論文名 | 大脳辺縁系からみた自律神経・内分泌系と精神症状 |
著者名 | 佐藤昭夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1237-1242,2002 |
抄録 | 本稿では, (1)情動と大脳辺縁系研究の歴史的背景 (2)大脳辺縁系の構成要素と線維連絡を含む機能的解剖 (3)大脳辺縁系からの情動の表現 (4)脳内の広範囲な部位に投射する神経系と大脳辺縁系 について解説する. |
キーワード | 大脳辺縁系,情動,情動の表現,自律神経系,内分泌系 |
論文名 | ホメオスタシスの三角と老年期の精神症状 |
著者名 | 平井俊策 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1243-1248,2002 |
抄録 | 生体にはその内部環境の恒常性を継続する機構があり,ホメオスタシスとよばれる.自律神経系と内分泌系がこれに関係しており,神経体液性調節とよばれてきたが,近年はこれに免疫系が加わりホメオスタシスの三角とよばれている.神経系は神経伝達物質,内分泌系はホルモン,免疫系はサイトカインで情報を伝達している.現在,精神疾患は神経伝達物質の面から検討されていることが多いが,ホメオスタシスの三角という立場からは,さらにホルモンやサイトカインとの相互関係から統合的に検討されるべきである.老化はホメオスタシスの崩壊とされ,ホメオスタシスのひとつの特徴である生体リズムの乱れが老化に伴ってみられるので,老年精神医学の領域では,とくにこのような見地からの研究が必要である. |
キーワード | ホメオスタシスの三角,神経体液性調節,老年精神医学,生体リズム |
論文名 | 老年期うつ病と内分泌 |
著者名 | 稲見康司,宮岡 剛,堀口 淳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1249-1254,2002 |
抄録 | 近年,うつ病にみられる神経内分泌の障害についての報告が増加しており,自律神経症状,食欲低下,性欲低下,月経異常などといったうつ病の身体症状との関連で注目されている.とくに視床下部―下垂体―副腎皮質(HPA)系の機能亢進が,加齢に伴うグルココルチコイド(GC)の上昇とGCのフィードバックによる制御不全をもたらして,うつ病の第一義的な原因ではないとしても,高齢者のうつ病の病態形成に関連しているものと考えられる. |
キーワード | うつ病,神経内分泌学,神経免疫内分泌学,グルココルチコイド,副腎皮質ホルモン放出ホルモン |
論文名 | 老年期うつ病と自律神経機能 |
著者名 | 鈴木聡子,端詰勝敬,坪井康次 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1255-1260,2002 |
抄録 | 抑うつ症状をもつ患者は,年齢とともに増加する傾向がある.老年期のうつ病においては,年齢が高いために,心理社会的背景,身体機能,また自律神経系にも変化をもたらす.自律神経系の加齢による変化によって,患者が訴える身体症状が特徴的になっている側面があると思われる.老年期のうつ病患者の特徴,および加齢による自律神経の機能変化を概説する. |
キーワード | 老年期,うつ病,自律神経変化,特徴,心理社会的変化 |
論文名 | アルツハイマー病と自律神経機能 |
著者名 | 勝沼英宇,新 弘一,羽生春夫,桜井博文,阿部普衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1261-1270,2002 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)は発見されてから,すでに1世紀にわたって記憶,認知障害とアルツハイマー神経原線維変化(PHF,NFT),老人斑を主病変とする原因,治療が不明の高齢者疾患であるが,近年,生物生化学的研究の進歩によりPHFはタウタンパクのリン酸化異常,老人斑はアミロイドbタンパクであることが解明されている.一方,痴呆の発症に認知,記憶障害が先行または随伴することから,脳神経−内分泌系,視床下部大脳辺縁が注目され,痴呆発症と自律神経機能との関連性を検討する必要性が生じ,AD患者の自律神経機能検査,脳循環動能と自律神経系について検討した結果,ADの発症,経過に自律神経機能が直接,間接関与することが示唆された. |
キーワード | アルツハイマー病,認知,記憶障害,視床下部/大脳辺縁,自律神経系,脳自動調節機能 |
論文名 | アルツハイマー病と女性ホルモン |
著者名 | 一瀬邦弘,大蔵健義 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1271-1279,2002 |
抄録 | エストロゲンのアルツハイマー病(AD)治療薬としての役割は現段階で否定的である.補充療法中の閉経女性群でAD発症の危険率が低く,治療薬として期待された.小規模治験で好成績が報告されたが,大規模治験では否定的で,その差は連続投与による受容体感受性の鈍化などによると推測された.アメリカで健康閉経女性に対するホルモン投与前向き計画(WHI)が実行中であったが,冠動脈疾患に予防効果を認めず,乳がん発生が予測を上回ったため一部が中止された.エストロゲンはAD治療薬としては否定的であるが,投与法を改善しAD発症の予防薬としての検証の余地が残る. |
キーワード | エストロゲン補充療法,ホルモン補充療法,アルツハイマー病,痴呆,エストロゲン受容体 |
論文名 | アルツハイマー病とメラトニン |
著者名 | 松原悦朗,東海林幹夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1280-1284,2002 |
抄録 | メラトニンはアルツハイマー病(AD)患者脳に沈着するアミロイドβタンパク(Aβ)の高次構造を修飾し,その神経毒性とアミロイド形成を制御し,さらに抗酸化作用をもつ強力な神経細胞保護薬であることがin vitroで明らかとされている.さらにAD患者脳においてはメラトニンが著減していることから,その病態形成にも密接な関連があると考えられ,現在AD治療実現に向け,ADモデルマウス(Tg2576)でメラトニンの有用性の検討が進められている. |
キーワード | Aβ,メラトニン, アルツハイマー病,抗酸化, アンチアミロイドジェニック作用 |
論文名 | 高齢者の睡眠障害と自律神経・内分泌系 |
著者名 | 大川匡子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,13(11):1285-1296,2002 |
抄録 | 高齢者にみられる睡眠障害について内分泌系,自律神経系リズムを中心に述べた.この背景には多種の内分泌ホルモンの変動がみられ,睡眠を介して相互に関連している.多くの内分泌ホルモンには振幅の低下や位相の前進がみられる.成長ホルモン,コルチゾール,メラトニンなどの外因性投与により,睡眠が変化する.これらのホルモンや高照度光は高齢者の睡眠リズム障害を改善させる可能性がある. |
キーワード | 生体リズム,血圧,体温,コルチゾール,メラトニン |