論文名 | 器質性精神障害における錯誤と誤認の症候学 |
著者名 | 小阪憲司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0817-0822,2016 |
抄録 | 本稿では,器質性精神障害における錯誤と誤認について簡単に説明し,レビー小体型認知症,アルツハイマー型認知症などの認知症疾患,ハンチントン病,ウェルニッケ・コルサコフ脳症などを例として簡単に錯誤や誤認について紹介した. |
キーワード | 錯誤,誤認,レビー小体型認知症,アルツハイマー型認知症,ピック病,ハンチントン病,ウェルニッケ・コルサコフ脳症 |
論文名 | 誤認/同定錯誤の神経基盤 |
著者名 | 村井俊哉 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0823-0828,2016 |
抄録 | 精神医学・神経学の領域で「誤認/同定錯誤」とみなされている症状は数多いが,その代表はカプグラ症状と重複記憶錯誤である.それぞれの神経基盤は明らかにされていないが,前者については「相貌失認の鏡像仮説」と呼ばれる仮説が一定の説得力をもち,後者については,矛盾する複数の信念の矛盾解消機構の破綻が説明仮説のひとつとして考えられる. |
キーワード | カプグラ症状,重複記憶錯誤,妄想性人物誤認症候群,相貌失認の鏡像仮説 |
論文名 | 誤認症候群の臨床 |
著者名 | 長濱康弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0829-0839,2016 |
抄録 | アルツハイマー病(AD),レビー小体型認知症(DLB)ではさまざまな誤認がみられる.初期から人物誤認症状,場所誤認,“いない身内が家にいる”誤認,TV徴候がみられればDLBを疑ってよいが,初期ADでもまれに人物誤認がみられるので注意が必要である.人物誤認症状は対象から感じる知覚と自伝的記憶表象が一致しなくなり,新たなidentityを作成することで成立すると考えられる.その基盤には大脳辺縁系-傍辺縁系-前頭葉ネットワーク障害による情動・感情処理の変化や顕著性ネットワーク障害などが関与している. |
キーワード | カプグラ症状,フレゴリ症状,妄想性誤認症候群,自伝的記憶,情動 |
論文名 | アルツハイマー病における記憶錯誤 |
著者名 | 阿部修士 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0840-0845,2016 |
抄録 | アルツハイマー病における認知機能障害のなかでも,とりわけ顕著に発現するのが記憶障害である.記憶障害は典型的には,過去の記憶が抜け落ちてしまう症状に特徴づけられる.しかし,実際には経験していない事象についての誤った記憶を想起する「記憶錯誤」を呈することも少なくない.本稿では,とくに「虚再生」と「虚再認」という2種類の記憶錯誤に焦点をあてて,その背景にあるメカニズムについて論じた. |
キーワード | アルツハイマー病,記憶錯誤,虚再認,虚再生 |
論文名 | レム睡眠行動障害とレビー小体病 |
著者名 | 内山 真・金野倫子・鈴木貴浩・金子宜之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0846-0856,2016 |
抄録 | レム睡眠行動障害(RBD)は,レム睡眠中の筋抑制機構の不全から,夢が行動化されて起こる睡眠時随伴症である.近年,10年のスパンでみると,明らかな器質性疾患がない中高齢発症の特発性RBDがレビー小体型認知症(DLB)やパーキンソン病(PD)などを発症してくることが報告され,これら疾患の前駆状態とみなされるようになってきた.本稿では,レム睡眠の生理学について概説し,RBDとDLBやPDについて,臨床経過や臨床症状における関連をまとめた. |
キーワード | レム睡眠行動障害,レム睡眠,夢,レビー小体型認知症,パーキンソン病,α-シヌクレイノパチー |
論文名 | 認知症疾患におけるパレイドリアの診断的意義 |
著者名 | 渡部宏幸・西尾慶之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0857-0861,2016 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)の中核的特徴のひとつである幻視は,頻度が高く疾患特異性の高い症状である.現行のDLB臨床診断基準は感度が低いことが問題であるが,幻視の診断感度を高めることによりDLB診断の感度が向上すると考えられる.本稿では幻視の代用尺度として有用性が示されている「パレイドリア・テスト」およびその他の幻視の評価方法について概説した. |
キーワード | レビー小体型認知症,精神症状,幻視,錯視,パレイドリア・テスト |
論文名 | レビー小体型認知症における錯誤と誤認への治療的対応 |
著者名 | 藤城弘樹・太田一実・井関栄三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0862-0869,2016 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)では,実体的意識性,錯視,変形視,人物誤認,カプグラ症候群,場所誤認,重複記憶錯誤などの精神症状をしばしば呈するが,その発現機序は明らかになっていない.本稿では,レビー小体型認知症における錯誤と誤認への治療的対応について,認知機能障害の程度,レム睡眠行動障害の有無,錯視に基づく誤認であるかどうかについて考慮したうえで,薬物療法と非薬物療法を適宜組み合わせることを提案した.錯誤・誤認による精神症状の悪化の軽減や予防への有用性が期待される. |
キーワード | レビー小体病,レム睡眠行動障害,病識,支持的精神療法,視覚認知障害 |
論文名 | メマンチン塩酸塩のアルツハイマー型認知症患者における長期使用の安全性および有効性 |
著者名 | 本間 昭・早川晶子・関根 亨・永久保太士・濱島里子・荒井美由紀 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0871-0882,2016 |
抄録 | メマンチンの特定使用成績調査は,中等度および高度のアルツハイマー型認知症を対象とし,本剤の長期使用における安全性および有効性を確認することを目的として2011年12月に開始された.本調査では,基本的な観察期間を本剤の投与開始後から12か月(第一期)とし,最長36か月間(第二期)の観察を行うこととしている.メマンチン投与開始3か月時点の投与開始早期および12か月時点の長期使用における安全性と有効性についてはすでに報告している.今回,第二期の投与開始24か月時点までの情報を含めた調査票収集例数2,511例を対象に解析を行った.その結果,12か月以降の副作用の発現率は3か月以降と同様に低く,24か月までの長期投与に関連する副作用の増大は認められなかった.MMSEスコアの平均値の変化では,24か月時点では投与開始時と比べて低下したが,その差はわずかで,むしろ認知機能は長期にわたって維持されていると評価できた.また,24か月時点では48.1%の症例でMMSEスコアの維持・改善が認められた.さらに,MMSEのカテゴリ別の推移では,登録基準の上限である19点を超える20点以上に改善した症例が24か月時点でも13%以上を占めた.一方,FASTステージ別の推移では,登録基準の下限である5から3もしくは4に改善した例が,24か月時点でもそれぞれ2.2%および9.1%あり,合計して11%以上を占めた.調査開始時の登録基準を上回る改善はFASTステージとMMSEのカテゴリ別推移でほぼ一致していた.以上の結果から,投与開始24か月時点までの長期使用においてもメマンチンの安全性と有効性が良好に維持されていることが確認された. |
キーワード | メマンチン,アルツハイマー型認知症,MMSE,安全性,有効性 |
論文名 | アルツハイマー病患者における長期の在宅療養介護が終わるとき |
著者名 | 小林沙世・笠巻海音・佐藤卓也・佐藤 厚・今村 徹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(8):0883-0891,2016 |
抄録 | 【目的】アルツハイマー病(AD)における長期在宅療養者がどのような理由で在宅療養を終了するのかを検討する.【対象】新潟リハビリテーション病院神経内科(もの忘れ外来)の初診でADと診断され,半年に1回の定期再診と年1回の定期再評価を初診から6年以上継続し,初診6年後時点で在宅療養を行っており,その後に在宅療養が終了した14症例.【方法】対象患者の診療録をもとに,在宅療養終了前1年以内に施行した定期再評価時点の疾患属性,療養介護状況,および在宅療養終了時点での在宅療養終了理由,転帰などの情報を収集し,診療録情報収集担当者と担当医との合議のうえで,対象患者の在宅療養終了理由のタイプ分類を行った.【結果】対象患者の在宅療養介護の終了理由は,身体疾患による入院・死亡群(5症例),運動機能障害群(3症例),精神症状群(3症例),介護状況変化群(3症例)の4つに分類された.【考察】身体疾患による入院・死亡群では,死亡症例は,悪性腫瘍による死亡と急性に発症した内科疾患による死亡であり,在宅療養介護の終了から死亡までの期間も短く,これらの症例はむしろ,実質的に最期まで在宅療養介護を維持できた,ととらえるべきかもしれない.運動機能障害群の在宅療養介護の終了理由は,患者の運動機能障害の出現によって介護のニーズの質が変化し,長期の安定した在宅療養介護体制を築けていた主介護者が,新しい介護体制に適応できなかったことであると思われた.精神症状群では,投薬加療を含む働きかけによっても行動・心理症状(BPSD)を十分にコントロールできなかったことが主介護者の負担感を増大させ,患者の運動機能などは比較的保たれているにもかかわらず,在宅療養介護を終了させる結果になったと考えられた.介護状況変化群では,初診以降6年間は在宅療養介護を維持できており,安定した療養介護体制をいったんは構築できていたと考えられるが,このような患者でも,介護者側の状況の変化は在宅療養介護の終了の原因となりうると考えられた. |
キーワード | 認知症,アルツハイマー病,在宅療養介護,阻害因子 |