論文名 | 人口構造の変化と医療・介護提供体制への影響 |
著者名 | 川越雅弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0117-0123,2015 |
抄録 | 「社会保障・税一体改革大綱」に基づき,厚生労働省は,団塊の世代が後期高齢期にはいる2025年をターゲットに,地域包括ケア体制の構築に取り組んでいるが,この制度改革の方向性に大きく影響を与えているのが,人口構造や世帯構造の変化である.本稿では,今後の人口構造や世帯構造の変化の特徴について解説したうえで,これらの変化が地域包括ケアの中心となる医療・介護提供体制に及ぼす影響について概観した. |
キーワード | 人口構造,後期高齢者,地域包括ケア,医療提供体制,介護提供体制 |
論文名 | 人口構成の変化と高齢者の身体疾患 |
著者名 | 櫻井 孝,鳥羽研二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0124-0130,2015 |
抄録 | わが国では高齢者人口の割合は25%を超えた.平均寿命は世界最高水準にあるが,健康寿命は男女とも平均寿命より約10年短い.平均寿命の延伸とともに,不健康な期間も延びることが予想される.健康寿命を障害する主たる疾患は,脳血管障害,認知症,骨折・転倒であり,これらの身体疾患は高齢者医療の中心課題である.近年,高齢者のフレイル(虚弱)に関心が高まっている.フレイルとは要介護状態の前段階であり,適切な運動や栄養改善,あるいは社会参加を行うことで,自立した状態に回復することが期待できる状態である.フレイルは老年症候群が複数合併し,生活機能低下をきたした状態であり,予防介入により改善する状態ととらえられる. |
キーワード | 超高齢社会,平均寿命,健康寿命,老年症候群,フレイル |
論文名 | 人口構成の変化と高齢者の抱えるメンタルヘルスの問題の意味するもの |
著者名 | 竹島 正 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0131-0137,2015 |
抄録 | 現在の高齢者は,人格形成をしてきた幼児期,人間性を形成してきた青年期とまったく異なるなかで高齢期を迎えている.高齢社会の進展とともに,高齢精神障害者の医療ニーズが高くなっているだけでなく,さまざまなメンタルヘルスの問題を抱えた本人や家族もまた高齢化している.高齢者の抱えるメンタルヘルスの問題の意味するものは,認知症の高齢者に限定されない,さまざまな困難を抱えて生きているだれもが,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることのできる地域の仕組みづくりである. |
キーワード | 高齢社会,メンタルヘルス,安定した住居,生活支援,地域包括ケアシステム |
論文名 | 高齢者の社会保障・経済的資源の現状 |
著者名 | 忽滑谷和孝 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0138-0145,2015 |
抄録 | 社会保障のなかで,経済面での直接的支援としては,生活保護,年金給付と傷病手当金を3つの柱としている所得保障があり,間接的には,保険医療保障,社会福祉サービスも経済的支えとなっている.本稿では,現時点での高齢者に対する社会保障,とくに経済的資源について概説し,臨床医の視点からみた社会保障の問題点として,介護サービスの利用回数,看護士や介護士が提供できるサービスの限界,生活保護と国民年金の受給額の逆転,サービス利用者側の問題等が挙げられることを示した. |
キーワード | 高齢者,社会保障,介護保険,生活保護 |
論文名 | 高齢者の家族介護および資源の現状と将来 |
著者名 | 関根 聴 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0146-0151,2015 |
抄録 | 介護保険法は改正を繰り返しながら,社会の状況に合わせて制度維持,運用がなされている.しかし,一方では要介護高齢者の増加,保険給付金の財源確保などの影響により,その人的資源の確保がむずかしくなっている.一つのメルクマールである「ベビーブーム世代」が前期高齢者となる2015年,さらに後期高齢者となる2025年を見据えながら,制度の中核をなす,要介護高齢者を取り巻く,家族員,および看護職員,介護職員といった,人的資源の確保や支援体制について検討していくことが必要である. |
キーワード | 家族員,看護職員,介護職員,人的資源,文化的資源 |
論文名 | 高齢者の介護におけるリスクファクターと介護の法的責任の現状 |
著者名 | 坂野智憲 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0152-0158,2015 |
抄録 | 介護保険法施行後,介護保険施設内での介護事故や訪問介護の際の事故が増加している.とくに多いのは歩行時の転倒,ベッドからの落下,入浴介助時の落下・転倒,食事介助時の誤嚥である.高齢者でかつ要介護者であるから,注意義務を尽くしても発生を防止できない場合もある.しかし施設の構造上の不備や職員に対する指導・訓練の不備,医療機関との連携の不備によるものも少なくない.介護事故防止のためのマニュアル整備,職員に対する指導監督をより徹底する必要がある. |
キーワード | 介護事故,高齢者,裁判,法的責任,リスク |
論文名 | ケアマネジメントの現状と将来への提案 |
著者名 | 白澤政和 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0159-0167,2015 |
抄録 | 介護保険制度に位置づけられているケアマネジメントについて,その目的,構造と過程の評価について,現状から将来に向けての改革の提案を行った.具体的には,ケアマネジメントの目的の確立に向けて,@自立支援の明確化,A介護者支援の追加を提案した.また,ケアマネジメント構造の改革としては,@中立公正な仕組みづくり,Aケアマネジメントと情報提供との機能分離,B認知症高齢者バージョンのケアマネジメントの確立を提案した.さらに,ケアマネジメント過程を確立するために,適切な頻度でのモニタリングの実施を提案した. |
キーワード | ケアマネジメント,自立支援,介護者支援,中立公正,情報提供,認知症,モニタリング |
論文名 | 地域包括支援センター専門職を対象とした認知症高齢者の受診援助における専門医療機関との連携実践状況の類型化 |
著者名 | 杉山 京,中尾竜二,佐藤ゆかり,桐野匡史,神部智司,竹本与志人 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0169-0182,2015 |
抄録 | 本研究は,地域包括支援センターの専門職を対象に,認知症高齢者の受診援助における専門医のいる医療機関との連携実践状況を明らかにすることを目的とした.中国・四国・九州地方に設置されている地域包括支援センター3職種1,500人を対象に,属性ならびに専門医のいる医療機関との連携実践等について自記式で回答を求めた.解析には,各質問項目に欠損値のない467人の資料を用いた.統計解析として,専門医のいる医療機関との連携実践について潜在クラス分析を用いて類型化を行った.次いで,各クラスと属性等との関連について,潜在クラスを同時推定した多項ロジットモデルを用いて検討した.その結果,地域包括支援センター専門職における専門医のいる医療機関との連携実践は,4つのクラスに類型化されることが確認された.また,各クラスと属性等との間には有意な関連は確認されなかった.今後は,連携実践の可否を規定する要因の探索が課題である. |
キーワード | 地域包括支援センター,認知症,連携 |
論文名 | 高齢者用集団版認知機能検査ファイブ・コグの信頼性と妥当性の検討 |
著者名 | 杉山美香,伊集院睦雄,佐久間尚子,宮前史子,井藤佳恵,宇良千秋,稲垣宏樹,岡村 毅,矢冨直美,山口晴保,藤原佳典,高橋龍太郎,粟田主一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,26(2):0183-0195,2015 |
抄録 | 高齢者用集団版認知機能検査ファイブ・コグの信頼性と妥当性,および軽度認知障害(MCI)スクリーニング・ツールとしての適用可能性を検討した.対象は65歳以上の地域在住高齢者延べ426人である.ファイブ・コグの再検査法による級内相関係数(ICC)は時計描画課題を除くすべての課題で0.684〜0.809(p<0.01)であった.各課題得点は他の心理検査(MMSE,AQT,WAIS-V,TMT-A,TMT-B,WMS-R)の総合得点および下位得点と広く相関した.CDR 0.5群の各課題の平均得点は,CDR 0群に比較して有意に低く,ROC分析において,全課題の合成得点の曲線下面積(AUC)は0.803(95%CI:0.734-0.872),-0.091をカットオフ値とする感度は78%,特異度は75%であった.ファイブ・コグは地域のなかでMCI高齢者を検出するスクリーニング・ツールとして適用可能である. |
キーワード | 集団式認知機能検査,高齢者用集団版認知機能検査ファイブ・コグ,軽度認知障害(MCI),Clinical Dementia Rating(CDR),認知症,スクリーニング・ツール |