論文名 | 認知機能検査の誤用による認知症とアルツハイマー病の過剰診断と過少診断のリスク |
著者名 | 今村 徹ほか |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0713-0719,2016 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)をはじめとする認知症性疾患の臨床診断においては,十分な病歴と日常生活上の症状の聴取が行われていることが必須であり,認知機能検査はそれを補助するものでしかない.また,臨床家は,認知機能検査の得点や正常範囲,カットオフ値といったものに限界があることも理解していなければならない.これらの点を無視して認知機能検査を誤用すると,認知症やADの過剰診断や過少診断が生じる.本稿ではそれらを実例とともに解説した. |
キーワード | 認知機能障害,検査得点,カットオフ値,正常範囲,誤用 |
論文名 | 画像診断におけるアルツハイマー病の過剰診断と過少診断のリスク |
著者名 | 松田博史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0720-0727,2016 |
抄録 | アルツハイマー病の補助診断としての画像診断の進歩には著しいものがあり,早期診断,鑑別診断,経過観察に用いられている.日常のMRIや脳血流SPECT,およびFDG-PETは神経変性を示すバイオマーカーとして用いられているが,アルツハイマー病に特徴的な画像パターンは他の疾患や生理的因子による修飾でも起こりうること,また,ごく早期には空間解像力の点から検出困難なことに留意しなければならない. |
キーワード | アルツハイマー病,MRI,PET,preclinical AD,suspected non-Alzheimer disease pathophysiology |
論文名 | 生化学バイオマーカーによるアルツハイマー病の過剰診断と過少診断のリスク |
著者名 | 浦上克哉 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0728-0731,2016 |
抄録 | 髄液中アミロイドβタンパク1-42(Aβ42)は脳内のアミロイドβタンパク沈着の程度を反映し,髄液中リン酸化タウタンパクは脳内の神経原線維変化の程度を反映する.髄液中バイオマーカーは汎用性が高く,より診断精度の高い検査ツールである.髄液中Aβ42はアルツハイマー型認知症では対照群や非アルツハイマー型認知症患者群と比較して有意に低値をとる.髄液中リン酸化タウタンパクは,アルツハイマー型認知症では対照群や非アルツハイマー型認知症群と比較して有意に高値をとる.髄液中バイオマーカーは過剰診断や過少診断が最も少ない検査法と考える. |
キーワード | アミロイドβタンパク,リン酸化タウタンパク,アルツハイマー病,大脳皮質基底核変性症 |
論文名 | アルツハイマー病の過剰診断をめぐる問題点 |
著者名 | 大石 智 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0732-0737,2016 |
抄録 | アルツハイマー病(AD)の過剰診断は患者,家族ばかりか,医療・介護財政にも負の影響をもたらす.過剰診断が生まれやすい背景には,操作的診断基準の誤用やそれ自体の妥当性における課題,検査結果の過度な重視,早期診断・早期治療を強調する啓発やメディア,治療薬の広告等がある.ADは早期であればあるほど典型的ではなくなりやすい.医師には適切に除外診断すること,折にふれ診断を見直す姿勢が求められる. |
キーワード | アルツハイマー病,過剰診断,誤診,妥当性,除外診断 |
論文名 | レビー小体型認知症の過剰診断と過少診断 |
著者名 | 藤城弘樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0738-0745,2016 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)は,臨床病理学的診断基準に基づき,レビー病理とともにアルツハイマー病理によりDLB臨床症候群が規定されるが,臨床診断と病理診断による頻度の乖離が指摘されている.本稿では,記憶障害,神経画像所見,中核・示唆症状の出現時期におけるアルツハイマー病理の臨床病理学的関与を概説した.DLBの臨床診断の感度の向上には,前駆症状に注目しつつ,臨床像の多様性に柔軟に対応する必要がある.一方で特異度を維持するために神経画像や睡眠ポリグラフ検査を有効に適宜使用すべきである. |
キーワード | レビー小体病,神経原線維変化,老人斑,パーキンソン病,睡眠ポリグラフ検査 |
論文名 | 血管性認知症の過剰診断と過少診断 |
著者名 | 今川篤子・目黒謙一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0746-0752,2016 |
抄録 | 血管性認知症(VaD)は,脳血管障害を起因とする認知症の総称であるが,その概念は時代とともに変化し,診断基準も単一ではない.アルツハイマー病との合併頻度の高さが判明し,臨床上鑑別診断に迷うことも多いが,予防医学的観点に立ちVaDの早期発見を目指す診断基準も提唱されている.本稿ではその紹介とともに,画像診断を偏重しがちな「過剰診断」と看過により生命予後を悪化させる「過少診断」について,具体例を挙げながら,その診断に際して陥りがちな問題点を提起した. |
キーワード | 血管性認知症,診断基準,過剰診断,過少診断,血管病 |
論文名 | 前頭側頭型認知症の過剰診断と過少診断 |
著者名 | 品川俊一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0753-0757,2016 |
抄録 | 前頭側頭型認知症(FTD)は大脳の前方部に病変の首座をもつ神経変性疾患群であり,脱抑制や意欲低下,共感性の欠如,常同行動,食行動の変化といった,特徴的な行動変容が病初期から出現する.アルツハイマー病(AD)より有病率も低く,疾患自体の認知度も低いため,精神疾患などと診断される例も多く,依然として過少診断の問題は続いている.一方で,画像診断で何らかの前頭葉の変化がある例や行動上の問題を伴う認知症患者をFTDと過剰診断するような場合もあり,筆者らの調査でも過少診断と過剰診断が共存することが示された.社会に対して適正な情報提供を行い,専門医とかかりつけ医が協力して適切な診断を行うことが重要である. |
キーワード | 前頭側頭型認知症,過剰診断,過少診断,精神疾患,アルツハイマー病 |
論文名 | 正常圧水頭症の診断 |
著者名 | 吉山顕次・数井裕光 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0758-0764,2016 |
抄録 | 正常圧水頭症は治療可能な認知症であり,この治療に結びつけるために的確な診断が必要である.診断には,主な症状である認知障害と歩行障害の特徴を適切に評価することが重要である.特発性正常圧水頭症とアルツハイマー病が合併することもあり,診断に注意が必要である.また画像検査において特徴的な所見がみられ,この所見は診断に有用である.そして最終的に,手術適応については,脳脊髄液排除試験(タップテスト)を行い,正確に評価する必要がある. |
キーワード | 特発性正常圧水頭症,認知障害,歩行障害,タップテスト,アルツハイマー病 |
論文名 | キセノンCTにより,基底核および側脳室レベルの皮質脳血流量の特徴を分析し,アルツハイマー型認知症患者と健常者を識別する方法 |
著者名 | 佐瀬 茂・山本誉麿・川嶋英奈・譚 新・澤 温 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,27(7):0765-0776,2016 |
抄録 | 【目的】キセノンCTにより,アルツハイマー型認知症(AD)患者と健常者を識別する方法を開発する.【対象】75歳以上の31人のAD患者と16人の健常者に対して,キセノンCTを実施した.撮影断面は,基底核および側脳室レベルとした.【方法】断面周辺の皮質に,基底核レベルでは20個の,側脳室レベルでは18個の円形関心領域(ROI)を隣接して配置し,各ROIの脳血流量(CBF)を求めた.それぞれのレベルで,AD患者と健常者のCBFによる識別が最も有効に行えるROIを決定し,“識別ROI”と定めた.また,各ROIにおいて,AD患者のCBF範囲(AD範囲,平均値±標準偏差)と健常者のCBF範囲(正常範囲,平均値±標準偏差)を求めた.識別ROIとAD/正常範囲をそれぞれ利用し,AD患者を同定するためのROC解析を行った.【結果】ROC曲線の至適カットオフ値における感度と特異度は,基底核レベルの識別ROIを用いた場合87.1%と93.8%,側脳室レベルの識別ROIを用いた場合83.9%と87.5%,AD/正常範囲を用いた場合90.3%と75.0%であった.【結論】キセノンCTを用いて,基底核と側脳室レベルの皮質に配置した円形ROIのCBFを評価することにより,AD患者と健常者の効果的な識別を行うことができることが示された. |
キーワード | キセノンCT,脳血流量(CBF),アルツハイマー型認知症,ROC解析 |