2013 Vol.25 No.3
 
 
第25巻第3号(通巻313号)
2014年3月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
 
巻 頭 言
二而不二
上村直人
特集: 高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルス
ソーシャル・キャピタル ― 認知症の人のコミュニティ・メンタル・ヘルス
松下正明
認知症疾患医療センターの立場から
繁信和恵
地域包括支援センター・在宅介護支援センターの立場
青木佳之
高齢者のメンタルヘルスを保つ ― 自助,互助,公助を統合する保健師の役割の重要性
中板育美
作業療法士の立場 ― 認知症カフェと生活行為向上マネジメントの研究を通して
中村春基・苅山和生
介護支援専門員の立場から ― メンタルヘルス面の課題をもった高齢者・家族を支援する護支援専門員の課題
福富昌城
高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスと精神保健福祉士
松本すみ子
原著論文
コンピュータ化記憶機能検査 (STM-COMET) 改訂版における認知症スクリーニングの可能性について (第一報)
田所正典ほか
認知症治療病棟に関するアンケート調査 ─ 入院期間短縮に向けた要因の検討
尾嵜遠見・前田 潔
認知症患者における認知機能,ADL,BPSDの関連性 ─ 重度認知症患者に着目して
田中寛之ほか
調査報告
胃瘻設置についての意向 ─ 特別養護老人ホームにおける悉皆調査
大井 玄ほか
書  評
「より添って;認知症の人々と共に」
加藤伸司
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編集後記

 
 
論文名 ソーシャル・キャピタル
著者名 松下正明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0239-0247,2014
抄録 最近の高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスの理念として,stigmaとrecoveryが挙げられているが,それに加えて,ソーシャル・キャピタル(social capital)という理念が必要である.とくに認知症の人を対象とした場合,その治療や介護・ケアは住み慣れた在宅で行うことが原則とされていることから,ソーシャル・キャピタル理念が必須となる.ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)は,地域社会における個人や集団がソーシャル・ネットワークを通して入手できる,信頼,社会的信用,規範,制裁,互酬性,援助といっ
キーワード ソーシャル・キャピタル,ソーシャル・ネットワーク,高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルス,認知症,住み慣れた環境
 
論文名 認知症疾患医療センターの立場から
著者名 繁信和恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0248-0258,2014
抄録 近年,認知症の発症予防,早期発見,早期治療が盛んにいわれている.しかしそれらの実現のためには,地域住民への啓発・啓蒙,および医療だけでなく,介護,福祉領域の各機関との連携が非常に重要である.認知症はわれわれが最もかかりたくない病気のひとつである.そのため早期に診断された患者の心理的サポートや,進行する認知症患者を長期に介護する家族のメンタル・ヘルスを保つことは,非常に重要である.それらをサポートするために「顔の見える連携」は理想ではあるが,大都市では認知症の専門医療機関は複数あり,それらの連携医療機関,介
キーワード 認知症,地域連携,認知症疾患医療センター,メンタル・ヘルス
 
論文名 地域包括支援センター・在宅介護支援センターの立場
著者名 青木佳之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0259-0272,2014
抄録 地域包括支援センター・在宅介護支援センターは介護保険制度下で,地域包括ケアシステムの中核拠点機関である.すなわちそれは,地域ケアマネジメント機能と地域の介護サービスのネットワーク機能である.高齢者,とくに認知症における狭義のコミュニティ・メンタル・ヘルスにおいても,また広義のコミュニティ・メンタル・ヘルスにおいても,同様の機能の普遍化が必要である.医療と介護の連携は地域ケア会議のなかで多職種の協働作業によりなしうる.高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスを機能させるためには,コミュニティ・メンタル・ヘルス
キーワード 地域包括支援センター・在宅介護支援センター,地域包括ケア,地域ケアマネジメント,認知症,プライマリ・ヘルス・ケア,コミュニティ・メンタル・ヘルス
 
論文名 高齢者のメンタルヘルスを保つ
著者名 中板育美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0273-0279,2014
抄録 高齢期を無病で乗り切ることは,困難で酷な要求である.心身にまたがる複数の病をもちながら,自分らしさを失うことなく生活する力を養うことと,自助,互助,共助そして時に公助,要するに地域の「皆」で支え合える社会環境を築くことが要請されている.保健師は,年齢や疾患,障害で区切らずに「地域で生きていく」1人ひとりの生活(いのち)の質を支える仕組みを,医学的知識と看護の目で築き上げる役割を担っている.
キーワード 少子超高齢社会,老化関連疾患,QOL,QOD,自助・互助・共助・公助
 
論文名 作業療法士の立場
著者名 中村春基,苅山和生
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0280-0287,2014
抄録 兵庫県K市における高齢者,要介護者の調査結果より,高齢者の生活状況を概観し,都市部の高齢者のコミュニケーション・メンタル・ヘルスの背景と地域づくりについて言及した.また,主に医療,介護の施設利用者の生活ニーズに沿った支援について,日本作業療法士協会により開発された,「生活行為向上マネジメント」による包括的支援の効果について述べた.加えて,認知症への対応として認知症カフェの取組みを紹介した.最後に,「だれもが地域で豊かに生活できる」ための拠点として,「アクティビティーセンター」の創設について提案した.
キーワード 作業療法,生活行為向上マネジメント,地域づくり,認知症カフェ
 
論文名 介護支援専門員の立場から
著者名 福富昌城
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0288-0293,2014
抄録 メンタルヘルス面の課題を抱えた高齢者・家族とかかわる際,介護支援専門員は支援において困難を感じることが多い.それは介護支援専門員がそうした利用者を理解する知識や技術を十分にもっていないことが一因である.この解決のために,メンタルヘルス専門職との連携,メンタルヘルス面の課題を抱えた高齢者・家族の支援スキルの蓄積,メンタルヘルス専門職からコンサルテーションが受けられる体制構築が必要と考える.
キーワード 介護支援専門員,メンタルヘルス,支援困難,バーンアウト,連携・協働
 
論文名 高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスと精神保健福祉士
著者名 松本すみ子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0294-0299,2014
抄録 今日,精神保健福祉士が高齢者の直面する課題に寄り添った実践を展開する必要性が高まっている.高齢者が認知症などの精神疾患を抱えながらも,地域で安全に暮らすための環境整備を推進することも求められており,精神保健福祉士が高齢者とコミュニティ・メンタル・ヘルスへの理解を深めることは不可欠である.本稿では,精神保健福祉士が高齢者のコミュニティ・メンタル・ヘルスにどのように貢献できるのか,支障となっているものはなにかについて述べ,ソーシャル・インクルージョンの実現に向けての課題を提示した.
キーワード 認知症,精神保健福祉士,専門職養成教育,交流体験,ソーシャル・インクルージョン
 
論文名 コンピュータ化記憶機能検査(STM-COMET)改訂版における認知症スクリーニングの可能性について(第一報)
著者名 田所正典・塚原さち子・小島綾子・鈴木 慈・南 麻依・岩藤元央・佐々木央我・板谷光希子・野口美和・橋本知明・山口 登
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0301-0306,2014
抄録 聖マリアンナ医科大学式コンピュータ化記憶機能検査(STM-COMET)の改訂版作成を試みた.その第一報として認知症の鑑別の可能性について健常群,軽度認知障害(MCI)群,初期AD群を設定し,検査結果の量的側面,質的側面から検討した.量的分析では初期AD群は設定されたすべての課題で健常群と比べて統計学的に有意な差が認められ,初期ADのスクリーニング検査としての有用性が示唆されたが,MCI群と健常群は数量的には近接値となり,差を見いだすことはできなかった.質的分析ではIVRの虚再生の有無は,MCI群と健常群の
キーワード アルツハイマー型認知症,コンピュータ化記憶機能検査,記憶障害,軽度認知障害
 
論文名 認知症治療病棟に関するアンケート調査
著者名 尾嵜遠見・前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0307-0315,2014
抄録 【目的】精神科病院認知症治療病棟における医療実態を把握し,入院期間の短縮に関連する要因について検討した.【方法】認知症治療病棟を有する全国405病院に調査票を郵送し、郵送にて回収した.【結果】105病院から回答があった(回収率25.9%).平均在院日数は722日であり,1年以上入院している患者の割合は59.2%であった.長期に入院している患者のうち4割は精神症状や行動異常(BPSD)のために退院が困難であった.また介護施設の入所待ちや家族の受け入れ拒否のために退院できない患者も4割を占めた.平均在院日数が
キーワード 認知症治療病棟,精神科病院,在院日数,BPSD,地域連携
 
論文名 認知症患者における認知機能,ADL,BPSDの関連性
著者名 田中寛之・植松正保・小城遼太・永田優馬・福原啓太・内藤泰男・大西久男・西川 隆
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0316-0323,2014
抄録 認知症患者の認知機能,activities of daily living(ADL),behavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD)の関連性を明らかにするため,94人の入院患者を対象に認知機能をMini-Mental State Examination(MMSE)と改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),ADLをHyogo Activity of Daily Living Scale(HADLS),BPSDをNeuropsychiat
キーワード 認知機能,ADL,BPSD,重度認知症
 
論文名 胃瘻設置についての意向
著者名 大井 玄・前田純子・新里和弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(3):0324-0328,2014
抄録 文京区の一特別養護老人ホーム入所者全員に,胃瘻設置について意向を聞いた.95人中,意思疎通不能な30人を除く65人(男性9人,女性56人,平均年齢85.7±11.4歳)のうち56人(86.2%)が「いや」と答え,「わからない」が6人(9.2%),「はい」が3人(4.6%)であった.これは認知症高齢者についての前報の知見および非認知症高齢者の回答傾向と一致する.次いで「いや」と答えた者の23人に「それしか栄養をとる方法がないとすれば?」と負荷質問を行った場合,再度「いや」が18人(78.3%),「わからない
キーワード 胃瘻設置,特養入所者,認知症高齢者,意向の経時的変化,概念思考の可能性