2018 Vol.29 No.3
 
 
第29巻第3号(通巻369号)
2018年3月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
Superager
三品雅洋
特集 うつ病と認知症;鑑別と関連性
うつ病と認知症の関連性
―― とくに生物学的関連性を中心に
水上勝義
うつ病性仮性認知症およびうつ病とMCI の併存
布村明彦
うつ病とアルツハイマー型認知症
植草朋子・品川俊一郎
うつ病と血管性認知症
下田健吾・木村真人
うつ病とレビー小体型認知症
今井正城・橋本 衛
うつ病と前頭側頭型認知症
田渕 肇
進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,嗜銀顆粒病,
 ハンチントン病,クロイツフェルト・ヤコブ病と  うつ症状
竹之下慎太郎ほか
原著論文
身体合併症を有す重度認知症患者の死亡転帰に関連する 入院時情報の特徴
―― 作業療法評価を含めた探索的調査
坪内善仁ほか
基礎講座
老年精神科専門医のための臨床神経病理学K 脳血管障害の病理
 ―― 臨床と画像との関連
吉田眞理
文献抄録
繁田雅弘
学会NEWS
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編集後記

 
 
論文名 うつ病と認知症の関連性
著者名 水上勝義
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0235-0240,2018
抄録 疫学的にうつ病と認知症は密接に関連することが示されている.その背景として生物学的基盤の存在が推察される.そこで本稿では,うつ病と認知症の関連について,生物学的基盤を中心に概観した.うつ病の神経科学的知見から,グルココルチコイドによる神経障害と脳由来神経栄養因子(BDNF)と神経新生の障害を取り上げ,その可能性について述べた.
キーワード うつ病,認知症,グルココルチコイド,脳由来神経栄養因子(BDNF)
 
論文名 うつ病性仮性認知症およびうつ病とMCIの併存
著者名 布村明彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0241-0248,2018
抄録 うつ病性仮性認知症を呈した高齢患者を5〜7年間追跡すると7割以上が認知症に移行すると報告されている.高齢者ではうつ病と軽度認知障害(MCI)の併存も高率である.アルツハイマー型の変性だけではなく,血管性や非アルツハイマー型の変性など背景にある病態の多様性を反映し,あらゆるサブタイプのMCIが出現する.高齢者うつ病から認知症に移行するリスクを予測するマーカーについては,神経心理学的所見,脳画像所見,血中バイオマーカーなどの検討があるが,いまだ十分に確立されていない.
キーワード うつ病,仮性認知症,軽度認知障害,MCI
 
論文名 うつ病とアルツハイマー型認知症
著者名 植草朋子・品川俊一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0249-0257,2018
抄録 近年,うつ病がアルツハイマー型認知症(AD)の前駆症状となること,うつ病の既往がAD発症の有力な危険因子となることが多く報告されている.うつ病とADとは生物学的なオーバラップが指摘されており,またしばしば類似した症候を呈し,併存することもあるため,臨床的な鑑別が困難となる例が多い.うつ病性仮性認知症では神経心理検査パターンや検査への態度がADとの鑑別において有用である.ADに伴うアパシーは本人の感じる苦痛が少ないことや症状の変動が少ないこと等がうつ病との鑑別点である.治療に関しては抗うつ薬がアパシーを増悪させることもあり,個々の状態に合わせた環境調整と薬物選択を行うことが重要である.
キーワード アルツハイマー型認知症,アミロイド関連うつ病,うつ病性仮性認知症,アパシー
 
論文名 うつ病と血管性認知症
著者名 下田健吾・木村真人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0258-0266,2018
抄録 超高齢社会のなかでうつ病や脳血管障害による心理的および社会経済学的損失は重要な問題である.このような背景から,うつ病と血管性認知症は予防的側面が重視され,両者は脳血管障害を基盤とする疾患と広義に解釈される方向にあるが,課題も多い.血管性認知症は頻度が高く,さまざまな精神症状を呈するため,適切な認識と治療が重要であるが,脳卒中後の臨床研究からの引用が多く,今後,独自の研究報告の発展が必要である.
キーワード 血管性認知症,血管性うつ病,脳血管障害,精神症状,治療
 
論文名 うつ病とレビー小体型認知症
著者名 今井正城・橋本 衛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0267-0273,2018
抄録 レビー小体型認知症(DLB)は,アルツハイマー病に次いで多い変性性認知症であり,すべての認知症の10〜20%を占めるとされている.DLBでは他の認知症よりもうつ状態を伴う頻度が高く,またうつ状態がDLBの前駆症状となることも少なくない.DLBのうつ状態は廃用症候群を引き起こすだけではなく,しばしば重症化し生命予後にもかかわるため,DLB患者のマネジメントにおいてきわめて重要な症候である.明確なエビデンスはないが,DLBのうつに対して選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI),ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)等の抗うつ薬が用いられ,難治性の場合には修正型電気けいれん療法(mECT)の有効性が報告されている.DLBにおけるうつ症状の発現にはDLB特有の神経変性過程の関与が想定されるため,DLB患者のうつを研究することは,うつ病の発症メカニズムの解明にもつながりうる重大な意義をもつ.
キーワード レビー小体型認知症,うつ病,発現機序
 
論文名 うつ病と前頭側頭型認知症
著者名 田渕 肇
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0274-0280,2018
抄録 前頭側頭型認知症(FTD),なかでも多彩な精神症状を示す行動異常型前頭側頭型認知症(bvFTD)は,しばしば精神疾患との鑑別がむずかしい.bvFTDと鑑別すべき精神疾患はさまざまであるが,意欲の低下や興味の喪失など「アパシー」の症状が前景であるbvFTDの場合には,アパシーと抑うつの違いなどに留意しながら,うつ病との鑑別を進めていく必要がある.
キーワード うつ病(depression),アパシー(apathy),前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia),行動異常型前頭側頭型認知症(behavioral variant frontotemporal dementia)
 
論文名 進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,嗜銀顆粒病,ハンチントン病,クロイツフェルト・ヤコブ病と うつ症状
著者名 竹之下慎太郎・寺田整司・三木知子・横田 修・山田了士
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0281-0291,2018
抄録 進行性核上性麻痺(PSP)と大脳皮質基底核変性症(CBD)は,運動症状が目立つ神経変性疾患であるが,以前からうつ症状との関連が報告されてきた.現在,これらの疾患に関する臨床病理学的な知見の蓄積が進み,かつて提唱されていたものとは異なる臨床像スペクトラムを呈することが明らかになっている.本稿では,PSPやCBDを,うつ症状との関連という視点から整理した.加えて,老年期精神障害と関連がある神経変性疾患として,嗜銀顆粒病およびハンチントン病,クロイツフェルト・ヤコブ病について述べた.
キーワード アパシー,うつ,嗜銀顆粒病,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症,クロイツフェルト・ヤコブ病,ハンチントン病
 
論文名 身体合併症を有す重度認知症患者の死亡転帰に関連する入院時情報の特徴
著者名 坪内善仁・宝田イオリ・石橋雄介・大西和弘・東條秀則・洪 基朝
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,29(3):0293-0301,2018
抄録 本研究では,当院精神科病床に入院した身体合併症を有す重度認知症患者について,入院時情報から死亡転帰に関連する要因を探索的に調査した.調査項目は,@基本情報,A医学的情報,B作業療法評価情報に分け,自宅または施設退院患者73人(生存退院群)と死亡退院患者39人(死亡退院群)の間で,各変数について単変量解析,ロジスティック回帰分析を行った.その結果,嚥下障害の有無,認知症の重症度,併存疾患指数,認知機能評価,認知症分類が死亡転帰の主な影響要因であることが示された.このことから,多職種が連携し,入院時から幅広く評価情報を共有し,早期から個別性を重視した支援に取り組む必要があると考えた.
キーワード 重度認知症,身体合併症,死亡転帰,入院時情報,作業療法評価