2015 Vol.26 No.8
 
 
第26巻第8号(通巻333号)
2015年8月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
サクセスフル・エイジング
武田雅俊
特集 アルツハイマー病の多様性
若年発症アルツハイマー病と高齢発症アルツハイマー病
互 健二・品川俊一郎
Posterior cortical atrophy(PCA)とアルツハイマー病
緑川 晶
前頭葉優位型アルツハイマー病
川勝 忍ほか
Logopenic型進行性失語とアルツハイマー病
小森憲治郎
アルツハイマー病における脳血管障害
長田 乾ほか
アルツハイマー病と嗜銀顆粒性認知症の鑑別のポイント
齊藤祐子
レビー小体型認知症
藤城弘樹
原著論文
簡易な認知症問診技術TOP-Q(東京都大森医師会認知症簡易スクリーニング法)
工藤千秋ほか
基礎講座
老年心理学の最前線G高齢者のメタ記憶
清水寛之
文献抄録
森田 進・厚東知成
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編集後記

 
 
論文名 若年発症アルツハイマー病と高齢発症アルツハイマー病
著者名 互 健二,品川俊一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0853-0858,2015
抄録 Alzheimerにより最初に報告された症例は若年発症アルツハイマー病(EOAD)と考えられる例であったが,その後の神経病理学の発展によりアルツハイマー病の概念が拡大し,「アルツハイマー病」という疾患の多くを高齢発症アルツハイマー病(LOAD)が占めるようになった.EOADはLOADと比較して遺伝負因が強く,初期より失語や失行といった症状を呈する例も認められる.一方でLOADは記憶障害を中心とした典型的な症状が多く,生活習慣病などがリスク要因となりうるといった違いがある.臨床場面では両者の差異に留意し,診断や治療を行う必要がある.
キーワード 若年発症アルツハイマー病,高齢発症アルツハイマー病,アミロイドカスケード仮説
 
論文名 Posterior cortical atrophy(PCA)とアルツハイマー病
著者名 緑川 晶
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0859-0866,2015
抄録 Posterior cortical atrophy(PCA)は,大脳後方(後頭・頭頂・後頭側頭葉)の機能が進行性に障害される神経変性疾患の総称であり,病理背景は不均一であるがアルツハイマー病が多い.近年,病理や神経画像,認知機能障害の詳細な検討が進められているが,診断が遅れることが少なくない.医療従事者は,早い段階から病態をとらえるとともに,PCA特有の認知的・心理的特性を理解することが重要である.
キーワード posterior cortical atrophy (PCA), Alzheimer’s disease, atypical dementia, visual agnosia,Balint syndrome,Gerstmann syndrome
 
論文名 前頭葉優位型アルツハイマー病
著者名 川勝 忍,小林良太,林 博史,小薗江浩一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0867-0874,2015
抄録 前頭葉優位型アルツハイマー病(fvAD)は,行動異常を伴う前頭側頭型認知症(bvFTD)と共通する行動異常や人格変化を呈し,前頭葉の脳萎縮や脳循環・代謝の低下を示す.fvADでは,ADの特徴であるエピソード記憶障害,視空間認知障害も伴うことが多く,前頭葉症状としては,bvFTDよりも遂行機能障害,脱抑制と無気力が混在する状態を呈することが特徴的である.アミロイドPETではfvADは陽性になり,bvFTDとの鑑別を確定できる.
キーワード アルツハイマー病,前頭葉,非定型,前頭側頭型認知症,アミロイドPET
 
論文名 Logopenic型進行性失語とアルツハイマー病
著者名 小森憲治郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0875-0883,2015
抄録 従来,原発性進行性失語(PPA)の枠組みのなかでは比較的敬遠されてきた,アルツハイマー病(AD)の病理を背景にもつ失語型として近年新たに登場したlogopenic型進行性失語(LPA)について紹介した.LPAは後方言語野の障害による言語症状が主症状となる変性疾患に特有の失語症候群であり,喚語のための休止ならびに語句や文の復唱障害といった症状が特徴的である.LPAでは言語性短期記憶障害に注目することが重要であるが,自発話の特徴にはいくつかのバリエーションがあり,注意を要する.LPAは言語面に現れるADの多様性を示す一群として,今後さらに検討が進むと思われる.
キーワード logopenic型進行性失語,原発性進行性失語,アルツハイマー病,失語症,言語性短期記憶
 
論文名 アルツハイマー病における脳血管障害
著者名 長田 乾,山ア貴史,高野大樹,前田哲也,佐藤雄一,藤巻由実
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0884-0890,2015
抄録 アルツハイマー病(AD)は基本的には変性疾患で,脳血管障害とは病因論的にはまったく異なる病態を呈するが,とくに高齢のAD患者では,ラクナ梗塞,微小出血,白質病変などの脳血管病変が高率に認められ,ラクナ梗塞などの脳血管病変はADの臨床像に影響を及ぼすことが明らかにされたことから,脳血管病変はADの発症や進行に対する促進因子とみなされている.また,以前は脳卒中の既往や画像診断で脳血管障害が指摘される場合には,安易に血管性認知症と診断される傾向にあったが,最近では臨床的にADをより幅広くとらえて,「脳血管病変を有するアルツハイマー病」という診断名も広く受け入れられている.
キーワード Alzheimer’s disease,vascular risk factors,cerebrovascular lesions
 
論文名 アルツハイマー病と嗜銀顆粒性認知症の鑑別のポイント
著者名 齊藤祐子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0891-0899,2015
抄録 嗜銀顆粒性認知症(DG)は,いまだ十分に臨床医に認知されていない.自験例からは,アルツハイマー病(AD)と比べて以下の特徴が挙げられる.@高齢発症群に多い.A進行は緩徐.B易怒性,頑固,自発性低下など,前頭側頭型認知症と類似の症状を示すが軽い.C画像的に,左右差をもった,側頭葉内側前方等の萎縮・機能画像での低下.D髄液バイオマーカー,アミロイドPETは原則として正常.Eドネペジル塩酸塩は有用ではない.
キーワード 精神症状,左右差,迂回回,髄液バイオマーカー,PET
 
論文名 レビー小体型認知症
著者名 藤城弘樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0900-0907,2015
抄録 レビー小体型認知症(DLB)の臨床病理学的診断基準では,レビー病理とともにアルツハイマー病理によりDLB臨床症候群が規定されている.本稿では,DLB症例における記憶障害,神経画像所見,中核・示唆症状の出現時期におけるアルツハイマー病理の臨床病理学的関与について述べた.Probable DLBの臨床診断基準を満たす症例の多くが,レビー病理の新皮質型であると同時にアルツハイマー病理を伴う事実は,臨床経過を反映したものであると考えられる.
キーワード レビー小体病,神経原線維変化,老人斑,パーキンソン病,アルツハイマー病
 
論文名 簡易な認知症問診技術TOP-Q(東京都大森医師会認知症簡易スクリーニング法)の有用性に関する検討
著者名 工藤千秋・荻原牧夫・金子則彦・熊谷ョ佳・織茂 毅・青木伸夫・渡辺 象・南雲晃彦・瀬義昌・荒井俊秀・北條 稔・鈴木 央・岸 太一・山口晴保
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(8):0909-0917,2015
抄録 自然な会話と簡単な運動機能検査で患者への心的負担を軽くした東京都大森医師会認知症簡易スクリーニング法(TOP-Q)を用いて,50歳以上の区民検診の受診者2,105人を対象にその有効性に関する検討を行った.MMSE評価まで行えた1,071人を対象としたROC解析の結果,TOP-Q得点による認知症疑いのカットオフ・ポイントは2点で,感度0.95,特異度0.86であった.数量化U類による判別率は0.93(相関比0.60)であり,高い検出力を示した. また振り向き徴候がMMSE 20〜23点群で87.5%,10〜19点群で97.7%にみられた.認知症の地域医療連携にとって,TOP-Qは有用な簡易認知症スクリーニング法であることが判明した.
キーワード 認知症,スクリーニング,かかりつけ医,プライマリ・ケア,TOP-Q