リハビリテーション,口腔ケア,誤嚥性肺炎
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論文名 老人福祉施設における心理的ケアの新しい試み
著者名 黒川由紀子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1419-1423,2002
抄録 (1)痴呆症患者の現実見当識の歪みをやみくもに訂正せずに,痴呆症をもつ高齢者の心理的現実を重視するヴァリデーション・セラピーの現状と課題を論じた.
(2)わが国においては,老人福祉施設における専門的心理的ケアは不十分であるものの,回想法,アートセラピー等が実践されている施設もあり,ボランティアによる高齢者との交流など,さまざまな専門家や地域住民による,構造化されない生活の場におけるゆるやかな心理的ケアの試みがなされていることは注目に値し,こうした広義の心理的ケアに言及した.
(3)老人福祉施設における,精神科医や臨床心理士等の専門家による心理的ケアはきわめて不足しているといわざるをえず,精神症状やさまざまな問題を有する高齢者や家族に対する専門的心理的ケアの拡充が課題となっている点を指摘した.
キーワード ヴァリデーション・セラピー,尊厳あるケアの具体化,構造化されない心理的ケア,専門的心理的ケアの拡充の必要性
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論文名 高齢者福祉従事者への研修プログラムのあり方
著者名 加藤伸司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(12):1424-1429,2002
抄録 高齢者福祉施設における研修の目的は,その研修結果が直接的・間接的に高齢者のケアに生かされることにある.具体的な研修形態としては,施設外研修と施設内研修があり,外部研修では,研修企画側,研修講師,研修受講者を選定する管理者,研修受講者にそれぞれの課題がある.また内部研修にはOFFJTとOJTがあり,これらを組み合わせて行っていくことが効果的である.今後の研修のあり方としては,「教わる研修」だけではなく,「考える研修」を取り入れていくことが重要である.
キーワード 施設外研修,施設内研修,研修の課題,OFFJT,OJT
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