論文名 | 加齢に伴う睡眠構造の変化 |
著者名 | 山寺 亘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0329-0334,2017 |
抄録 | 加齢に伴って,ヒトの睡眠は大きく変化する.睡眠構造の加齢変化は,睡眠維持機能の低下が最も特徴的な所見である.若年者に比較して高齢者は,徐波睡眠が減少し,中途覚醒時間が増加する.その結果,総睡眠時間は減少し,睡眠効率が低下する.概日リズムの表現型も特有な変化を示し,概日リズムの振幅は低下し,朝型指向性が強まる.高齢者,とくに認知症患者におけるオレキシンの脳内動態に関する検討が注目される. |
キーワード | 高齢者,睡眠,恒常性,概日リズム,オレキシン |
論文名 | 高齢者の睡眠障害 |
著者名 | 三島和夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0335-0340,2017 |
抄録 | 高齢者の睡眠障害は臨床場面で最もよく遭遇する症候のひとつであり,慢性経過をたどるケースが多く,患者の社会機能や生活の質(QOL)を大きく低下させる.高齢者でみられる睡眠障害は多様である.最も頻度が高い訴えは不眠であるが,不眠症状があることイコール不眠症ではない.とくに高齢者の場合には睡眠薬が第一選択薬となる原発性不眠症は不眠患者の一部にすぎないことをたえず念頭におく必要がある.高齢者の睡眠障害の背景には睡眠の深度や持続性が減少するなど生理的な加齢変化に加えて,さまざまな心理・社会・生物学的要因が存在する.そのため睡眠薬などの催眠鎮静系の向精神薬による薬物療法だけでは症状が改善しないことも少なくない.環境調整や心理療法も含めた治療アプローチが必要である.また高齢者では向精神薬の副作用が出やすいため,薬物療法を行う際にはたえずrisk-benefit balanceを考慮する必要がある.睡眠衛生指導などの非薬物的アプローチを適宜取り入れる必要がある. |
キーワード | 高齢者,不眠症,睡眠関連呼吸障害,睡眠時随伴症,睡眠関連運動障害 |
論文名 | 認知症の危険因子としての睡眠障害 |
著者名 | 森 崇洋・角 徳文 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0341-0346,2017 |
抄録 | 認知症患者には睡眠障害が高い頻度で併存する.近年さまざまな研究から,睡眠障害が認知症発症のリスクを高めている可能性が示唆されている.睡眠障害がアミロイド?のクリアランスを低下させてアルツハイマー病の発症を促進しているとの仮説がある.この仮説が妥当であれば,睡眠障害を改善することで認知症の発症を減らせる可能性が出てくる.今後のさらなる研究の蓄積が望まれる. |
キーワード | 認知症,睡眠障害,危険因子,アミロイドβクリアランス,徐波睡眠 |
論文名 | 睡眠薬は認知症の危険因子か? |
著者名 | 田ヶ谷浩邦・村山憲男・深瀬裕子・松永祐輔 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0347-0352,2017 |
抄録 | 睡眠薬服用と将来の認知症発症の関連について検討した報告がいくつかあり,睡眠薬服用は認知症予防因子であるとする報告,睡眠薬服用は認知症発症と関連がないとする報告,睡眠薬服用は認知症危険因子であるとする報告があり,一貫した結果は得られていない.不眠そのものが認知症の危険因子であるという報告は多く,睡眠薬服用単独の影響と,不眠による影響を区別できるようデザインされた研究が必要である. |
キーワード | dementia,insomnia,hypnotics,sleep-disordered breathing,epidemiology |
論文名 | 睡眠薬による認知症類似状態 |
著者名 | 堀口 淳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0353-0362,2017 |
抄録 | ベンゾジアゼピン系睡眠薬による認知症類似症状の発現について,自験例を中心に,それぞれに解釈を加筆して考察した.ベンゾジアゼピン系睡眠薬に限らず,大部分の向精神薬は投与中だけでなく,急な中断でも恐ろしい症状が誘発される場合が多く,軽症の場合には見逃されやすいことが多いことを特段に強調した. |
キーワード | ベンゾジアゼピン系睡眠薬,離脱症状,健忘,依存,認知症 |
論文名 | アルツハイマー病における睡眠障害とその対応 |
著者名 | 足立浩祥 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0363-0371,2017 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)において睡眠障害は高頻度に認められ,病期が進行するにしたがってその頻度も高まる傾向がある.ADの睡眠障害は,加齢性の生理学的変化に加え,AD病理,病期,併存する身体疾患や服用薬剤,睡眠覚醒リズムに与える環境要因,睡眠関連疾患の合併など,複雑な相互作用のもとで表現型として顕在化する.このように不眠や日中の過度の眠気の原因はきわめて多要因である.このため,ADの睡眠障害の評価には包括的なアセスメントが求められ,またその対応についても個別性が大きい点が特徴である. |
キーワード | 睡眠障害,認知症,アルツハイマー病,睡眠関連疾患,BPSD |
論文名 | レビー小体型認知症の睡眠障害 |
著者名 | 水上勝義 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0372-0376,2017 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)では高頻度にさまざまな睡眠障害が認められる.アルツハイマー病に比較してDLBでは初期から睡眠障害を認め,鑑別ポイントのひとつになる.とくにレム期睡眠行動異常(RBD)は,DLBに特徴的な睡眠障害のひとつで,DLBの臨床診断基準にも採用されている.RBDはDLB発症の10年以上前から認められる場合も少なくない.DLBの睡眠障害に対する薬物療法のエビデンスは乏しい.睡眠薬の服用により転倒,骨折,認知機能低下,せん妄,日中の眠気の悪化などのリスクがあるため,安全性を第一に考慮しながら,1人ひとりの状態に応じた治療が求められる. |
キーワード | レビー小体型認知症,睡眠障害,不眠,レム期睡眠行動異常,せん妄,薬物療法 |
論文名 | 日常会話式認知機能評価(Conversational Assessment of Neurocognitive Dysfunction ; CANDy)の開発と信頼性・妥当性の検討 |
著者名 | 大庭 輝・佐藤眞一・数井裕光・新田慈子・梨谷竜也・神山晃男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,28(4):0379-0388,2017 |
抄録 | 本研究では,日常会話から認知症をスクリーニングすることを目的とした検査である日常会話式認知機能評価(Conversational Assessment of Neurocognitive Dysfunction ; CANDy)を開発した.研究1では,医師や心理士,介護士を対象として検査項目の選定を行った.研究2では,医師・心理士および高齢者見守りサービスの電話相談員を対象に,信頼性,妥当性,スクリーニング精度の検討を行った.CANDyのα係数は .90であり,MMSEと中等度の相関を示した(r=-.629,p<.001).カットオフ値を5/6点に設定した場合,アルツハイマー型認知症の感度は86.2%,特異度94.5%と高いスクリーニング精度を示した.CANDyは認知症のスクリーニング法として既存の認知機能検査にない多くの利点を備えた有効な検査であることが示された. |
キーワード | スクリーニング,コミュニケーション,認知症,高齢者,心理検査 |