論文名 | てんかんの分類と診断 |
著者名 | 音成秀一郎・池田昭夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1033-1040,2018 |
抄録 | てんかんは多様な臨床表現型を有する,代表的な脳神経疾患のひとつで,あらゆる年齢層において発症するcommon disease である.未曾有の超高齢社会となったわが国の社会背景に鑑みると,「高齢者てんかん」診療は社会的かつ臨床的にも重要な役割を担う.本稿では,てんかん診療の重要な要素である,「てんかん発作」を正しく評価・分類(発作分類)し,さらにはてんかんのタイプ分け(てんかん分類)を行うことに必要となる臨床的知識,とくに発作時症状について概説した. |
キーワード | 前兆,部分発作,複雑部分発作,全般発作,ネットワーク |
論文名 | 高齢者のてんかん |
著者名 | 赤松直樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1041-1044,2018 |
抄録 | 高齢者はてんかんの好発年齢で,高齢者の1%以上がてんかんを有する.わが国では約40 万人の高齢者がてんかんに罹患している.高齢初発てんかんは,けいれんをきたさない意識消失焦点発作(focal impaired awareness seizure,複雑部分発作〈complex partial seizure〉)が多い.1〜5 分間の意識変容をきたす発作であり,前兆や自動症を伴うことが多い.全身けいれん発作で発症した場合は,焦点発作からの両側性強直間代発作への進展が大部分である.非けいれん性てんかん発作重積状態は持続する意識障害を呈するが,脳波検査をしないと診断は困難である.認知症外来に意識消失焦点発作の患者が受診することがあるので,日常臨床では留意する必要がある. |
キーワード | epilepsy,focal impaired awareness seizure,complex partial seizure,elderly |
論文名 | 認知症と高齢者てんかん |
著者名 | 石垣征一郎, 内山正信, 井藤尚仁, 小野賢二郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1045-1050,2018 |
抄録 | てんかん発病率は高齢者で高いことが明らかにされている.高齢者のてんかんは複雑部分発作が多いことから,認知症と診断されてしまうケースも多い.一方で,てんかん有病率はアルツハイマー病患者で13.4%,レビー小体型認知症患者で14.7%とされ,認知症患者はてんかんの発病率や合併率が高い.抗てんかん薬(AEDs)は認知機能に影響を及ぼすこともあり,また,高齢者は合併症を多く抱えさまざまな薬を服用していることが多いため,新規AEDs は薬物相互作用が少なく使用しやすい. |
キーワード | 認知症,てんかん,高齢者 |
論文名 | 脳卒中とてんかん |
著者名 | 熊谷智昭,木村和美 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1051-1057,2018 |
抄録 | 高齢者てんかんの原因で最も多いのが,脳卒中である.脳卒中後てんかんは,病態生理学的には脳卒中による皮質瘢痕組織がてんかん原性焦点となっていることが多く,大部分が部分発作や二次性全般化である.そのため,部分発作に有効な抗てんかん薬の選択が重要となる.また,脳卒中後の高齢者 は,内科疾患の合併や抗血栓薬などの薬剤を内服していることも多く,有効性だけではなく,併存疾患への影響や薬物相互作用にも注意して薬剤選択を行う必要がある. |
キーワード | 脳血管障害,脳卒中後てんかん,early seizure,late seizure,新規抗てんかん薬 |
論文名 | 高齢者の精神科疾患とてんかん |
著者名 | 岡崎光俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1058-1062,2018 |
抄録 | 高齢者ではいくつかの精神科疾患がしばしば特有の形態をもって出現し,そのなかにはてんかんと鑑別を要するものもある.精神科疾患として治療を受けるも長期間難治に経過する高齢発症のてんかん患者に遭遇することも少なくない.高齢者の精神疾患を診るときにさまざまな症状・器質因を除外することは重要であるが,その候補としててんかんもぜひ頭にいれておきたい.また,高齢者において向精神薬の使用が発作閾値を下げることによりてんかん発作を生じたケースについても例示した. |
キーワード | 精神発作,発作時恐怖,発作後精神病,非けいれん性てんかん重積,向精神薬 |
論文名 | 最近のてんかんの薬物治療―― とくに高齢者についての観点から ―― |
著者名 | 宇佐美清英 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1063-1069,2018 |
抄録 | 高齢発症のてんかんは再発リスクが高いが,薬物治療が奏効する例が多いため,初発の発作確認後に治療を開始することを検討する.他の薬剤とのかかわりにも気を配りつつ,抗てんかん薬は少量から開始してゆっくりと増量し,単剤での治療を目指しpolypharmacy を避けることが治療の成功につながりる.また,概して従来薬は安価で,新規薬は副作用・相互作用が少ないといった特徴があり,患者ごとの背景を十分考慮にいれて薬剤を選択・調節することが肝要である. |
キーワード | 高齢者,抗てんかん薬,治療,新規抗てんかん薬,相互作用 |
論文名 | 高齢者てんかんの外科治療―― VNS と切除てんかん外科治療はてんかんのある高齢者にも導入される ―― |
著者名 | 太組一朗, 山本 仁, 田中雄一郎, 松森隆史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1070-1075,2018 |
抄録 | てんかんは,その3 割の患者には薬剤治療では発作抑制を得ることがむずかしい反面,外科治療による治癒を求めることができる慢性神経疾患である.てんかんのある高齢者は以前は切除てんかん外科治療の対象にならなかったことが多いが,近年少しずつ適応は増えている.さらに脳血管障害や頭部外傷後遺症などに伴う薬剤治療抵抗性てんかんも高齢者において大きな問題であるが,VNS(迷走神経刺激)療法の導入により良好な臨床経過をたどりうる.現実的な治療選択肢が患者に提示され,医療者と患者双方の協議のもとに治療法が選択されることが必要である. |
キーワード | てんかん外科,側頭葉てんかん,高齢者,VNS,難治性てんかん |
論文名 | 左頭頂葉損傷により聴覚性語彙判断に低下をきたした一例 |
著者名 | 大石如香・山口佳剛・鈴木匡子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1077-1085,2018 |
抄録 | 左頭頂葉病巣により,聴覚性語彙判断に低下をきたした失語例について検討した.症例は81 歳,右利き男性.接近行為を伴う頻発する音韻性錯語や復唱障害といった伝導失語に特徴的な症状に加え,聴覚性語彙判断に障害を認めた.聴覚性語彙判断では,非単語を語彙化し,単語と判断する特徴的な反応がみられた.音韻処理に関しては,単音の語音弁別や1 音節および意味を有する単語の復唱が保たれていたが,意味を有しない非単語など,意味に結びつかない複数の音韻を処理する際に重度の障害を示した.本例の聴覚性語彙判断の障害の成因として,聴覚的な音韻表象の把持力低下や,語音列と語彙の照合のレベルの機能低下が推測された.また,本例では下頭頂小葉が両側性に損傷されていたため,慢性期まで重度の音韻処理障害が残り,聴覚性語彙判断に影響した可能性が考えられた. |
キーワード | 聴覚性語彙判断,語形聾,語彙照合,語彙化,両側病巣 |
論文名 | モラルチャレンジ:実践・臨床倫理〈事例検討3〉身体的急変をきたした慢性期病棟の統合失調症患者 精神科患者の意思決定支援に関する考察 |
著者名 | 福田 陽明,村端 祐樹,井藤 佳恵,小野 正博,木村 亜希子,齋藤 正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(10):1087-1093,2018 |
抄録 | 長年,精神科病院に入院を継続し,家族との関係も希薄な統合失調症患者が突然重篤な身体症状を呈したため,救命措置のあと,三次救急病院へ転送するという事態を経験した.この事例の治療方針の決定に際し,本人の希望がわからず,家族との連絡もとれず,医療方針決定に難渋した.患者は一命をとりとめ当院に戻ったが,遷延性の意識障害で自発語,自発運動はみられない.慢性統合失調症患者の身体疾患治療に関する意思決定支援のあり方について検討した. |
キーワード | 統合失調症,身体的急変,意思決定支援 |