論文名 | DSM-5における神経認知障害(NCD)の神経認知領域 |
著者名 | 田渕 肇,沖村 宰,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0237-0241,2015 |
抄録 | DSM-5では,DSM-Wにおける「認知症」のカテゴリーにほぼ相当するものとして,「神経認知障害群」というカテゴリーが設置された.さらに,「複雑性注意」「実行機能」「学習と記憶」「言語」「知覚-運動」「社会的認知」の6つの神経認知領域が定義され,それぞれの領域に関する障害の有無や程度が,神経認知障害群に該当する疾患を診断するための,基本的な診断基準として使用されている. |
キーワード | 神経認知障害,神経認知領域,認知症,認知機能,診断 |
論文名 | 複雑性注意 |
著者名 | 武田景敏 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0242-0247,2015 |
抄録 | DSM-5では新たに神経認知障害群(NCD)という疾患単位が提唱され,それに伴って神経認知領域として複雑性注意を含む6領域が定義された.注意はさまざまな認知機能の基盤であり,独立して評価することはむずかしい.また臨床症状もさまざまで気づかれにくい.一方でレビー小体型や血管性NCDの診断基準に複雑性注意の障害が挙げられており,その評価が重要となる.本稿ではベッドサイドで行える検査から標準化された注意検査について概説した. |
キーワード | complex attention,sustained attention,selective attention,divided attention,processing speed |
論文名 | 実行機能 |
著者名 | 仲秋秀太郎,佐藤順子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0248-0256,2015 |
抄録 | 認知症における実行機能は日常生活と密接な関係があるので,日常生活における実行機能障害を適切に把握することが重要である.本稿では,まず,認知症における実行機能障害の適切な評価と解釈に言及し,評価の具体的な方法を述べた.次に,最近のトピックスのひとつである白質病変の臨床的な意義の観点から,白質病変と実行機能障害との関連に関する問題点を概説した.実行機能を評価するときには,複合的な視野が認知症における臨床にとって必要である. |
キーワード | 実行機能,神経心理検査,質問紙,白質病変,認知症 |
論文名 | 学習と記憶 |
著者名 | 品川俊一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0257-0263,2015 |
抄録 | DSM-5におけるNeurocognitive Disorder(NCD)では,記憶と学習の障害が他の認知機能障害と並列になり,必須項目ではなくなった.これはレビー小体型認知症(DLB)や前頭側頭葉変性症(FTLD)といった必ずしも記憶障害を主症状としない認知症に配慮した結果と考えられる.アルツハイマー病(AD)においてはエピソード記憶障害,近時記憶障害,記銘力障害が病初期から認められる一方,他の原因疾患では異なるパターンを呈する.記憶の分類法や評価尺度にはさまざまなものがあるが,その患者の記憶障害のパタ |
キーワード | DSM-5,記憶,学習,アルツハイマー病,認知症 |
論文名 | 言語障害 |
著者名 | 福井俊哉 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0264-0269,2015 |
抄録 | DSM-5のMajor Neurocognitive Disorder(Major NCD)の症状として,複雑性注意,実行機能,学習と記憶,知覚-運動機能,社会的認知の障害とともに言語障害(失語)が挙げられている.認知症の原因疾患が言語関連脳部位に及ぶと,部位特異的な失語型が発症する.Major NCDによる言語障害は,他の認知障害の結果と誤って解釈されやすく,言語の異常として気がつかれにくいという難点がある. |
キーワード | 言語(language),原発性進行性失語(primary progressive aphasia),失文法/非流暢型進行性失語(non-fluent/agrammatic variant of PPA),意味型進行性失語(semantic variant of PPA),発話減少型進行性失語(logopenic variant of PPA) |
論文名 | 知覚-運動 |
著者名 | 二村明徳,河村 満 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0270-0276,2015 |
抄録 | DSM-5において,Neurocognitive Disorderの中核症状は新たに6領域となり,「知覚-運動」はそのひとつである.下位項目には「視知覚」「視覚構成」「知覚-運動」「実行」「認知」などがあり,評価例を参照すると,視空間認知障害,構成障害,肢節運動失行やactive touchの障害,観念運動性失行や観念性失行,相貌失認や色彩認知などの視覚性失認がまとめられた概念であると考えられる.本稿では,失行と失認についてそれぞれの概念を概観し,評価法を紹介した. |
キーワード | 認知症,失行,失認,標準高次視知覚検査(VPTA),標準高次動作性検査(SPTA) |
論文名 | 社会的認知 |
著者名 | 小早川睦貴 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0277-0283,2015 |
抄録 | ヒトの社会性はさまざまな機能によって保たれていると考えられるため,その概念と評価には複数の方法や考え方を合わせてとらえる必要がある.本稿では社会性を担う認知機能のうち,他者心理の推測と行動選択に焦点をあてて考察した.他者心理の推測は表情認知や心の理論などの機能が重要と考えられ,行動選択では遂行機能として称されてきたような行動抑制に関する機能や,行動結果の価値判断やその情動的価値の認識に関する機能が重要であると考えられる. |
キーワード | 情動,表情,心の理論,抑制,意思決定 |
論文名 | アルツハイマー型認知症に対するガランタミンの使用実態下における安全性および有効性 |
著者名 | 瀧澤真奈美・大西 隆・多月克也・武田京子・池田好功・谷村 相・山岡俊夫・森美知代・久保武一・藤野明子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0285-0296,2015 |
抄録 | ガランタミンの使用実態下における安全性および有効性について検討した最終集計結果を報告する.観察期間は24週間であり,安全性は副作用発現状況で,有効性はClinical Global Impression-Improvement Scale(CGI-I)で評価した.登録症例は2,162例であり,そのうち安全性解析対象は2,123例,有効性解析対象は1,566例であった.副作用発現率は12.8%(271/2,123例)であり,用量(8〜24 mg)に依存した増加はみられなかった.主な副作用は悪心2.8%,食欲 |
キーワード | アルツハイマー型認知症,コリンエステラーゼ阻害薬,ガランタミン,CGI-I,使用成績調査 |
論文名 | 高齢初回受刑者のプロフィールに関する研究 |
著者名 | 野村俊明・川西智也・奥村雄介 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(3):0297-0303,2015 |
抄録 | 急増する高齢受刑者の認知機能を含むプロフィールを明らかにするため,65歳以上の高齢初回男性受刑者145人を対象に調査を行った.主な結果として,@認知症が疑われる低いMini-Mental State Examination(MMSE)得点を示す者が数多く含まれていた.A学歴は全体として低い傾向があったが,相応の職歴のある者が多数を占めていた.B本件犯罪では窃盗や詐欺などの財産犯が多かった.C出所後の引き受け先が確定していない者が多かった.こうした結果から,高齢者の犯罪の背景に高齢になってからの経済的困窮と |
キーワード | 刑務所,高齢受刑者,認知機能,認知症,矯正医療 |