老年精神医学雑誌 Vol.13-10
論文名 医療における高齢者の同意能力
著者名 白石弘巳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1121-1126,2002
抄録 医療における同意能力の基準や判定方法について紹介し,理論上の問題点や,実際の判定に影響を与える因子について述べた.また,高齢者の医療では,アドバンス・ディレクティブや代諾者選任のための制度を整備したうえで,同意能力だけでなく,こうした行為を行う能力の判定も円滑に行えるよう判定基準や判定手続きの整備も進めるべきときにきていることを論じた.
キーワード 同意能力,高齢者,インフォームド・コンセント,代諾,アドバンス・ディレクティブ
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論文名 介護保険制度と高齢者の意思能力
著者名 水野 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1127-1135,2002
抄録 介護保険制度の基本理念として,高齢者の意思・希望の尊重,高齢者自身によるサービス選択,自立支援があげられる.介護保険制度が,特殊ではあれ,契約によって行われているのであれば,当事者の意思能力の有無およびその程度が問題となる.しかし,その評価に際しては,求められる意思能力がその対象の種類や深刻さによって異なる点が大きな課題である.とくに標準的な介護のエビデンスがいまだ乏しい,介護分野においては,意思能力の評価はいまだ困難である.
キーワード 介護保険制度,福祉契約,意思能力,介護サービスの選択,自己決定
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論文名 地域福祉権利擁護事業における意思能力
著者名 五十嵐禎人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1136-1143,2002
抄録 判断能力の不十分な者のための福祉サービス利用援助サービスである地域福祉権利擁護事業の利用契約を締結するための意思能力(契約締結能力)について,東京都社会福祉協議会の契約締結審査会における審査の状況をもとに検討した.審査会による契約締結能力の判定は,(1)利用者本人による明示の利用意思の存在,(2)援助の必要性・有用性,(3)本人の精神医学的状態,(4)本事業以外の手段による本人保護が困難であること,などを総合して行われていることが明らかになった.
キーワード 意思能力,成年後見制度,地域福祉権利擁護事業,高齢者,痴呆
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論文名 成年後見制度と高齢者の意思能力
著者名 岡田幸之,安藤久美子,山上 皓
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1144-1150,2002
抄録 新しい成年後見制度の開始後2年が過ぎ,医師が診断書・鑑定書を作成する機会は増加している.この制度の「各人の多様な判断能力および保護の必要性の程度に応じた柔軟かつ弾力的な措置を可能とする」という主旨を実現していくうえで,医師は疾患診断にとどまらず,障害,背景要因との相互的,相対的な評価をする必要があると考えられる.そのツールとしてWHOによる国際障害分類(ICF)の利用などが有益であることを指摘した.
キーワード 診断,鑑定,国際疾病分類(ICD-10),国際障害分類(ICF)
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論文名 裁判における高齢者の意思能力;法律的検討
著者名 前田 泰
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1151-1157,2002
抄録 財産取引に関する高齢者の意思能力の有無が裁判で争われるケースが急増している.意思無能力の原因は痴呆等の精神障害であるが,裁判所は,障害の内容・程度から直接に意思能力の有無を判定するのではなく,むしろ当該取引の効力を否定することにより障害者本人その他の利害関係人に生じる法的影響を考慮したうえで判定することが多い.最近の裁判例の紹介を通じてこのことを示したい.
キーワード 意思能力,裁判例,法的評価,高齢者,財産取引,精神障害
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論文名 心理検査と意思能力
著者名 松田 修
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1158-1164,2002
抄録 本稿では,神経心理学的検査を用いた研究を中心に,高齢者の意思能力の評価における心理検査の役割について概観した.意思能力の評価では,精神医学的診断や疾患の重症度の検討に加えて,実際の社会生活能力の障害や,特定の法律行為の遂行に必要な能力を検討する必要がある.これらの評価に際しては,心理検査による認知機能の多面的な評価が重要である.近年,こうした観点から,高齢者の財産行為,治療同意,および社会生活機能の遂行に必要な認知機能の検討が試みられている.
キーワード 意思能力,心理検査,財産行為,治療同意,社会生活能力
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論文名 高齢者における民事精神鑑定に関する諸問題;遺言の有効性をめぐる裁判における民事鑑定について
著者名 斎藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,13(10):1165-1170,2002
抄録 1985年以降,遺言書の有効性をめぐる訴訟が増加している.こうした裁判に際し精神科医は,しばしば,すでに故人である遺言者の,遺言作成当時の意思能力について,判定を求められる.遺言能力の判定に際しては,書証の内容に信頼性,公平性の重みをつけて解釈し,分析する必要がある.遺言能力について,能力の量的評価のみならず,遺言の内容や本人をめぐる状況の理解などにも着目して評価する必要がある.
キーワード 遺言,意思能力,民事鑑定
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