2015 Vol.26 No.10
 
 
第26巻第10号(通巻335号)
2015年10月20日 発行
 
 
 
 
老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
国民総幸福量と世界幸福度
三森康世
特集 認知症初期集中支援チームの現状と課題;処遇困難症例に対する臨床現場での実際の対応を交えて
認知症初期集中支援チームとはなにか
鷲見幸彦
多職種チームによる認知症初期集中支援の実際
山口智晴
基礎的自治体における地域づくりと認知症初期集中支援チーム
橋裕子
認知症初期集中支援チームにおける医師としての役割
小林直人
認知症疾患医療センターと認知症初期集中支援チームの連携と行政の役割
中西亜紀
認知症の看護と介護をする立場から認知症初期集中支援チームに期待すること
伊藤米美
東京都認知症アウトリーチチームの立場から認知症初期集中支援チームに期待すること
鈴木謙一・諏訪 浩
認知症初期集中支援チーム:神戸市における活動の現状と今後の課題
前田 潔・梶田博之
原著論文
メマンチン塩酸塩のアルツハイマー型認知症に対する安全性および有効性
本間 昭ほか
基礎講座
老年心理学の最前線I高齢者の意思決定
渡部 諭
文献抄録
数井裕光
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編集後記

 
 
論文名 認知症初期集中支援チームとはなにか
著者名 鷲見幸彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1077-1084,2015
抄録 医療にも介護にも接続できていない,あるいは中断している認知症の人に対して,自宅を訪問して集中的かつ包括的に関与し,医療・介護につなぐことにより,在宅生活の継続を目指す多職種チームが認知症初期集中支援チームである.2014(平成26)年度に行った全国41か所でのモデル事業では,初期集中支援チームが介入した結果,介護負担尺度得点の改善がみられたうえ,終了者の85.7%が在宅生活を継続できており,有用性が示された.今後の認知症施策の柱として期待される.
キーワード 認知症初期集中支援チーム,多職種連携,新オレンジプラン,認知症
 
論文名 多職種チームによる認知症初期集中支援の実際
著者名 山口智晴
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1085-1092,2015
抄録 2013(平成25)年度から前橋市において認知症初期集中支援チーム(支援チーム)の運営に関与してきた経験をもとに,実際の具体的支援内容について,作業療法士の立場から述べた.支援のなかでも,とくに介護家族への支援は,支援チームが果たすべき役割とその効果は大きいと感じている.また,支援チームにおける作業療法士の役割は,本人と介護家族への支援だけでなく,周囲の物理的・人的環境への介入まで多岐にわたる.今後,地域で認知症の人の在宅生活を支える場面で積極的に関与していくことが望まれる.
キーワード 作業療法,認知症初期集中支援チーム,地域,認知症,介護家族
 
論文名 基礎的自治体における地域づくりと認知症初期集中支援チーム
著者名 橋裕子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1093-1098,2015
抄録 世田谷区の認知症初期集中支援チームの取組みについて,事業の開始に至る経緯や,チームの編成等に関する行政としての準備プロセスの実際,訪問事例の概要等を紹介した.地域支援事業の包括的支援事業として,2017(平成29)年度末までに全国の自治体が本事業を開始するためには,認知症の統合的ケアを実践できるリソースの確保だけでなく,自治体のガバナンスの発揮が重要である.
キーワード 地域包括支援センター,認知症専門相談員,訪問看護師,医療・介護連携,ガバナンス
 
論文名 認知症初期集中支援チームにおける医師としての役割
著者名 小林直人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1099-1105,2015
抄録 筆者は認知症専門機関の医師として,クリニック内に設置された認知症初期集中支援チーム(支援チーム)に携わってきた.医療機関と支援チームが同施設内にあることが功を奏し,訪問した対象者の約8割を受診につなげることができた.対象者の多くが独居や老老世帯であり,中等度レベル以上の認知症患者であった.支援チームが訪問,アセスメントしたケースに対して,専門医から迅速かつ適切なアドバイスが受けられる環境づくりが求められている.
キーワード 認知症初期集中支援チーム,診療所型認知症疾患医療センター,連携,地域包括支援センター,BPSD
 
論文名 認知症疾患医療センターと認知症初期集中支援チームの連携と行政の役割
著者名 中西亜紀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1106-1113,2015
抄録 大阪市の認知症初期集中支援チームは,2014(平成26)年度にモデル事業として東淀川区の1地域包括支援センターに設置された.開始後徐々に,支援チームが受診勧奨して対象者が認知症疾患医療センターを受診することが定着してきている.生活支援へのつなぎが同時並行で行われての受診であるため,病院側にとっても安心感があり,速やかな連携が行われている.今後は,独居高齢者や支援拒否の人など,より複雑な支援が必要な人への対応スキルが求められると考えられる.
キーワード 認知症初期集中支援チーム,認知症疾患医療センター,地域包括支援センター,地域連携
 
論文名 認知症の看護と介護をする立場から認知症初期集中支援チームに期待すること
著者名 伊藤米美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1114-1123,2015
抄録 現在,日本では,認知症とその予備軍の段階にある人の数は900万人いるといわれ,今後もその増大が懸念されており,いかに早期の段階で発見して予防や治療など早期ケアを進めるかが課題となっている.本稿では,地域の住民のなかからどのようにして早期の段階で軽度認知障害・認知症初期の人を掘り起こし,予防や治療につなぐか,どのようなネットワークでのどのような支援が予防と支援につながるのかを考えてみた.
キーワード 早期発見,認知症予防,多職種連携,支え合い,まちづくり
 
論文名 東京都認知症アウトリーチチームの立場から認知症初期集中支援チームに期待すること
著者名 鈴木謙一・諏訪 浩
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1124-1130,2015
抄録 本稿では,まず認知症初期集中支援チームと同様の機能をもつ東京都認知症アウトリーチチームの活動概要などを報告する.そのうえで,アウトリーチ支援におけるソーシャルワーカーのアセスメントのなかから,認知症初期集中支援チームにも活用できるのではないかと筆者らが考えたものについて個別支援を中心に記した.そして最後に,連携を行ううえでの留意点などについて私見を述べた.さまざまな要素にかかわるソーシャルワーカーであるからこそ,目的と手段を混同せず,常に意識化して支援を行うことが大切であると考えている.
キーワード 認知症,アウトリーチ,初期集中支援,ソーシャルワーク,連携
 
論文名 認知症初期集中支援チーム:神戸市における活動の現状と今後の課題
著者名 前田 潔・梶田博之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1131-1136,2015
抄録 神戸市における平成26年9月から10か月間の認知症初期集中支援チーム(支援チーム)の活動(66人の対象者に支援)を,活動開始直後の平成25年9月からの1年間の活動(92人に支援)と比較した.その結果,対象者はより高齢化しており,独居世帯と比較して夫婦二人暮らし世帯および介護保険未申請者が増加し,認知症高齢者の日常生活自立度が低下し,介護認定を受けている者は要介護度が低くなっていた.これらの結果から,支援チームの活動は時間の経過とともに,より初期の要介護度の低い対象者が把握されてくると考えらえた.また,支援チームの今後の課題について考察した.
キーワード 認知症初期集中支援チーム,神戸市,介護保険サービス,認知症鑑別診断,課題,人材育成,困難事例
 
論文名 メマンチン塩酸塩のアルツハイマー型認知症に対する安全性および有効性
著者名 本間 昭・小澤ますみ・塩境一仁・濱島里子・奥谷幸裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(10):1139-1154,2015
抄録 メマンチンの特定使用成績調査は,中等度および重度のアルツハイマー型認知症を対象とし,本剤の長期使用に関する安全性および有効性を確認することを目的として2011年12月に開始された.基本的な観察期間を12か月とし,最長36か月間の観察を行うこととしている.登録期間終了までに3,025例が登録され,2014年4月に中間集計結果として,投与開始から3か月時点までの安全性と有効性を報告している.今回,2014年10月31日までにデータが固定された3,008例について12か月間の安全性および有効性を検討した.その結果,副作用発現率は16.73%であり,副作用の多くは本剤の漸増期に発現していた。また,簡易認知機能検査MMSEスコア,FASTステージとも12か月間にわたって維持・改善が認められた.さらに,主治医による総合的有効性評価では,83.5%の症例で「有効」と評価され,長期使用によるメマンチンの安全性と有効性が確認された.
キーワード メマンチン,アルツハイマー型認知症,MMSE,安全性,有効性