2014 Vol.25 No.6
 
 
第25巻第6号(通巻317号)
2014年6月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
 
巻 頭 言
「もの忘れ外来」で感じていること
末次基洋
特集: 経済格差と高齢者精神医療
高齢者の経済格差 ―― その実像と精神健康への影響
藤原佳典
高齢期の貧困はいかにしてつくられるのか
山田知子
地域包括の視点からみる今後のオレンジプランの展開
翁川純尚
認知症高齢者の福祉と経済問題 ―― 福祉の現場からみえること
永由義広ほか
経済的困難を抱える認知症高齢者を困難事例化させる要因―― 認知症高齢者困難事例を対象としたアウトリーチ型支援事業からみえるもの
井藤佳恵
資力に欠ける高齢世帯の後見実務と生活保護制度の問題点
金川 洋
高齢者がホームレス状態にある理由―― ホームレス支援の実践からみえてきたもの
森川すいめい
原著論文
軽度認知障害(MCI)における記憶障害の特徴と傾向── 日本語版The Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の検討から
追分千春ほか
原著論文
アルツハイマー病におけるなぞり型closing-in現象の検討
大湊佳奈子ほか
短報
東京都大森医師会認知症簡易スクリーニング法(TOP-Q)の作成── かかりつけ医・介護職のための短時間で行う問診技術
工藤千秋ほか
連載
老年期の精神医療における多職種協働の実践例報告B
若年期アルツハイマー病の在宅ケア破綻予防と家族史的アプローチの試み ── ケアマネジャーのエンパワメント向上を目的とした生活臨床的試み
上村直人ほか
文献抄録
市川幸子・松田 修
書  評
「病から詩がうまれる;看取り医がみた幸せと悲哀」
斎藤正彦
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編集後記

 
 
論文名 高齢者の経済格差
著者名 藤原佳典
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0617-0623,2014
抄録 健康の社会的決定要因(SDH)のひとつに経済状況がある.高齢者の経済状況は青壮年世代に比べて資産は高いものの,大半が医療・介護や生活維持に備えられている.所得格差は高年齢になるとともに拡大傾向にあり,75歳以上では顕著である.精神健康の決定要因として,客観的な収入階層に加えて主観的な暮らし向きの影響も重要である.経済格差への介入に向けてはソーシャル・キャピタルの醸成による地域づくりが期待される.
キーワード 経済格差,健康格差,社会的決定要因,所得,暮らし向き
 
論文名 高齢期の貧困はいかにしてつくられるのか
著者名 山田知子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0624-0629,2014
抄録 高齢期は年金依存度が高く,疾病や障がいをもつ可能性があるため,基本的に貧困に陥りやすい時期である.弾力性に欠け,自助努力で再生しにくい.それゆえ,社会的な支援が不可欠であろう.生活問題を抱える高齢者を引き受ける養護老人ホームの入居者の来歴を調査したところ,社会保険外の働き方や精神的な疾病とリンクした住宅喪失といった実態が浮かび上がった.養護老人ホームなどを拠点にするなど,多様な生活問題を実質的に解決できる地域支援体制の確立が必要である.
キーワード 高齢者の貧困,養護老人ホーム,格差,生活問題,高齢者世帯
 
論文名 地域包括の視点からみる今後のオレンジプランの展開
著者名 翁川純尚
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0630-0635,2014
抄録 平成25年からスタートした「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」が施行2年目を迎えたが,今後も「標準的な認知症ケアパスの作成・普及」,認知症初期集中支援チーム等の「早期診断・早期対応」などさまざまな取組みの継続的な推進が必要である.また,これには第186回通常国会で成立した介護保険制度等の改正(医療介護総合確保推進法)のポイントである,「(認知症施策の推進を含む)地域包括ケアシステムの構築」と「費用負担の公平化」を踏まえた政策実施が必要不可欠となる.
キーワード 認知症ケアパス,認知症初期集中支援チーム,医療介護総合確保推進法案,地域包括ケアシステム,費用負担の公平化
 
論文名 認知症高齢者の福祉と経済問題
著者名 永由義広,鈴木克巳,高橋明美,伊東弘一,岩井 誠,久保田康之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0636-0643,2014
抄録 75歳以上人口の増加に伴い,認知症高齢者も増えていく.それに対応するためには,認知症の早期発見,対応が必要であり,地域包括ケアを推進し,住み慣れた地域で在宅生活を送れるようにしていかなければならない.そのためには,経済問題を含めて地域の高齢者と介護する家族がどのような問題を抱えているかを知る必要がある.そこで本稿では,現場からみえる実態を,事例を通して紹介した.どの事例も複数の問題を抱えていること,成年後見制度の活用がカギになることがわかる.セーフティーネットである施設サービスも,低所得高齢者にとっては選
キーワード 認知症,生活問題,成年後見制度,自己決定,権利侵害
 
論文名 経済的困難を抱える認知症高齢者を困難事例化させる要因
著者名 井藤佳恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0644-0650,2014
抄録 困難事例が経済的困難を抱えていることは決して少なくないが,経済的困難のみで事例が困難化するわけではない.経済的困難に付随あるいは併存する他の要因が事態を複雑困難化させ困難事例化が起こる.重層化する困難事象のなかで,“支援者とのかかわりのなかで生み出される困難事象”を可変的で回避可能な要因ととらえ,支援者とのかかわりが困難事象を生み出さないためには,人間の多様なあり方に対する理解をもって支援の全体像を描くことが重要である.
キーワード アウトリーチ,経済的困難,困難事象,困難事例,認知症高齢者
 
論文名 資力に欠ける高齢世帯の後見実務と生活保護制度の問題点
著者名 金川 洋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0651-0657,2014
抄録 成年後見制度は,判断能力が劣るすべての人のための支援制度である.内容は財産管理と身上監護(生活支援)にかかわる法律行為とされている.しかし後見実務上では資力が乏しいことによって生じる特有の問題も多くある.本稿では現在の成年後見制度の運用上の問題点をいくつかの事例によって示し,さらに貧困対策の基盤である生活保護制度の,後見実務からみた実情と問題点を探って,改善策の提示を試みる.
キーワード 成年後見,身上監護,生活保護,成年後見制度利用支援事業,家族支援
 
論文名 高齢者がホームレス状態にある理由
著者名 森川すいめい
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0658-0664,2014
抄録 高齢者がホームレス状態になる原因には,頼ることができる人がいないか,または十分に見守る体制を組めなかったことが理由として考えられる.たとえば構造上の理由として,「低所得不安定就労者」「生活を維持するための貯蓄がなくなった」「認知症等の能力低下」や,心理的な理由としては「自律して生きることを選択している」「どうしたらいいかわからなくなった」「将来を絶望している」などが挙げられる.高齢者のホームレス問題の解決のためには生活保護制度の見直しと,地域に無料でいられる場所が増えることが必要である.
キーワード ホームレス,貧困,生活保護,格差社会,認知症
 
論文名 軽度認知障害(MCI)における記憶障害の特徴と傾向
著者名 追分千春・大日方千春・田畑千絵・塚田大剛・鳥羽泰之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0667-0674,2014
抄録 本研究では,軽度認知障害(MCI)の記憶障害の特徴と傾向を明らかにすることを目的に,日本語版The Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の下位項目と記憶(第1施行・第2施行)と遅延再生(自由再生,カテゴリ,多肢選択)の正答数に着目した調査を行った.対象は,もの忘れを主訴に当院を受診した123人の患者(CDR 0:35人,CDR 0.5:58人,CDR 1:30人)であった.調査の結果,MoCA-JはMCIにおける記憶の重症度について,天井効果を示すことなく検出できるこ
キーワード 軽度認知障害 (MCI), 日本語版The Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J), 臨床的認知症尺度 (CDR),記憶障害
 
論文名 アルツハイマー病におけるなぞり型closing-in現象の検討
著者名 大湊佳奈子・山崎惠莉奈・佐藤卓也・今村 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0675-0682,2014
抄録 【背景】Mayer-Gross(1935)は,脳損傷患者が構成課題を行う際に,モデルから離れて遂行することができず,モデルに重ねて描いたり,近づけて描いたり,なぞったりすることを観察し,これをclosing-in現象と命名した.山崎ら(2006)は,レビー小体を伴う認知症ではアルツハイマー病よりも高頻度にclosing-in現象が生じることを見いだした.三瓶ら(2010)は接触・交差型のclosing-in現象が遂行機能障害と関係すること,取込型のclosing-in現象が視覚認知障害と関係することをそれ
キーワード closing-in現象,アルツハイマー病(AD),attraction hypothesis,原始反射
 
論文名 東京都大森医師会認知症簡易スクリーニング法(TOP-Q)の作成
著者名 工藤千秋・鈴木 央・渡辺 象・北條 稔・荒井俊秀・金子則彦・山口晴保
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(6):0683-0689,2014
抄録 被検者への心理的負担が軽く,2〜3分間の自然な会話と簡単な動作で認知症を評価する東京都大森医師会認知症簡易スクリーニング法(TOP-Q)の作成を試みた.内容は,@時事的話題に関連する年数の計算,誕生日の質問,Aハンド・バレー徴候,回内・回外運動と山口キツネ・ハト模倣テスト,B振り向き徴候の有無の3項目で構成される.健常者〜認知症患者414人を対象にTOP-Qを試用したところ,1つ以上の失敗項目がある場合には,軽度認知障害(MCI)や認知症が疑われることが判明した.TOP-Qは,かかりつけ医や介護職でも実施
キーワード 認知症,簡易スクリーニング,かかりつけ医,TOP-Q