2018 Vol.29 No.7
 
 
第29巻第7号(通巻374号)
2018年7月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
ある日のもの忘れ外来診察室から
涌谷陽介
特集 脳からみた老化とは
T.脳の老化の多面性(総論的に)
脳の加齢(老化)とは
北村聡一郎・岸本年史
U.生物学的立場から
脳神経病理学からみた脳の加齢とは
尾昌樹ほか
神経画像からみた脳の加齢とは
櫻井圭太ほか
脳の加齢による機能低下による切断不全が引き起こす病的アミロイドの産生の増加
福森亮雄ほか
動物学からみた脳の加齢
中山裕之ほか
V.心理学の立場から
脳健診からみた脳の老化
篠原もえ子・山田正仁
認知機能からみた脳の加齢
佐久間尚子
心理的加齢と脳の加齢の関係
権藤恭之
原著論文
レビー小体型認知症における修正型電気けいれん療法の安全性,有効性および長期予後に与える影響の検討
森川文淑ほか
連  載
モラルチャレンジ:実践・臨床倫理@実臨床における倫理とはなにか
齋藤正彦
学会NEWS
日本老年精神医学会 新役員選出について
日本老年精神医学会 新名誉会員および新特別会員を認定
平成30年度「日本老年精神医学会奨励賞」決定
平成30年度日本老年精神医学会専門医36名を認定
「老年精神医学雑誌」編集委員会 新編集委員長,新編集委員について
第34回日本老年精神医学会開催のご案内
平成31年度日本老年精神医学会専門医認定試験実施のお知らせ
学会入会案内
投稿規定
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編集後記

 
 
論文名 T.脳の老化の多面性(総論的に) 脳の加齢(老化)とは
著者名 北村聡一郎,岸本年史
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0689-0695,2018
抄録 老年期精神・神経疾患は加齢による脳の構造・機能的変化に,老年期特有の心理社会的な要因が関与することで,青年期のそれとは異なる病相を呈する.このため,老年期精神・神経疾患を理解するためには加齢による脳の変化を生物学的,心理学的,社会学的な視点から総合的に理解することが必要となる.このような脳の加齢についての包括的理解は,超高齢社会を迎えるわが国において多様な精神・神経疾患への適切な治療を行ううえでの一助となりうる.
キーワード 脳,加齢,高齢者,精神疾患,精神医療
 
論文名 U.生物学的立場から 脳神経病理学からみた脳の加齢とは
著者名 尾昌樹, 美原 盤, 能瀬聡一郎, 浜家一雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0696-0703,2018
抄録 病理学的な立場で,脳に生じる加齢に伴う変化を,肉眼的な所見,顕微鏡的な所見を中心にまとめた.とくにアルツハイマー病病理の変化は,ほかの神経変性疾患と異なり,存在しないということはきわめてまれである.また,加齢変化は連続的なものであり,いくつかの病態が同時に生じることも重要である.とくに,超百寿者(110歳以上)の検討から,加齢による脳内の病理変化や,それによる疾患というものは,年齢とともに単純に増加するわけではないと考えられる.
キーワード 齢,長寿,百寿,超百寿,神経病理
 
論文名 U.生物学的立場から 神経画像からみた脳の加齢とは
著者名 櫻井圭太,橋詰良夫,住田 薫,山本麻子,豊田圭子,大場 洋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0704-0711,2018
抄録 正常な加齢において,脳萎縮,大脳白質病変,拡大した血管周囲腔,金属沈着などが生理的な形態変化として,神経画像でも描出されうる.これらの変化は個人差が大きく,病的変化との区別が時に困難となるため,画像診断上の問題点となりうる.しかしながら,中枢神経疾患の画像診断では萎縮の局在や金属沈着の有無など特徴的な異常所見を検出することが重視されているため,生理的な加齢性変化を理解しておく必要がある.
キーワード 加齢性変化,CT,MRI,形態的変化
 
論文名 U.生物学的立場から 脳の加齢による機能低下による切断不全が引き起こす 病的アミロイドの産生の増加
著者名 福森亮雄,田上真次,柳田寛太,丸山理気,足立浩祥,金山大祐,篠原 充,工藤 喬,里 直行,大河内正康
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0712-0718,2018
抄録 加齢ではさまざまな機能が衰弱する.脳の異常加齢と考えられる変性性認知症では異常に凝集したタンパクが蓄積する.凝集タンパクは,加齢に伴うタンパクの分解機能の低下により蓄積すると考えられる.変性性認知症のひとつであるアルツハイマー病では,アミロイド産生酵素γ-セクレターゼは有毒アミロイドを産生するだけでなく,驚くべきことに,同時にその分解も行っていることを筆者らは報告してきた.このことを踏まえて,加齢による変化がアミロイドの代謝に与える影響を基礎研究の視点で概説し,さらにどのように臨床へフィードバックできるかについて述べた.
キーワード 認知症,加齢,アルツハイマー病,アミロイドβタンパク,γ-セクレターゼ
 
論文名 U.生物学的立場から 動物学からみた脳の加齢
著者名 中山裕之,チェンバーズ ジェームズ,内田和幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0719-0728,2018
抄録 アルツハイマー病(AD)患者の脳に観察される組織病変として,アミロイドβ(Aβ)沈着(老人斑と脳アミロイドアンギオパチー)と神経原線維変化(NFT)がある.これらの変化は老化に伴って進行し,とくに進行が著しい場合に老年期にADを発症する.ヒト以外の動物の場合,寿命が短いマウスやラットなどのげっ歯類ではこのような病変は観察されず,イヌやサル類など中寿命の動物では加齢に伴うAβ沈着は起こるがNFTは生じない.筆者らはこの現象は脳老化速度と個体老化速度の相違によって起こると考えていたが,最近,老齢のネコ科動物の脳にNFTが生じることを見いだした.Aβのアミノ酸配列の相違がNFTの有無を規定しているのではないかと考え研究を進めている.
キーワード amyloid β, brain aging, neurofibrillary tangles, nonhuman animals, senile plaques
 
論文名 V.心理学の立場から 脳健診からみた脳の老化
著者名 篠原もえ子・山田正仁
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0729-0734,2018
抄録 認知症高齢者が増加し医療・社会問題となっている.筆者らは石川県七尾市中島町において認知症の疫学研究を継続している(なかじまプロジェクト).中島町における60 歳以上を対象とした認知症・軽度認知障害(MCI)の有病率調査では,80 歳代後半で住民の60%以上,90 歳以上では80%以上が認知症またはMCI であった.なかじまプロジェクトの調査では緑茶・緑黄色野菜の摂取,および有酸素運動が認知機能低下の予防に有効な可能性が示唆された.
キーワード 認知症,軽度認知障害,高齢者,認知症予防,疫学研究
 
論文名 V.心理学の立場から 認知機能からみた脳の加齢
著者名 佐久間尚子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0735-0741,2018
抄録 高齢期において加齢変化する脳と認知機能との関係について,脳の構造と機能を可視化する脳画像研究と剖検を含む長期縦断研究を主に概観した.行動面からとらえられる高齢者の処理速度,実行機能,エピソード記憶の低下と脳の加齢変化との対応関係に関する研究が急増している.一方,健常加齢で保たれやすい言語機能に関しても詳細な検討が始まっている.これらの健常加齢を中心とする研究を概観し,研究と臨床場面で異なる認知加齢の視点についても言及した.
キーワード 認知加齢,脳の加齢,健常高齢者,処理速度,実行機能,言語機能
 
論文名 V.心理学の立場から 心理的加齢と脳の加齢の関係
著者名 権藤恭之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0742-0748,2018
抄録 本稿では,喪失と補償モデルに基づき心理的加齢と脳の加齢の関係を概観した.はじめに認知的側面では認知課題の成績と脳の生理的加齢の関係は相関するものの,認知の予備力と呼ばれる現象の存在によって,単純な相関モデルで両者の関係を説明することが適切ではないことを論じた.さらに,加齢に伴い脳機能の低下を補償するために,若年者と異なる脳のネットワークの活動が上昇する現象を紹介した.感情的側面に関しては,ポジティビティ効果に注目し,それを説明するための扁桃体の活動に注目した脳加齢モデルと認知制御モデルを紹介した.
キーワード 認知の貯蓄,エイジングパラドックス,HAROLD(hemispheric asymmetry reduction in old adults),PASA(posterior-anterior shift in aging),社会情動的選択性理論
 
論文名 レビー小体型認知症における修正型電気けいれん療法の安全性,有効性および長期予後に与える影響の検討
著者名 森川文淑・飯田愛弓・田端一基・直江寿一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(7):0751-0761,2018
抄録 レビー小体型認知症(DLB)の治療困難な精神症状に対する修正型電気けいれん療法(m-ECT)の安全性,有効性,長期予後に与える影響を検討した.m-ECTを施行した24例中10例に有害事象が出現したが,全症例で回復した.m-ECT前後のClinical Global Impression-Severity of Illness score(CGI-S)は5.83±0.56から2.96±0.62と有意な改善を認め(p<0.001),抗精神病薬使用量はCP換算量で150.0(4.8〜300)mgから87.5(0〜216)mgと有意に減少した(p=0.01).その結果,24例中23例が自宅または施設に退院した.退院後当院に通院した20例の退院後3か月および,12か月以内での再入院率はそれぞれ2例(10.0%),6例(30.0%)であった.本結果より,m-ECTが治療困難な精神症状を有するDLBに対する安全かつ有効な治療選択肢となりうること,またその効果が一定期間持続する可能性が示唆された.
キーワード レビー小体型認知症,修正型電気けいれん療法,安全性,有効性,長期予後