2016 Vol.28 No.10
 
 
第28巻第10号(通巻363号)
2017年10月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
道路交通法改正と認知症
古橋淳夫
特集 わが国で行われている認知症に対する多施設共同調査・研究Up to date
オレンジレジストリ ― MCIレジストリを中心として
櫻井 孝ほか
FTLDレジストリ
池田 学ほか
認知症ケアレジストリ研究 ― BPSDスポット調査を中心に
中村考一
J-ADNIとその後継研究
岩田 淳・岩坪 威
DIAN研究
嶋田裕之・森  啓
軽度認知障害患者に対するシロスタゾール療法の臨床効果ならびに安全性に関する医師主導治験 (COMCID試験)
猪原匡史ほか
特発性正常圧水頭症における症状改善のための臨床研究― アルツハイマー病理が疑われる患者に対するシャント術の有効性・安全性に関して ――(SINPHONI-3)
末廣 聖・數井裕光
認知症ちえのわnet
佐藤俊介・數井裕光
原著論文
アルツハイマー病と臨床診断されMRI所見がdisproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus(DESH)に一致する症例の検討
遠藤大介ほか
基礎講座
老年精神科専門医のための臨床神経病理学F進行性核上性麻痺と皮質基底核変性症― 精神科臨床に役立つ病理学的事項と臨床診断基準について
横田 修ほか
連  載
わが国の認知症施策の未来R認知症の人の視点を重視した施策を実現するために
繁田雅弘
書  評
繁田雅弘「認知症になってもだいじょうぶ!;そんな社会を創っていこうよ」
学会NEWS
第33回日本老年精神医学会開催のご案内
日本老年精神医学会「生涯教育講座」開催のご案内
平成30年度日本老年精神医学会専門医認定試験実施のお知らせ
学会入会案内
投稿規定
バックナンバーのご案内
編集後記

 
 
論文名 オレンジレジストリ
著者名 櫻井 孝・佐治直樹・鈴木啓介・伊藤健吾・鳥羽研二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1079-1086,2017
抄録 オレンジレジストリは,認知症のすべての病期を包括するレジストリであり,プレクリニカル,MCI,ケアの3つのレジストリからなる.従来型の観察を目的としたレジストリとは異なり,治験・臨床研究での利活用を目的とした“Trial ready”であることが最大の特徴である.先制治療薬,病態修飾薬,病状緩和薬などの薬物治験に対応し,また生活習慣(病)への介入,リハビリテーション,ケアの研究での利活用が期待される.
キーワード 認知症,オレンジレジストリ,軽度認知障害(MCI),治験,臨床研究
 
論文名 FTLD レジストリ
著者名 池田 学・渡辺宏久・橋本 衛・祖父江元
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1087-1090,2017
抄録 わが国における前頭側頭葉変性症(FTLD)のレジストリとして,「日本人前頭側頭葉変性症の自然歴・生体試料レジストリと病態抑止治療開発フロンティア(Frontiers of Time course and Living specimen registry, and Disease modifying therapy development in Japanese FTLD patients ; FTLD-J)」を紹介した.FTLD-Jの特徴は,@全国規模の精神科と神経内科との共同研究であること,A精神症状と運動症状の両面から疾患をとらえていくこと,B幅広いフェノタイプを把握すること,C専門医による正確な臨床診断をベースとしたデータ収集,などである.
キーワード bvFTD,FTLD,FTLD-J,レジストリ,semantic dementia
 
論文名 認知症ケアレジストリ研究
著者名 中村考一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1091-1096,2017
抄録 認知症介護研究・研修センターでは,認知症ケアレジストリ研究として,認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する1か月程度の短期のケア効果を前向きに評価するBPSDスポット調査を2017年3月より実施している.当面,施設サービスを利用するアルツハイマー型認知症の人を対象とした調査とし,食事に関するBPSDを中心に登録する構造とし,1,000事例を目標に調査を実施している.調査項目はエンドポイントとしてNPI-Qを評価し,実施するケアは先行研究によって21領域に分類されたケアからプルダウン形式で選択することとしている.現在38施設の協力が得られ,順次登録が進められている.
キーワード 認知症ケア,BPSD,レジストリ,標準化
 
論文名 J-ADNI とその後継研究
著者名 岩田 淳・岩坪 威
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1097-1104,2017
抄録 アルツハイマー病(AD)の早期過程,とくに軽度認知障害(MCI)期における進行経過を脳画像,バイオマーカーを駆使して評価し,疾患修飾療法の治験を可能とする目的でAlzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)が開始され,わが国でもJ-ADNIが成功裡に終了した.これを受けて,疾患修飾療法の標的がさらに早期段階のプレクリニカルADに広がるのに呼応し,主対象をプレクリニカルADにおく後継研究が開始されている.本稿ではADNIやプレクリニカル期AD研究の背景と現状を紹介する.
キーワード ADNI,疾患修飾薬,MCI,プレクリニカルAD
 
論文名 DIAN 研究
著者名 嶋田裕之・森  啓
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1105-1112,2017
抄録 DIAN観察研究は,家族性アルツハイマー病患者のバイオマーカーの変化を明らかにした.われわれは日本においても同様の研究を行うべく,ワシントン大学と交渉し,国際共同研究としてのDIAN-J研究を開始した.しかしそれはアメリカの基準を満たさなければならず,大きな困難を伴うものであった.アメリカでは2013年からDIAN-TUという治療介入研究が始まっている.2018年からは次期のDIAN-TU研究が始まる予定であり,国際治験として日本も参加すべく準備中である.
キーワード Alzheimer’s disease,DIAN,DIAN-J,DIAN-TU
 
論文名 軽度認知障害患者に対するシロスタゾール療法の臨床効果 ならびに安全性に関する医師主導治験 (COMCID 試験)
著者名 猪原匡史・角田良介・齊藤 聡
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1113-1117,2017
抄録 シロスタゾールは,血小板のホスホジエステラーゼVを抑制し,血小板凝集を抑制する脳梗塞予防薬であるとともに,血管平滑筋のホスホジエステラーゼVを抑制し,血管拡張により脳血流を上昇させる.この血管作動性により,アミロイド?の脳外排泄を促進し,認知機能を改善することが前臨床試験で示された.シロスタゾールはMMSE得点の低下を抑制することが臨床研究で示されたことから,軽度認知障害(MCI)に対してシロスタゾールを投与する医師主導治験COMCID研究が行われている.
キーワード シロスタゾール,血管,ドラッグ・リポジショニング,軽度認知障害(MCI)
 
論文名 特発性正常圧水頭症における症状改善のための臨床研究
著者名 末廣 聖・數井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1118-1123,2017
抄録 近年の研究により,特発性正常圧水頭症(iNPH)においてアルツハイマー病理の合併が高率に認められることが明らかになってきた.しかし,アルツハイマー病理が合併した症例に対してシャント術が有用か否かは明らかになっていない.わが国で行われてきた前方視的多施設共同研究SINPHONIの3つ目の研究として,アルツハイマー病理の合併が疑われるiNPH患者に対するシャント術の有効性・安全性を明らかにする研究が現在計画されている.
キーワード 特発性正常圧水頭症(iNPH),SINPHONI,多施設共同研究,アルツハイマー病(AD),脳脊髄液バイオマーカー
 
論文名 認知症ちえのわnet
著者名 佐藤俊介・數井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1124-1130,2017
抄録 認知症患者に伴うさまざまな行動・心理症状(BPSD)に対する対応方法は,すでに多くの書籍などで提案されているが,それらの対応方法が実際にどれくらいの確率で有効であるかについては,明確にされていない.そこで筆者らは,ICT(情報通信技術)を用いて,全国の介護者からケア体験を収集し,奏功確率が高い対応方法を抽出するウェブサイト「認知症ちえのわnet」を開発した.今後も,ケア体験の投稿を増やすための活動や,ウェブサイトの改良を行っていきたい.
キーワード BPSD,グッドプラクティス,集合知,ICT(情報通信技術),治療
 
論文名 アルツハイマー病と臨床診断されMRI 所見がdisproportionately enlarged subarachnoidspacehydrocephalus(DESH)に一致する症例の検討
著者名 遠藤大介・加藤 梓・佐藤卓也・今村 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,28(10):1133-1141,2017
抄録 認知機能障害のみを呈し,アルツハイマー病(AD)と臨床診断され,特発性正常圧水頭症(iNPH) で特徴的とされるdisproportionately enlarged subarachnoid-space hydrocephalus(DESH)に一致する画像所見(DESH画像所見)を呈する患者の頻度と認知機能属性を検討した.もの忘れ外来でADと臨床診断され,発症年齢が60歳以上で,歩行障害,失禁,頻尿を有さない186症例中8例(4.3%)が頭部MRIでDESH画像所見に該当した.これは,報告されている健常高齢者におけるDESH画像所見(asymptomatic ventriculomegaly features of iNPH on MRI ; AVIM)の頻度よりも有意に高く,ADと臨床診断されDESH画像所見を呈する患者が認知機能障害のみを呈するiNPH患者であるという仮説に一致していた.一方,DESH画像所見該当,非該当群間で有意差が認められた項目は頭部MRIで計測した脳梁角とFAB得点のみであり,FAB得点における群間差の効果量は小さかった.これは,ADと臨床診断されDESH画像所見を呈する患者がAVIMを合併したAD患者であるという仮説に一致していた.
キーワード 特発性正常圧水頭症,アルツハイマー病,DESH,AVIM