2016 Vol.28 No.8
 
 
第28巻第8号(通巻361号)
2017年8月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
死にゆく患者に対して私たちはなにができるのだろうか?
明智龍男
特集 高齢化する精神科臨床場面
T.医療環境としての精神障害者の高齢化
精神障害者の高齢化対策に寄与する医療政策のあり方
河原和夫
精神科医療現場での精神障害者の高齢化
竹林裕直・白石弘巳
高齢になっても地域で暮らしたい ―― やどかりの里の実践から
増田一世
U.各精神科医療場面における高齢化の実態
精神科単科病院における高齢化問題
菊本弘次
総合病院精神科における高齢化問題
鈴木一浩・天野直二
高齢化社会における精神科クリニックの可能性
大西 守
精神科救急場面における高齢化問題
澁谷孝之
医療観察法下における高齢化問題
八木 深
V.疾患特異性の高齢化問題
統合失調症患者の高齢化に関する問題
新村秀人
気分障害患者の高齢化問題ないしは高齢者の気分障害
深津 亮・原 祐子
老年期におけるパーソナリティ障害の臨床的検討
林 直樹
アルコール依存症患者の高齢化の問題
遠山朋海・樋口 進
短  報
回復期リハビリテーション病棟入院の抑うつ・アパシーを呈する認知症高齢者に対する集団料理活動の効果
窪 優太ほか
基礎講座
老年精神科専門医のための臨床神経病理学Dピック病から前頭側頭葉変性症への歴史的変遷と臨床病理診断
川勝 忍ほか
連  載
わが国の認知症施策の未来P家族介護者を支援する ―― 支援の根拠と枠組み
津止正敏
文献抄録
入谷修司
学会NEWS
第33回日本老年精神医学会開催のご案内
日本老年精神医学会「生涯教育講座」開催のご案内
平成30年度日本老年精神医学会専門医認定試験実施のお知らせ
学会入会案内
投稿規定
バックナンバーのご案内
編集後記

 
 
論文名 精神障害者の高齢化対策に寄与する医療政策のあり方
著者名 河原和夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0833-0838,2017
抄録 精神障害者の高齢化などに対する医療・福祉政策の体系は一応形成されている.医療政策としての精神疾患患者の高齢化問題等は,医療計画や障害福祉計画等に基づき遂行される.しかし,これらの行政計画は,政策の社会目標を示しただけで,高齢精神障害者に対する具体的な事業は策定されていないことが多々ある.政策形成過程のどこに問題があるかを同定し,その解決方策を提示した.
キーワード 医療計画,障害福祉計画,介護事業計画,予算措置,認知症疾患医療センター
 
論文名 精神科医療現場での精神障害者の高齢化
著者名 竹林裕直・白石弘巳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0839-0843,2017
抄録 精神科病院では,統合失調症等の入院患者の高齢化が進んでいる.医療者は,精神症状に加え,がんやロコモティブ症候群などへの対応を求められている.筆者らが勤務する精神科病院では,高齢入院患者の半数以上が介護を必要とする状態にあった.こうした患者に対しては身体状況を考慮した包括的な評価が必要となる.家族も高齢となり,病院への関わり方も変化している.精神科病院において,患者・家族の状態に応じた適切な医療やケアの提供が喫緊の課題となっている.
キーワード 精神科病院,入院医療,高齢者,統合失調症,介護
 
論文名 高齢になっても地域で暮らしたい
著者名 増田一世
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0844-0848,2017
抄録 埼玉県さいたま市で精神障害のある人を地域で支える活動を展開している「やどかりの里」で実施した2つの調査結果を報告し,精神障害のある人たちの生活の実態や高齢化を視野にいれ,支援課題を明らかにしたい.その際には,家族の高齢化もあわせて検討することが重要である.やどかりの里という地域実践からみえてくる現状を踏まえて,精神障害のある人たちが地域で暮らし続けるために取り組むべきことを考えていく.
キーワード やどかりの里,2つの調査,家族の高齢化,精神的健康,身体的健康
 
論文名 精神科単科病院における高齢化問題
著者名 菊本弘次
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0849-0853,2017
抄録 精神科単科病院における高齢者医療分野は,今日の社会情勢や地域特性が最も影響する分野であろう.日常診療においては,患者層の高齢化は身体合併症や感染症リスクの増加をもたらし,従前以上のコストや対策を求めている.解決は容易ではないが,地域・医療連携の徹底は病院の負担軽減につながる.また,地域における高齢者在宅支援の充実は,退院促進には追い風として働く一方で,認知症医療における精神科単科病院の役割や位置づけには厳しい変更を迫りかねないと考えられた.
キーワード 精神科単科病院,高齢化,医療連携,在宅支援,退院促進,認知症医療
 
論文名 総合病院精神科における高齢化問題
著者名 鈴木一浩・天野直二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0854-0858,2017
抄録 社会の高齢化に伴って総合病院の受診が増加する高齢患者においては,その背景に認知症をもつ患者の増加がある.これらの患者はせん妄を呈して入院が長期化しやすいため早期の精神科介入が必要であり,コンサルテーション・リエゾン医療を用いた効率的な介入と予防的な対応が求められる.高齢者の精神的かつ身体的健康の両立のために総合病院精神科の担う役割は大きい.
キーワード aging society,general hospital,dementia,delirium
 
論文名 高齢化社会における精神科クリニックの可能性
著者名 大西 守 
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0859-0862,2017
抄録 日本社会の急激な変貌・高齢化は,精神科クリニックにおいてさまざまな影響をもたらしている.従来の精神科外来システムの枠組みから外れ,精神保健福祉という包括的な働きかけができないと対応できない問題・事例も少なくない.そのため,関係諸機関との連携,さまざまな制度・法律の順守など,コンプライアンスを重視した一連の対応が不可欠である.外来精神科医が,待ちの姿勢ではなく,社会に積極的に入り込んでいくことを期待する.
キーワード 高齢化社会,運動療法,アウトリーチ,事例性,不適応スペクトラム
 
論文名 精神科救急場面における高齢化問題
著者名 澁谷孝之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0863-0867,2017
抄録 精神科救急を受診する高齢者は緩徐に増加傾向にある.高齢者では,疾患を問わず,中長期的な認知機能や日常生活能力の低下は避けられず,家族等によるサポートを欠いていたり,サポートが不十分であることも多い.精神科救急診療の初期段階から,急性期治療後を見越して,関係機関と連携し,必要な社会支援体制を整えていくことは,疾患に対する狭義の治療と同等あるいはそれ以上に重要である.
キーワード 精神科救急,高齢者,BPSD,機能低下,社会支援
 
論文名 医療観察法下における高齢化問題
著者名 八木 深
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0868-0872,2017
抄録 認知症は,医療観察法において,治療可能性に問題があるが,統合失調症に合併した場合には,治療可能性があることがある.高齢発症の幻覚妄想は,初期の認知症であることが多い.身体合併症の治療は,総合病院で行うとよいだろう.
キーワード 医療観察法,高齢者,認知症,統合失調症,身体合併症
 
論文名 統合失調症患者の高齢化に関する問題
著者名 新村秀人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0873-0878,2017
抄録 病状不安定のため,あるいは社会的な要因により長期入院を続けている統合失調症患者にも,地域で暮らしている統合失調症患者にも,高齢化が進んでいる.本稿では,加齢に伴って生じてくる精神症状の変化,身体合併症,精神科治療,退院支援・地域移行,主観的な面,社会とのかかわりなど,統合失調症の疾患特異性に随伴する高齢化の問題点について概説した.
キーワード 統合失調症,高齢化,身体合併症,退院支援,地域移行
 
論文名 気分障害患者の高齢化問題ないしは高齢者の気分障害
著者名 深津 亮・原 祐子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0879-0884,2017
抄録 わが国の高齢者の気分障害に罹患している人の実態について概観した.少子化,高齢化の進行はすでに地殻変動的な変化を及ぼして,さらに多死社会となっている.高齢者は寄る辺のない孤立と孤独のなかで「愛する人を喪う」という究極的な「悲嘆」を体験している.仮性認知症と認知症でみられるアパシーの鑑別は重要であるが,図式的な理解には自ずと限界がある.その背景にある諸要因を洞察したうえで対応すべきである.
キーワード 少子高齢多死社会,喪失,悲嘆反応,仮性認知症,アパシー
 
論文名 老年期におけるパーソナリティ障害の臨床的検討
著者名 林 直樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0885-0891,2017
抄録 高齢期パーソナリティ障害(PD)は,しばしば臨床的に問題になるにもかかわらず,十分な検討がまだ進められていない病態である.その診療では,器質的,身体的要因から,生活史的,心理学的要因,さらにもともとのパーソナリティ特性や合併精神障害までのごく多様な要因を考慮して診断,治療を進めることが必要である.本稿では,ライフサイクルの視点を導入して,PD症状が老年期における生活状況の変化,精神的身体的能力の低減や合併する身体疾患,精神疾患などへの反応として生じること,もともとのパーソナリティ特性にライフサイクルの諸過程が重畳したものなどとして把握しうることを示した.さらに治療においては,患者と周囲の人々の力を引き出して治療を進めるべきことを論じた.
キーワード パーソナリティ障害,高齢者,精神療法,診断,ライフサイクル,ライフイベント
 
論文名 アルコール依存症患者の高齢化の問題
著者名 遠山朋海・樋口 進
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0892-0897,2017
抄録 アルコール依存症治療機関の新規受診者に占める60歳以上の割合が増加している.アルコール関連認知機能障害は他の認知症よりも平均年齢が低く,男性,社会的孤立,身体合併症,精神疾患の併存が多い.さらに平均在院日数が長く,高コストで,自己退院率と再入院率も高い.高齢アルコール依存症のスクリーニングテストにShort Michigan Alcoholism Screening Test-Geriatric Version(SMAST-G)がある.「コミュニティ強化法と家族トレーニング(CRAFT)」は依存症患者が受診を拒否している場合の介入法として有効である.
キーワード アルコール依存症,アルコール関連認知症,SMAST-G,CRAFT
 
論文名 回復期リハビリテーション病棟入院の抑うつ・アパシーを呈する認知症高齢者に対する集団料理活動の効果
著者名 窪 優太・中澤僚一・各務真菜・加藤美樹・中島大貴・岡村英俊・長谷川慧・竹田徳則
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(8):0899-0904,2017
抄録 認知症で生じる行動・心理症状(BPSD)のなかでも抑うつ・アパシーは発生頻度が高く,認知症の進行や認知症高齢者本人の生活の質(QOL)に影響を及ぼす.本研究では,認知症高齢者の抑うつ・アパシー改善を目的に集団での料理活動を実施した.対象は回復期リハビリテーション病棟入院中のリハビリテーション処方があった認知症高齢者27人である.入院時期に応じて介入群14人,対照群13人に割り付け,介入群には1回あたり40〜50分で週2回,4週間で計8回の5人程度での集団料理活動を実施した.対照群には通常の作業療法・理学療法のみを実施した.両群の基本属性には統計的な有意差はなかった.介入の結果,対照群と比較して介入群には介入期間中,抑うつの有意な改善が認められたが,介入終了後の持続効果は認められなかった.一方,アパシー,QOLについては有意な改善は認められなかった.今回の結果から,料理活動により活動期間中,認知症の抑うつが改善することが確認された.
キーワード 認知症,BPSD,非薬物療法