論文名 | ADL(activities of daily living)と認知症 |
著者名 | 村井千賀・新美芳樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0959-0964,2017 |
抄録 | 厚生労働省が推進する「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では,認知症の人に対するリハビリテーションは「実際に生活する場面を念頭におきつつ,有する認知機能等の能力をしっかりと見極め,これを最大限に活かしながら,ADL(食事,排泄等)やIADL(掃除,趣味活動,社会参加等)の日常の生活を自立し継続できるよう推進する」とされている.今回,認知症の人に対するADLの自立に向けた取組みの現状と今後の認知症支援のあり方について述べた. |
キーワード | 認知症,ADL,IADL,作業療法,認知症のリハビリテーション |
論文名 | 認知症の診断基準とADL |
著者名 | 池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0965-0968,2017 |
抄録 | 認知症共通の定義として,認知障害だけでなく複雑なADL(activities of daily living)の早期からの障害が注目されるようになってきた.たとえば,DSM-Wの“dementia”では認知障害により社会的または職業的機能の著しい障害が引き起こされるとしていたが,DSM-5の“Neurocognitive Disorder”では日常生活機能における自立性のレベルに注目している.今後は,重症度の区分,とくに軽度認知障害(MCI)と早期のdementiaの区分として,複雑なADLの障害の程度が重視されると思われる. |
キーワード | activities of daily living,criteria,dementia,mild cognitive impairment,Neurocognitive Disorder |
論文名 | ADL 評価尺度について |
著者名 | 北村 立 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0969-0977,2017 |
抄録 | 認知症は生活行為障害が徐々に進行する疾患であるため,認知機能や行動・心理症状を評価するのと同等,あるいはそれ以上にADL(activities of daily living)やIADL(instrumental ADL)を評価することが臨床上重要である.本稿ではFunctional Assessment Staging(FAST)の日常診療での活用方法について説明したあとに,ADL・IADL評価尺度の使用状況調査の結果について報告し,おのおのの評価尺度を簡単に説明した. |
キーワード | ADL,IADL,評価尺度,FAST,ICF |
論文名 | 高齢者のADL の特徴 |
著者名 | 田平隆行 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0978-0983,2017 |
抄録 | 高齢期には老化を基盤として老年症候群をはじめとするさまざまな障害や疾病を生じやすくなり,ADL(activities of daily living)の低下を招く.地域在住高齢者のADLの低下は加齢をはじめ基礎身体機能,生活習慣病,主観的健康感等の心理的因子,外出,仕事・余暇活動など,国際生活機能分類(ICF)での健康状態,心身機能,活動・参加,環境因子の幅広い分野との関係が認められた.加齢によるADL低下は,IADLでは「外出」が,BADLでは「移動能力」が最も早く低下し,生活活動範囲を担保する日課や余暇活動など参加へのかかわりが重要となると考えられた. |
キーワード | 地域在住高齢者,BADL,IADL,移動,外出 |
論文名 | アルツハイマー病患者のADL 障害 |
著者名 | 堀田 牧・田平隆行・石川智久・橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0984-0988,2017 |
抄録 | 在宅生活を営むアルツハイマー病(AD)患者は増加傾向にあり,在宅で必要とされる生活行為を少しでも長く維持できることは患者自身のQOL観点からも望ましい.ADの認知機能の悪化とADL(activities of daily living)の悪化には相関があり,ADの特徴である記憶障害は日常行為の全般に影響を及ぼすが,ADのADL障害像を把握し,その特性を理解した支援があれば多くの生活行為は維持が期待できる.今後,在宅支援に展開させることが課題である. |
キーワード | アルツハイマー病(AD),ADL障害,認知機能,生活環境,できているADL |
論文名 | レビー小体型認知症とADL |
著者名 | 田中 響 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0989-0992,2017 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)は変性が大脳や脳幹にとどまらない点で他の認知症疾患と大きく異なり,そのため認知機能障害や幻視,パーキンソニズム,レム睡眠行動障害のほかにも起立性低血圧や失神,便秘など臨床症状は多彩である.DLBのADL障害を考える場合,それらの1つひとつに注目し,ADLの低下にどのように関与しているかをとらえることが重要である. |
キーワード | 認知症,レビー小体型認知症(DLB),日常生活動作(ADL) |
論文名 | 前頭側頭葉変性症とADL |
著者名 | 石川智久 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0993-0996,2017 |
抄録 | 前頭側頭葉変性症(FTLD)患者のADL(activities of daily living)は,1つひとつの動作手順そのものの機能はよく保たれるが,常同行動や社会的認知や遂行機能の低下などのために,結果的に不適切な行動となったり行動が適切に完結しなかったりすることから,広義にとらえるといわばADLの「質的変化」といえる.今後は,FTLD患者におけるADLの質的な状態像を適切にとらえることのできる評価尺度の開発や神経基盤の解明が待たれる. |
キーワード | 前頭側頭葉変性症(FTLD),activities of daily living(ADL),常同行動,DAD(Disability Assessment for Dementia) |
論文名 | 血管性認知症とADL |
著者名 | 吉浦和宏・橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):0997-1003,2017 |
抄録 | 血管性認知症(VaD)は,アルツハイマー病(AD)とともに二大認知症である.病態は個体ごとにさまざまであるが,ADに比べて運動麻痺やパーキンソニズム,仮性球麻痺,排尿障害などの症状を伴いやすく,日常生活動作(ADL)が障害されやすいといわれている.ADLを維持するためには,脳血管障害(CVD)の再発予防が最も重要であり,CVDの危険因子を是正したうえで,防御因子を踏まえた多面的な介入が望まれる. |
キーワード | 管性認知症,脳血管障害,アルツハイマー病,日常生活動作,危険因子 |
論文名 | 一次判定方法へのADL 調査項目の関与と要介護度とADL の関係性 |
著者名 | 川越雅弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):1004-1009,2017 |
抄録 | 現在の一次判定では,認定調査74項目および中間評価5項目で把握された「状態像」と,介護保険施設で実際に提供されていた「ケア時間」を樹形図で関連づけたうえで,状態像に応じたケア時間を推定しているが,その推定プロセスにADL調査項目がどのように関与しているかに言及した論文は少ない.そこで,本稿では,一次判定方法の概要を解説したうえで,一次判定にADL調査項目がどのように関与しているのかについて解説する.さらに,要介護度とADL項目の関係性について,公表データをもとに考察する. |
キーワード | 要介護度,要介護認定,ADL,一次判定 |
論文名 | 在宅作業療法の方向性 |
著者名 | 村田美希 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):1010-1013,2017 |
抄録 | 認知症の人の在宅生活を支援するリハビリテーションとして,わが国では,認知症の人本人の主体性を尊重し,「活動能力」や「活動参加や社会参加」に焦点をあてた取組みが促進されている.また,4大認知症のなかでもとくに生活障害により在宅生活継続が困難になる場合が多いと考えられるレビー小体型認知症(DLB)と前頭側頭型認知症(FTD)に対する在宅支援も今後の課題である.認知症の在宅支援における作業療法では,患者自身の生活全体を包括的にアセスメントして,個別性と疾患特徴に合わせたアプローチが大切である. |
キーワード | 認知症,在宅,作業療法,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症 |
論文名 | 地域資源を活用する作業療法の可能性 |
著者名 | 小川敬之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):1014-1020,2017 |
抄録 | 少子高齢化という日本が直面する社会的課題に対して作業療法の立場からなにができるか.地域実践を通してみえてきた,これからの作業療法のあり方について述べた.社会保障制度にサポートされるだけでなく,障害をもっていたとしても,できることで活動し社会に参加することで人は元気になる.日本に作業療法が芽吹いて50年.少子高齢化がますます進んでいく日本において,作業療法の技術がおおいに発揮できる場面が増えてくるのと同時に,社会に求められている役割を担う自覚と実践が必要になってくると思われる. |
キーワード | 作業療法,地域資源,デリバリー作業,第4セクター |
論文名 | 先駆的事例 |
著者名 | 村井千賀・北村 立・塩田繁人・杉本優輝 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):1021-1023,2017 |
抄録 | 認知症のリハビリテーションは,残存能力を活用し実際の生活の場面でのADL/IADLへの参加を目的とするものである.石川県立高松病院は急性期病棟を認知症対応で運用し,早期の在宅退院に向けて,医師と精神保健福祉士による介護支援専門員との連携,看護師と作業療法士の病棟内ADL自立に向けた連携,さらに退院前訪問や訪問リハビリテーションなどを通して地域のスタッフとの連携を展開している.本稿では,その取組みを紹介した. |
キーワード | 認知症のリハビリテーション,ADL/IADL,連携,訪問リハビリテーション,地域 |
論文名 | 重度認知症におけるADL の変動性 |
著者名 | 石丸大貴・田中寛之・永田優馬・西川 隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(9):1025-1030,2017 |
抄録 | 重度認知症者では日常生活活動(ADL)に変動のみられることが以前より指摘されている.しかし,実際の調査によってその根拠を示した報告は見当たらない.本研究では,重度認知症者におけるADLの変動性を中等度認知症者と比較することにより,その実態を検討した.重度認知症(CDR 3)22人,中等度認知症(CDR 2)11人を対象に,認知機能検査(MMSE,HDS-R,CTSD),ADL評価(N-ADL,HADLS),BPSD評価(NPI-NH)を実施した.ADLの変動性を検討するために,起居・移乗・整容・洗顔の各動作について1週間内の2日間で1日2回の合計4回,応用行動分析学的ADLスケールを用いて評価した.中等度認知症ではADLの変動がほとんどみられないのに比して,重度認知症では4評価時点間の点数の変化量と変動係数が有意に大きく,点数の一致度も小さかった.重度認知症者にはADLの著しい変動性が確認された.重度認知症者が能力を発揮できる状態は一定でなく,その時々の状態に合わせた個別的なケアが必要だろう. |
キーワード | 重度認知症,ADL,変動性 |