2015 Vol.26 No.1
 
 
第26巻第1号(通巻324号)
2015年1月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
巻 頭 言
リハビリテーションと認知症
飯島 節
特集 老年期精神疾患の臨床像に与える血管障害の影響
血管性認知症の疫学
小原知之・清原 裕
血管障害とうつ病・アパシー
山下英尚ほか
血管障害とせん妄
長谷川典子・池田 学
脳血管障害を合併したアルツハイマー型認知症の臨床像と薬剤反応性
中塚晶博・目黒謙一
レビー小体型認知症における血管障害の影響
近藤大三・井関栄三
地域での実践
特発性正常圧水頭症と血管障害
和田民樹ほか
原著論文
郵送調査回答未返送の後期高齢者に対する訪問調査―― 大都市における潜在認知症高齢者の実態把握
井藤佳恵ほか
調査報告
認知症の行動・心理症状に対する関連多職種のかかわりおよび意識の違いについて―― 医療職,介護職を対象とした調査
梶田博之ほか
基礎講座
老年心理学の最前線@老年心理学研究の最前線
佐藤眞一
連  載
老年期の精神医療における多職種協働の実践例報告I社会参加の再開により娘に対する被害妄想が消失した一例
村井千賀・北村 立
文献抄録
繁田雅弘
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編集後記

 
 
論文名 血管性認知症の疫学
著者名小原知之,清原 裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0011-0018,2015
抄録福岡県久山町で行われた時代の異なる認知症の有病率調査の成績を比較した結果,血管性認知症(VaD)の有病率に明らかな時代的変化はなかった.国内外の追跡調査の成績をまとめると,高血圧や糖尿病を含む糖代謝異常はVaD発症の危険因子であり,運動や和食+野菜+牛乳・乳製品という食事パターンはVaD発症の防御因子であった.VaDの有病率に時代的変化がなかった背景には,糖代謝異常の急増が高血圧治療の予防効果を相殺したことが影響している可能性が高い.
キーワード血管性認知症,疫学,糖尿病,高血圧,食事
 
論文名 血管障害とうつ病・アパシー
著者名山下英尚,濱 聖司,村上太郎,町野彰彦,志々田一宏,小早川誠,淵上 学,土岐 茂,吉野敦雄,岡本泰昌,山脇成人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0019-0025,2015
抄録脳血管障害は高齢者において,器質性の精神障害の原因のなかで大きな位置を占める.脳血管障害に関連した器質性の精神障害のなかで最もよく知られているのは血管性うつ病(VD)であるが,近年の報告ではモチベーションの障害であるアパシーも脳血管障害に関連した精神神経症状として高頻度に認められることが繰り返し報告されており,うつ病・アパシーともに認知機能障害との関連や脳卒中後の機能回復を阻害する要因として重要である.精神科領域ではアパシーはうつ病の部分症状としてとらえられることが多かったが,近年では独立した病態であると
キーワードvascular depression,アパシー,脳卒中,基底核,左側前頭葉
 
論文名 血管障害とせん妄
著者名長谷川典子,池田 学
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0026-0031,2015
抄録血管性認知症は,せん妄を高頻度に併発することが知られている.また,脳血管障害なかでも小血管病は,神経変性疾患に併存すると,せん妄を高率で惹起する.したがって,脳血管障害を有するか否かを評価し,脳血管障害を予防することは,せん妄の診断と予防の観点から意義がある.とくに,認知症の患者に対しては,せん妄のマネジメントにおいて,介護者,各種医療機関,介護事業所との連携が必要となる.
キーワードせん妄,脳血管障害,認知症,BPSD
 
論文名 脳血管障害を合併したアルツハイマー型認知症の臨床像と薬剤反応性
著者名中塚晶博,目黒謙一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0032-0040,2015
抄録アルツハイマー型認知症(AD)には高頻度で脳血管障害の合併が認められるが,血管性病変の部位によってその影響が異なる.とくに視床などの戦略的重要部位や,コリン作動性投射路における病変の評価が重要と考えられる.脳血管障害を伴うADに対するAD治療薬の有効性については,ある程度のエビデンスが得られており,現時点ではアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬,とくにガランタミンの有効性を支持するデータが比較的有力である.今後,脳血管障害の部位や程度の影響も含めて,各種薬剤に対してさらなる検討が必要と思われる.
キーワード混合型認知症,脳梗塞,血管性認知症,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬,ガランタミン
 
論文名 レビー小体型認知症における血管障害の影響
著者名近藤大三,井関栄三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0041-0047,2015
抄録実臨床において,アルツハイマー型認知症(AD)と同様に血管障害を伴うレビー小体型認知症(DLB)に遭遇する機会は少なくない.しかし,DLBは多彩な臨床症状を呈するため,血管障害が加わると臨床像がより複雑となり,病態理解が困難となる.本稿では,DLBに対する血管障害の影響を考慮するにあたって,両者に共通してみられる臨床症状に注目し,その発症機序や臨床像の違いについて概説した.
キーワードレビー小体型認知症,血管性認知症,血管性認知機能障害,血管性パーキンソニズム,血管性うつ病,一過性脳虚血発作
 
論文名 特発性正常圧水頭症と血管障害
著者名和田民樹,数井裕光,武田雅俊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0048-0053,2015
抄録特発性正常圧水頭症(iNPH)とビンスワンガー病はその画像的特徴や症状の類似点から,鑑別が問題とされてきた.iNPHは治療可能な病態であり,より正確な鑑別診断を行うことが必要である.本稿では,両者の類似点および鑑別点について述べ,さらにiNPHの脳形態変化と大脳白質病変との関係について,筆者らの研究結果を交えて報告する.
キーワード特発性正常圧水頭症(iNPH),血管障害,白質病変,ビンスワンガー病
 
論文名 郵送調査回答未返送の後期高齢者に対する訪問調査
著者名井藤佳恵・稲垣宏樹・杉山美香・粟田主一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0055-0066,2015
抄録生活機能が低下した高齢者を把握する介護予防二次予防事業対象者把握事業は,多くの自治体で郵送によるアンケート調査によって行われている.この方法による生活機能調査は,回答未返送者のなかの,認知症を含むハイリスク高齢者の把握を課題として残す.本研究は地域に潜在する認知症高齢者の実態を把握することを目的として,郵送調査回答未返送,要介護要支援未認定の後期高齢者を対象とした訪問調査を実施した.CDR≧1で定義される認知症の出現頻度は9.8〜18.6%,CDR 0.5で定義される認知症疑いを含めるとその出現頻度は24
キーワード潜在認知症高齢者,事例化,地域在住,訪問調査,縦断的研究
 
論文名 認知症の行動・心理症状に対する関連多職種のかかわりおよび意識の違いについて
著者名梶田博之・柿木達也・九鬼克俊・前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,26(01):0067-0074,2015
抄録認知症の行動・心理症状(BPSD)は,認知症者およびその介護者のQOLを低下させ,介護者の介護負担感の増加などに大きな影響がある.本研究は,BPSDに対する多職種間のかかわりや意識の違いの有無を明らかにすることを目的とし,兵庫認知症診療連携会が中心となり,医師,看護師,薬剤師,介護支援専門員(CM),介護職員の5つの専門職を対象にアンケート調査を実施した.その結果,多くの専門職がBPSDを負担に感じている現状が示された一方,医師や看護師などの医療職に比べて,CM・介護職員は薬物を使用せずともBPSDをコン
キーワード認知症,BPSD,多職種連携