論文名 | 精神科における認知症医療の課題と展望 |
著者名 | 高橋幸男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0731-0737,2014 |
抄録 | 認知症になるということはとても不安でつらく,ほとんどの人が戸惑い悩んでいる.精神科らしい認知症医療とは,認知症を早期に診断したあとの早期対応に責任をもつことである.それは,“悩める”認知症の人のメンタルヘルスをどう支えるかということであり,それによってBPSDを減らすことが可能である.そして,認知症の人のストレングスを大切にした地域生活支援を多機関・多職種と連携して行う必要がある.そのためには,認知症を病む人の思いや家族の思いをもっと知る必要がある. |
キーワード | メンタルヘルス,認知症,地域生活支援,早期診断,早期対応,ストレングス |
論文名 | 認知症医療における基幹型認知症疾患医療センターの役割と課題 |
著者名 | 小嶋誠志郎,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0738-0743,2014 |
抄録 | 国における認知症疾患医療センター事業が開始して7年目となる.認知症高齢者数は従来の予想をはるかに超え,462万人と推計された.さまざまな認知症施策が展開されるなか,認知症疾患医療センターの機能分化が図られ,熊本県が2009年から取り組んでいる基幹型センターと地域拠点型センターの2層構造は,熊本モデルとして全国に普及しつつある.今後,認知症疾患医療センターの認知症医療に果たす役割はさらに重要となり,それと同時にさまざまな課題に直面するものと予想される.本稿では,基幹型センターの特徴と今後のあるべき姿について |
キーワード | 認知症医療,認知症疾患医療センター,熊本モデル,基幹型センター,機能分化 |
論文名 | 認知症疾患医療センター(地域型・栃木県) |
著者名 | 根岸協一郎,芝塚梨華,石田倫子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0744-0750,2014 |
抄録 | 認知症疾患医療センターの役割は,患者への医療的対応だけでなく,家族への対応や医療機関および介護関連施設との調整など多岐にわたる.本稿では,当センターの相談実績(平成16〜25年度)・入院実績(平成16〜24年度)について述べた.地域連携室が受診・入院前から患者やその家族にかかわることで,退院後の生活に必要な支援を把握し,入院期間の短縮につながった.こうした地域連携室の活動によって医療・介護・福祉が協働する切れ目のない地域包括ケアシステムの充実を図ることが可能になった. |
キーワード | 認知症疾患医療センター,地域完結型医療,地域連携室,精神科病院,トータルケアモデル |
論文名 | 認知症在宅ケアの新たな取組み |
著者名 | 片山智栄,新川祐利 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0751-0759,2014 |
抄録 | 2012年に「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が策定され,認知症初期集中支援サービスのモデル事業が開始された.このサービスは,認知症になっても本人の意思を尊重し,住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることが可能になるように,できるかぎり早期に本人と介護者に包括的な支援を行うものである.当院は世田谷区から委託を受け,訪問看護師を中心に活動している.今回,アウトリーチやチーム員会議の実践活動内容を中心に,事業内容について紹介した. |
キーワード | 認知症,認知症初期集中支援サービス,地域包括ケアシステム,オレンジプラン,訪問看護 |
論文名 | 認知症医療支援診療所(仮称)地域連携モデル事業について |
著者名 | 新田國夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0760-0766,2014 |
抄録 | 当医療法人では,認知症医療支援診療所(仮称)地域連携モデル事業を平成25年10月〜平成26年3月まで受託した(実施主体は国立市,実施医療機関は医療法人つくし会).国立市における認知症の人の要介護状態の分析から日常生活の状態像を考え,それに伴い,現在の認知症対策の地域連携モデル事業を中心とした国立市の取組みからみえる問題点を考察した. |
キーワード | 国立市,かかりつけ医,認知症医療支援診療所,独居,費用対効果 |
論文名 | 認知症に対するかかりつけ医の役割と課題 |
著者名 | 弓倉 整 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0767-0772,2014 |
抄録 | 超高齢社会において,地域包括ケアシステムの構築とともに,「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が策定され,かかりつけ医には認知症の早期診断・早期対応の役割が期待されているが,かかりつけ医の役割は,専門医との役割分担,多職種との連携,日常健康管理,在宅医療や終末期医療まで幅広い.しかし個々のかかりつけ医が提供できる医療には限度があり,医師会や行政がかかりつけ医を支援する体制整備が必要である. |
キーワード | かかりつけ医,認知症,地域包括ケア,医療連携,多職種協働 |
論文名 | 認知症医療における精神科クリニックの役割 |
著者名 | 大澤 誠 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0773-0778,2014 |
抄録 | “地域包括ケア”という文脈のなかで,認知症医療に関する精神科クリニックの役割を,誤解を恐れずにいえば,入院を可能な限り回避することと筆者は位置づけた.それを回避するためには診断・BPSDの薬物治療および非薬物治療に関して精神科医としての機能を十分に発揮することが求められる.また当院では,認知症の人の身体合併症への対応と看取りも実践している.それらが実効的に行われるには,多職種協働は必須である. |
キーワード | 地域包括ケア,認知症,BPSD,精神科クリニック,身体合併症,多職種協働 |
論文名 | レビー小体型認知症の1例にみられたカプグラ症状について |
著者名 | 狩野正之・織内 昇・三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0781-0790,2014 |
抄録 | 妻が8人のよく似た偽物とすり替わっているというカプグラ症状(CS)をもった72歳の症例を報告した.本例のCSは半年続いたが,レビー小体型認知症の診断基準に合致したのでドネペジル5 mg/日を投与したところ,数日で劇的に消失した.CSは発症2年後に再発したが,ドネペジルの増量が効果を示した.本例のCSの発症と再発時には夫婦間の心理的葛藤がきっかけとなっていたと考えられたので,小精神療法を行ったところドネペジルの効果に補助的に働いた.CSの初発時および再発時におけるSPECT所見では,後頭,頭頂,下側頭におけ |
キーワード | カプグラ症状,レビー小体型認知症,脳血流SPECT,顔認知モデル,扁桃体 |
論文名 | 統合失調症様症状を示した右視床出血の1症例 |
著者名 | 香川 潔,羽原弘造,河上靖登,江原 嵩 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,25(7):0793-0798,2014 |
抄録 | 炊事動作が突発的に停止して立ちすくむ行動異常を示し,介護する夫に言語的返答がなく拒絶反抗的な態度を示した,精神病性疾患と認知症の既往歴がない78歳の女性において,頭部CT検査により右視床に小出血がみられた.発症初期より,緘黙・困惑・不安・自閉・拒絶・不関性・終日臥褥などの行動異常と,被害妄想・関係妄想・妄想気分などの思考障害がみられた.保存的治療の第90病日ごろには発症時の心理状態を話すようになり,第100病日ごろには臥褥による廃用性筋力低下に対するリハビリテーションに積極的に参加するようになった.なお, |
キーワード | 右視床出血,統合失調症様症状,視床性健忘,視床内側部,神経回路 |