論文名 | DSM-5の分類原理を考える |
著者名 | 仙波純一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0841-0844,2014 |
抄録 | 2013年に発表されたDSM-5では,疾患の分類原理としてスペクトラム概念とディメンション評価が注目される.前者は,それぞれの疾患の境目は,元来明確なものではないと考えるものである.また後者は,すべての症状をもとに,患者を系統的に評価する方法である.アメリカ国立精神衛生研究所(NIMH)では精神症状と神経科学的所見を組み合わせた,RDoC(Research Domain Criteria)と呼ばれる診断法を開発中である.今後の精神科診断はディメンション評価に向かうことが予想される. |
キーワード | DSM-5,スペクトラム概念,ディメンション評価 |
論文名 | DSM-5における神経認知障害群(Neurocognitive Disorders)について |
著者名 | 深津 亮,原 祐子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0845-0853,2014 |
抄録 | DSM-5に新たに登場した用語,神経認知障害群のもとに記載された領域を概観した.神経認知障害群では,せん妄,認知症,軽度認知障害に該当する諸障害が記載されている.この群の概念の変遷を顧みて,診断基準の変更点ないしは追加点に論及した.せん妄,認知症,軽度認知障害の診断基準によって,それに該当すると診断された場合には,病因的下位分類を特定することになる.この診断基準について進展を遂げた点と問題点を指摘した.DSM-5は臨床的な診断基準であるが,発症前(preclinical)の段階からの臨床的な特徴との関連や |
キーワード | DSM-5,Neurocognitive Disorders,神経認知障害群,せん妄,認知症,軽度認知障害,発症前診断 |
論文名 | せん妄 |
著者名 | 高橋由佳,天野直二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0854-0857,2014 |
抄録 | DSM-5の「せん妄(Delirium)」におけるDSM-W-TRからの主要な変更点は,せん妄の一次的な障害を,「注意(attention)と意識(awareness)の障害」と明確に規定したことと,支持的な症状とサブタイプが明記されたことである.高齢者はせん妄の発症率が高く,遷延しやすい.神経認知障害やうつ病との鑑別はむずかしく,併存例があることにも注意を要する.DSMの改訂を機会に,今一度せん妄の知識を再確認することが重要である. |
キーワード | DSM-5,せん妄,高齢者,神経認知障害,低活動型せん妄 |
論文名 | アルツハイマー病による認知症または軽度認知障害 |
著者名 | 沖村 宰,田渕 肇,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0858-0861,2014 |
抄録 | DSM-5において,アルツハイマー病は,「アルツハイマー病による認知症または軽度認知障害」として分類された.本稿では,はじめに,近年のアルツハイマー病研究の進展や研究の動向の概説を,病前診断,早期治療やバイオマーカーの確立というテーマからまとめた.次に,上記を踏まえて,DSM-Wからの変更点として,記憶障害と軽度認知障害の位置づけ,診断・バイオマーカーの重要性が増した点を中心に論考した. |
キーワード | 病前診断,軽度認知障害,ADNI,バイオマーカー,アミロイドカスケード |
論文名 | 前頭側頭型認知症または前頭側頭型軽度認知障害 |
著者名 | 池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0862-0867,2014 |
抄録 | 前頭側頭型認知症または前頭側頭型軽度認知障害は,DSM-5で大きく変わった章のひとつである神経認知障害群(Neurocognitive Disorders)のなかでも,最も大きく変化した項目のひとつである.その臨床亜型として行動障害型と言語障害型に分類された点,神経画像ないし遺伝子変異の存在が確実な前頭側頭型神経認知障害の要件とされた点,などが特筆すべき点であろう.行動障害型については,最新の診断基準を取り入れた点で,高く評価されてよいと思われる.一方,言語障害型については,最新の診断基準そのものにも問題 |
キーワード | Frontotemporal Neurocognitive Disorder,原発性進行性失語,前頭側頭型認知症,前頭側頭葉変性症 |
論文名 | レビー小体病を伴う認知症(レビー小体型認知症)または軽度認知障害 |
著者名 | 笠貫浩史,井関栄三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0868-0871,2014 |
抄録 | DSM-5診断基準改訂で認知症は神経認知障害(NCD)とされ,McKeithの診断基準によるレビー小体型認知症(DLB)に相当する概念としてレビー小体病を伴う認知症または軽度認知障害(NCD with Lewy Bodies)がおかれた.病因を考慮した障害分類によってDSMでもDLBが診断可能となった.本稿ではMcKeith基準とDSM-5新基準を比較して,その特徴を記載した. |
キーワード | レビー小体病,レビー小体型認知症,レビー小体病を伴う認知症 |
論文名 | パーキンソン病による認知症または軽度認知障害 |
著者名 | 笠貫浩史,井関栄三 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0872-0876,2014 |
抄録 | EmreのPDD診断基準によるパーキンソン病に伴う認知症(dementia associated with Parkinson’s disease ; PDD)にほぼ相当する概念として,DSM-5ではパーキンソン病による認知症または軽度認知障害(Neurocognitive Disorder Due to Parkinson’s Disease)がおかれた.本改訂で,病因を考慮した障害分類によりDSMでもPDDが診断可能となった点が評価できる.本稿ではEmre基準とDSM-5新基準を比較し,その特徴を記載 |
キーワード | レビー小体病,認知症を伴うパーキンソン病,パーキンソン病による認知症 |
論文名 | 血管性認知症または血管性軽度認知障害 |
著者名 | 中村敏範,天野直二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0877-0880,2014 |
抄録 | 血管性認知症(DSM-5)または血管性軽度認知障害(DSM-5)は,認知欠損と脳血管障害との間に時間的な関係があることや神経画像が診断に重要であり,DSM-Wと比べて診断基準が精緻になっている.血管性認知症に関する他の診断基準と類似点が多く,それらがDSM-5の改訂に影響を与えたと考えられる. |
キーワード | 血管性認知症(DSM-5),血管性軽度認知障害(DSM-5),認知欠損,脳血管障害,神経画像 |
論文名 | 外傷性脳損傷による認知症または軽度認知障害 |
著者名 | 林 博史,川勝 忍,小林良太 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0881-0883,2014 |
抄録 | DSM-5の「外傷性脳損傷による認知症」または「外傷性脳損傷による軽度認知障害」では,@意識喪失,A外傷後健忘,B失見当識および錯乱,C神経画像上の脳損傷の所見,てんかん発作や神経脱落症状のうち1つ以上があり,急性期を過ぎても神経認知障害が残存することが診断基準になっており,DSM-Wより具体的,実際的なものになっている. |
キーワード |
論文名 | HIV感染による認知症または軽度認知障害 |
著者名 | 小林良太,川勝 忍,林 博史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0884-0886,2014 |
抄録 | DSM-5の「HIV感染による認知症」または「HIV感染による軽度認知障害」では,HIVによる感染の記録があり,その認知障害が,進行性多巣性白質脳症やクリプトコッカス髄膜炎などの二次的脳疾患を含むHIV以外の疾患では説明できないことが診断基準となっている.DSM-Wと比較して,長期生存に伴う問題をはじめ,近年の知見を踏まえたより詳細なものになっている. |
キーワード | HIV感染,認知症,軽度認知障害,HIV関連神経認知障害(HAND) |
論文名 | プリオン病による認知症または軽度認知障害 |
著者名 | 池田研二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0887-0890,2014 |
抄録 | DSM-5ではMCIに相当する「軽度認知障害」という概念が導入された.プリオン病は倦怠感,不安,食欲や睡眠の異常,注意集中困難の前駆症状で始まり,診断に重要な特徴として,亜急性の急速な進行を示し,数か月の間に高度の認知症に陥ること,失調あるいは不随意の運動症状を伴うこと,生物学的マーカーとして,MRIの拡散強調画像で皮質および皮質下灰白質の多発性の高信号,髄液検査で14-3-3タンパクの存在,脳波の三相波の出現,が挙げられている. |
キーワード | プリオン病,クロイツフェルト・ヤコブ病,亜急性海綿状脳症,認知症,軽度認知障害 |
論文名 | ハンチントン病による認知症または軽度認知障害 |
著者名 | 布村明彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0891-0894,2014 |
抄録 | DSM-5では,認知機能障害を主徴とする疾患は“Neurocognitive Disorders(NCDs:神経認知障害群)”に一括され,Mild NCD「軽度認知障害」およびMajor NCD「認知症」が含まれる.DSM-5ではDSM-Wに比べてNCDsの各種基礎疾患について詳しく記述された.ハンチントン病によるMild or Major NCDについても診断基準が示され,診断は緩徐進行性の認知機能障害,特有の運動症状,および家族歴あるいは遺伝子診断から下される. |
キーワード | ハンチントン病,DSM-5,診断基準,軽度認知障害,認知症,神経認知障害 |
論文名 | ICD-11の動向 |
著者名 | 丸田敏雅,松本ちひろ |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0895-0898,2014 |
抄録 | WHOはICD-11の作成作業を行っているが,当初,世界保健総会での承認が2015年に予定されていたが,作業の遅れから最も新しい予定ではこれが2017年に変更された.現在,「精神と行動の分野」でも改訂作業が行われている.本稿では,この「精神と行動の分野」,とくに老年期の精神障害の作成状況について概説し,すでに草案が発表されているICD-11プライマリヘルスケア版についてふれた.今後,アルツハイマー病による認知症,前頭側頭型認知症,レビー小体病を伴う認知症および血管性認知症の4大認知症と呼ばれる認知症がどの |
キーワード | ICD-11, classification, neurocognitive disorders, primary care, diagnostic criteria |
論文名 | 診断マニュアルに求められるもの |
著者名 | 松下正明 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0899-0902,2014 |
抄録 | DSM-5における神経認知障害群に関する診断マニュアルが,現実の臨床の場で,認知症性疾患(障害)や,あるいはその状態像の診断に役立つのかどうか,現実の臨床の場で有用な診断マニュアルとしてはなにが求められるのか,について考察を加えた.その結果,DSM-5における「認知症」「軽度認知障害」の状態像診断には,診断者の恣意性にゆだねるところが多く,その明晰性・画然性さらには臨床的妥当性・有用性において,大きな欠陥があることを指摘した. |
キーワード | DSM-5における診断理念,DSM-5診断マニュアル,認知症,軽度認知障害,正常高齢者 |
論文名 | 日本語版Marwit-Meuser Caregiver Grief Inventory短縮版(MM-CGI-SF-J)の作成ならびにその信頼性と妥当性の検討 |
著者名 | 大村裕紀子・井藤佳恵・粟田主一・深津 亮 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0905-0915,2014 |
抄録 | 高齢期は喪失の時代とされ,高齢者,認知症高齢者,家族介護者はそれぞれ特有の喪失とそれによる悲嘆を体験している.このような体験はそれぞれの精神状態や介護機能に多大な影響を与える.しかしながら,わが国ではこれらの症候は臨床的に十分な検討を加えられておらず,客観的に測定する評価尺度も存在しない.Marwit-Meuser Caregiver Grief Inventory-Short Form(MM-CGI-SF)は,認知症高齢者を介護する家族の悲嘆を評価するためにアメリカで開発された尺度であり,その信頼性と妥 |
キーワード | 喪失,悲嘆,認知症家族介護者,日本語版Marwit-Meuser Caregiver Grief Inventory短縮版(MM-CGI-SF-J),人格の形骸化 |
論文名 | 在宅高齢者の精神的健康状態と社会関係,生きがい感,役割および身体的健康状態ほかの関連性 |
著者名 | 青木邦男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(8):0916-0927,2014 |
抄録 | 在宅高齢者735人(男性322人,女性413人)を分析対象者として,在宅高齢者の精神的健康状態,社会関係,生きがい感,役割および身体的健康状態ほかを調査し,その関連性を共分散構造分析を用いて分析した.その結果,以下のことが明らかになった.@男性では生きがい感,役割および身体的健康状態が相互に有意な関連(相関)をもちながら,精神的健康状態に対して有意な負の影響(パス係数)を示した.A女性では社会関係,生きがい感および身体的健康状態が相互に有意な関連(相関)をもちながら,精神的健康状態に対して有意な負の影響( |
キーワード | 社会関係,生きがい感,役割,身体的健康状態,精神的健康状態 |