論文名 | 超高齢期の認知症の人との出会い |
著者名 | 松下正明 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):231-237,2019 |
抄録 | 初診で出会った90代の認知症の人の事例を紹介しながら,超高齢者の認知症診療における問題点を論じた.超高齢期の認知症の人には,了解可能な行動・心理症状(BPSD)がしばしばみられ,また,身体の疾患や知覚・感覚の障害を伴う例が多いことなど,70〜80代の認知症の人とは異なった特徴がみられたが,本論では,とくに抗認知症薬の効果への疑問や,すでに脳の広範な萎縮が認められることなどを理由に,90代での明らかにアルツハイマー型認知症と思われる事例の治療を積極的に行うかどうかの判断について私見を述べた. |
キーワード | 90代の超高齢者,アルツハイマー型認知症,軽度認知障害,抗認知症薬,BPSD |
論文名 | 超高齢期の認知症の疫学と社会状況 |
著者名 | 粟田主一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):238-244,2019 |
抄録 | 世界最高水準の長寿社会では,認知症とともに超高齢期を生きるのは普通のことであり,多くの国民が経験する可能性が高い事実である.超高齢期の認知症の保護因子に関する所見は,認知症の発症予防というよりも,超高齢期の認知機能低下に対するレジリエンスを支持する要因と理解するのが現実的であろう.超高齢期に認知症となり,一人暮らしとなり,低所得低資産になることは特別なことではない.認知症とともに暮らせる豊かな長寿社会を実現するには,超高齢者の最低所得の保障,地域における生活支援ネットワークの構築,入居費用の支援のある,質が担保された生活支援付き住まいの確保が不可欠かと思われる. |
キーワード | 超高齢者,認知症,有病率,最低所得保障,生活支援ネットワーク |
論文名 | 超高齢期の加齢性認知機能低下と認知症 |
著者名 | 江口洋子,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):245-248,2019 |
抄録 | 超高齢者の認知機能低下について考える場合,加齢の影響か,認知症発症の病態であるのかの区別が困難なことが多い.そのため,本稿では健常加齢による認知機能の様態について述べ,認知症発症による認知機能低下との区別について有用な視点について述べた. |
キーワード | cognitive function,neuropsychological test,memory,cohort study,longitudinal,cross-sectional |
論文名 | 超高齢期に発症する認知症と神経病理学 |
著者名 | 尾昌樹,村上知之,広瀬信義,美原 盤 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):249-254,2019 |
抄録 | "・超高齢者の脳病理所見は単一疾患ではなく,いくつかの疾患特有の病理学的変化が混在している(multiple pathology). ・アルツハイマー病の脳病理変化は,超高齢者において無制限に進行するわけではない.ほかの病理学的変化も重要. ・健康で100歳を迎えた人の脳病理所見を研究することは,加齢に伴う脳の変化を考えるうえで重要. ・スーパーセンテナリアン (110歳以上) では, むしろ脳病理変化の進行がみられていないともいえる. " |
キーワード | 百寿,超百寿,脳病理,加齢,長寿 |
論文名 | 超高齢期に発症する認知症と神経画像医学 |
著者名 | 舘脇康子,瀧 靖之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):255-263,2019 |
抄録 | 神経画像検査は認知症の背景病理を反映する客観的バイオマーカーとして必須の地位を築いているが,超高齢期認知症の病態は複合的であり,画像のみでの原因の特定は容易ではない.一方で,器質的疾患でも超高齢者では認知症と似た症状を呈し,適切な治療により認知機能の回復が期待できる.本稿では,超高齢期認知症に頻度の高い疾患の画像所見および,画像が治療方針の選択に直結する意味で重要な疾患の画像や読影に際しての注意点を中心に述べた. |
キーワード | MRI,SPECT,核医学,認知症,超高齢者 |
論文名 | 超高齢期の認知症の精神科医療 |
著者名 | 須貝佑一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):264-271,2019 |
抄録 | 在宅から介護施設まで超高齢者の認知症は確実に増えている.超高齢という身体特性は内臓機能から脳機能に至るまで生理的な衰えが顕著である.加えて超高齢者の社会的な孤立も一段と進む.このことが,超高齢者の認知症の症状の現れ方に大きくかかわっている.とくに認知症の行動・心理症状(BPSD)とされる症状にはうつ状態やせん妄,薬物誘発性の幻覚症も混在し複雑な様相を呈することが多い.超高齢の認知症の人の示す症状の診断と治療には他の年代とは異なる対応が必要である. |
キーワード | 超高齢者,認知症,せん妄,BPSD,社会的孤立 |
論文名 | 超高齢期の認知症の救急医療と身体合併症医療 |
著者名 | 鵜飼克行 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):272-278,2019 |
抄録 | 超高齢期の認知症の救急医療と身体合併症医療の現状と問題点を明らかにするために,これまで多くの調査報告や論文等で重要性が指摘されてきた「認知症の行動・心理症状の治療と身体疾患の急性期治療の両立」について総括し,さらに当科・当院における超高齢認知症患者の診療の実態について調査した結果を提示し,最後に超高齢認知症患者の身体合併症として重要である誤嚥性肺炎と転倒・骨折についての筆者の考えを論述した. |
キーワード | 超高齢期,認知症,身体合併症,急性期治療,認知症の行動・心理症状 |
論文名 | 超高齢期の認知症の在宅医療 |
著者名 | 大澤 誠 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,30(3):279-285,2019 |
抄録 | 在宅医療の目的は,疾患にとらわれることも,年齢にとらわれることもなく,その対象が住み慣れた自宅や地域において,その人らしい人生を送れるように支えることである.その結果として『看取り』があるが,そこには,認知症というスティグマに加え,エイジズム(年齢による差別)が入り込み,治療の差し控えが行われる可能性を秘めている.本稿では筆者が在宅で看取った90歳前後の認知症の人6例を振り返りながら,超高齢期の認知症の在宅医療の特徴と,終末期ケア導入に際しての臨床フレイルスケール(Clinical Frailty Scale ; CFS)の活用について紹介した. |
キーワード | 認知症,在宅医療,看取り,ACP,CFS,終末期ケア |