論文名 | 認知症の認知機能検査について |
著者名 | ア昭博,橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0907-0914,2018 |
抄録 | 認知症診療において推奨されるべき認知機能検査について,わが国ですでに標準化されている検査を中心に,施行目的別に紹介した.認知機能検査を用いて得られた知見を蓄積し,多施設間で共有することは,認知症の診断精度を高め,質の高いケアやリハビリテーションを提供するために必要となるだけではなく,わが国において優れた大規模の臨床研究が行われ,新たな知見が生み出されていくためにも重要である. |
キーワード | 認知症,認知機能検査,スクリーニング,鑑別診断 |
論文名 | 行動・心理症状,神経症状 |
著者名 | 繁信和恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0915-0921,2018 |
抄録 | 認知症疾患の鑑別診断において行動・心理症状(BPSD)および神経症状を的確に評価することは重要なことである.認知症疾患に特有の行動・心理症状であっても,本人家族は医師から具体的に聴取されるまで,認知症の症状であると気がついていない場合も多い.そのため評価尺度を用いて包括的に行動・心理症状の評価を行うことは,認知症の鑑別診断や病態把握を行ううえで有益である. |
キーワード | NPI,NPI-Q,GDS,SRI,CFI |
論文名 | 認知症の重症度評価,生活機能評価 |
著者名 | 奥村宣久,目黒謙一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0922-0930,2018 |
抄録 | 4 大認知症を想定して生活障害を把握する評価尺度と重症度を把握する評価尺度を紹介する.対象となる高齢者が,認知症の生活機能評価に先立ち,介護保険認定等ですでに経験している可能性が高い評価方法を「前提情報となる生活機能評価」として概説し,「一般診療機関で実施できる短時間で採用可能な認知症の生活機能評価」と「人的・時間的余裕があるときには積極的に実施すべき評価尺度」についてBADL 評価とIADL 評価,認知症重症度評価に分けて説明する.最後にQOL(qualityof life)評価の重要性について言及する |
キーワード | 遂行機能障害,行為としての障害,AD8-J,CDR,SCR-DE,IADL 質的評価 |
論文名 | 神経画像検査(MRI,SPECT など) |
著者名 | 石井一成 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0931-0939,2018 |
抄録 | 4 大認知症をはじめとする認知症を対象とした画像検査はあくまでも診断補助であるが,その有用性は多大であり,いまや診断の確信を得るうえでも必須の検査となりつつある.MRI,脳血流SPECT検査の認知症用の一般撮像法は確立しているが,標準化は現時点では困難な状況である.一方,MIBG 心臓交感神経シンチグラフィーやドパミントランスポーターイメージングで得られる定量指標がようやく標準化されるようになってきた. |
キーワード | 認知症,MRI,SPECT,ドパミントランスポーターイメージング,標準化 |
論文名 | 血液・髄液バイオマーカー |
著者名 | 笠井高士,徳田隆彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0940-0948,2018 |
抄録 | アルツハイマー型認知症において最も評価の確立した生化学バイオマーカーはAβ42総タウ・リン酸化タウの髄液中濃度である.一方でその他の認知症疾患において,それぞれの病理的特徴を反映するバイオマーカーの多くは現在,開発段階にある.髄液および血液バイオマーカー技術の今後の発展において次世代型免疫アッセイの活用が期待されている. |
キーワード | Aβ42,総タウ,リン酸化タウ,検体採取処理の標準化,次世代型免疫アッセイ |
論文名 | せん妄の評価方法について |
著者名 | 井上真一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0949-0954,2018 |
抄録 | 医療現場では,せん妄をいち早く発見することで早期介入が可能となり,その重症化を予防することができる.したがって,医療者はせん妄に気づくためのポイントを理解しておくとともに,実施可能な範囲で適切なスクリーニングツールを用いることが重要である.また,せん妄の臨床研究では診断や重症度評価のためのツールが用いられることがある.本稿では,せん妄の評価における臨床的な視点や評価ツールの実際について,具体的に解説した. |
キーワード | せん妄,評価ツール,スクリーニング,診断,重症度評価,低活動型せん妄 |
論文名 | 特発性正常圧水頭症診療に関する評価法―― タップテストや術前術後評価も含めて ―― |
著者名 | 鐘本英輝 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0955-0964,2018 |
抄録 | 特発性正常圧水頭症(iNPH)は,地域在住高齢者での有病率が2%程度と比較的高く,シャント術によって治療可能な認知症として注目されているが,認知症疾患医療センターですらその診療が十分に広がっていない.その要因として,診断の重要な位置を占める脳脊髄液排除試験(タップテスト)の方法や,外科的治療前後での認知症診療医の役割が十分に知られていないことが考えられる.本稿では,iNPH を疑い,タップテストを実施し,脳神経外科へ紹介してシャント術後の評価を行う,という一連のiNPH 診療における評価法について概説した |
キーワード | 特発性正常圧水頭症(iNPH),脳脊髄液排除試験(タップテスト),Timed up and go test(TUG),Mini-Mental State Examination(MMSE) |
論文名 | 成人の発達障害の臨床アセスメント―― とくに認知症と適切に鑑別するために ―― |
著者名 | 黒田美保 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0965-0972,2018 |
抄録 | 近年,成人期に発達障害の診断を受ける人が増加しており,高齢で診断を受ける人も出てきているが,発達障害と認知症の鑑別に関する研究はほとんどない.本論では,認知症との共通点がある自閉スペクトラム症について,成人期の特徴を述べたのち,その時期にも使用できる臨床評価のためのアセスメントツールを紹介すると同時に,その鑑別可能性や発達障害と認知症の併存ケースについての適切な治療の方向性について考察した. |
キーワード | 自閉スペクトラム症,成人期,高齢者,認知症,アセスメント,適応行動 |
論文名 | 認知症の行動・心理症状(BPSD)の因果関係とBPSD 重症度との関連―― 多重指標モデルによるアプローチ ―― |
著者名 | 今井幸充・半田幸子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0975-0989,2018 |
抄録 | 認知症の行動・心理症状(BPSD)の各症状間の因果関係とBPSD 重症度との関係を明らかにするために,日本老年精神医学会会員の医師が,アルツハイマー型認知症と血管性認知症と診断された350 人を日本語版BEHAVE-AD で評価した結果を用いて,多重指標モデルを作成した.全体の約9割に何らかのBPSD があり,共通因子として【幻覚】【攻撃性】【不安感情障害】【不適切な行動】【妄想】の5 因子が確認された.5 因子を潜在変数とし,BPSD に最も影響した【攻撃性】を従属変数とした共分散構造分析を行ったところ,8 つのパス係数で構成される統計的に適合度の高いモデルが得られた.本モデルでは【不安感情障害】は【妄想】や【幻覚】【不適切な行動】を介して【攻撃性】に影響し,【幻覚】は【妄想】や【不適切な行動】を介して【攻撃性】に影響していた.このことからBPSD は相互に影響し,重症化していくことが明らかになった.行動異常の発展機序に言及する先行研究は少ないことから,本研究はBPSD のリスク予測や発症メカニズムの解明に資すると考えられた. |
キーワード | 認知症,BPSD,日本語版BEHAVE-AD,BPS-cog,多重指標モデル |
論文名 | モラルチャレンジ:実践・臨床倫理〈事例検討2〉大腸がんが発見された認知症患者家族による虐待を受けていた一例を通して考察する高齢者医療を取り巻く諸問題 |
著者名 | 村端 祐樹,福田 陽明,井藤 佳恵,小野 正博,木村 亜希子,齋藤 正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,29(9):0991-0999,2018 |
抄録 | 高齢者医療では社会的,倫理的問題に取り組むことが大きな課題となり,それゆえに複雑化,困難化するケースも少なくない.本稿では,2018 年開催の第33 回日本老年精神医学会におけるシンポジウム5「認知症をめぐる人権と倫理;高齢者精神医療におけるモラル・チャレンジ」で取り扱われた症例を呈示し,多職種によって交わされたディスカッションを通して現実の高齢者医療を取り巻くさまざまな課題について考察する. |
キーワード | 認知症,成年後見,高齢者虐待 |