2013 Vol.25 No.2
 
 
第25巻第2号(通巻311号)
2014年2月20日 発行
 
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老年精神医学雑誌電子版
 
巻 頭 言
G8認知症サミット
渕野勝弘
特集: 認知症の終末期医療
認知症患者のend-of-life care
清水哲郎
がんと認知症の終末期医療
飯島 節
看取りに向き合える人材育成を目指して
西村美智代
グループホームにおける看取りケアの実態
橋恵子
特別養護老人ホームにおける看取りの実態
鴻江圭子・八坂妙子
訪問医療における看取りの実態
山口 潔・辻彼南雄
意思決定プロセスと法的整備
小賀野晶一
原著論文
要介護高齢者における,抑うつと痛みの心理的要素との関連
谷川大地ほか
調査報告
一般病院での認知症身体合併症治療はどこまで可能なのか ─ 国立長寿医療研究センター認知症病棟での経験
服部英幸ほか
短  報
オランザピンによるアカシジアと希死念慮を伴った高齢者双極性障害の1症例
石川博康ほか
特別寄稿
「痴呆」から「認知症」へ ─ stigmaと用語変更
松下正明
学会NEWS
平成25年度日本老年精神医学会指導医および認定施設決定
第29回日本老年精神医学会開催のご案内
学会入会案内
投稿規定
バックナンバーのご案内
編集後記

 
 
論文名 認知症患者のend-of-life care
著者名 清水哲郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0127-0134,2014
抄録 認知症患者に対する人生の最終段階におけるケアについて,基本用語の意味を明確にしたうえで,意思決定プロセスについて,本人の意思確認ができる時とできない時に分けて指針を示す厚生労働省のガイドライン(2007)と日本老年医学会ガイドライン(2012)が,軌を一にしていることを示した.加えて,本人の意思と人生にとっての最善の双方を根拠とし,人生の延長と快適な生活の双方を目的とするか,快適な生活のみを目的とするかをまず選択することを提案した.
キーワード 認知症,end-of-life care,意思決定プロセス,意思確認,ケアの目的と手段
 
論文名 がんと認知症の終末期医療
著者名 飯島 節
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0135-0143,2014
抄録 がん(悪性新生物)は「死に至る病」として恐れられてきたが,近年は治療法の進歩が著しく,早期に診断されれば完治も期待できるようになった.また,緩和ケア病棟をはじめがん患者の終末期医療の体制は整いつつある.一方,認知症はいまだ原因治療の方法がなく,終末期医療のあり方も定まっていない.今後は,認知症が「死に至る病」であるという認識に立って,十分な緩和医療が受けられる体制を整備する必要がある.
キーワード 認知症,がん,終末期医療,緩和医療,terminal illness
 
論文名 看取りに向き合える人材育成を目指して
著者名 西村美智代
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0144-0152,2014
抄録 マニュアルどおりのケアは,要介護者と介護者が対等ではなく,当事者にとっては一方的なものとなる.ケアにおいてマニュアルという概念を当てはめることは適切ではない.なぜなら,ケアする側がマニュアルに沿うことによって拮抗した関係が0か100かという非対称なものになるおそれがあるからである.つまり,ケアの現場では介護者と被介護者は対等の関係であることが大切であり,介護する側,医療を施す側からの一方的なルールづくりでケアを定義づけることは“押し付け”である.
キーワード 理念・倫理,年寄りだから,自己決定,コミュニケーション,認知症の終末期とは
 
論文名 グループホームにおける看取りケアの実態
著者名 橋恵子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0153-0158,2014
抄録 多死時代と呼ばれる今,地域密着型サービスであるグループホーム(認知症対応型共同生活介護)において,看護師が医療連携のキーマンとなり主治医と連携することで,グループホームの終末期ケアを行う機会が増えた.グループホームでは,日常生活の先に看取りがある.ケアの対象者は,あくまでも地域生活者であり,その看取り期の支援には,家族,介護職,看護師や医師を含めたチームケアの視点が重要である.
キーワード グループホーム,看取り,地域と文化,多職種連携,ライフサポートケア
 
論文名 特別養護老人ホームにおける看取りの実態
著者名 鴻江圭子,八坂妙子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0159-0165,2014
抄録 特別養護老人ホームにおいては,利用者の約9割が認知症で,重度化が進み,日々の生活支援の延長線上に看取りがある.医療との連携はもとより,生活環境の工夫,家族との連携や死生観の共有を行ったり多職種協働によるチームケアに最大限に取り組みながら,利用者の内面に潜む思いに寄り添い,尊厳ある看取りを実践している.さらには利用者の死後には家族に対するグリーフケア等を実施し,家族の施設看取りに対する共感を得ることによって,現在では死亡者の約7〜8割を施設内で看取っている.
キーワード 認知症,医療との連携,生活環境の工夫,多職種協働,死生観の共有,尊厳
 
論文名 訪問医療における看取りの実態
著者名 山口 潔,辻彼南雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0166-0169,2014
抄録 在宅医療や在宅療養支援診療所の進歩により,自宅や介護施設で最期を迎える認知症患者は増加傾向にある.認知症患者の2/3は,認知障害が高度となり,歩行障害や嚥下障害が出現し,肺炎,老衰により死に至る一方で,1/3は悪性腫瘍,心疾患,脳血管障害などの身体合併症で死に至る.予測できない死は1割程度に認める.生活の場での看取りでは,皮下輸液の検討,介護者への対処法の教育が効果的である.
キーワード 在宅医療,在宅療養支援診療所,老衰,皮下点滴,予後の予測
 
論文名 意思決定プロセスと法的整備
著者名 小賀野晶一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0170-0175,2014
抄録 医療行為は医師と患者の協働関係のもとに進められることが望まれる.インフォームド・コンセントは,@医師が医療行為の方針を決定し,Aこれを患者に説明する,B患者が医師の説明を理解し,C対話を重ね,D納得する,というプロセスが重要である.これは医師から患者への一方通行のプロセスではなく,患者・家族から医師への問いかけもあり医師が当初の方針を修正することもありうる.これがインフォームド・コンセントにおける創造的プロセスである.同意能力が低下した患者の意思決定を支えるために,かかる協働関係のもとに第三者の関与が認め
キーワード 意思決定プロセス,インフォームド・コンセントと医療同意,身上監護,代行決定
 
論文名 要介護高齢者における,抑うつと痛みの心理的要素との関連
著者名 谷川大地,三栖翔吾,澤 龍一,中窪 翔,堤本広大,土井剛彦,小野 玲
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0177-0184,2014
抄録 週に1回以上デイサービス施設を利用している地域在住の要介護高齢者65人(男性18人,平均年齢84.0±6.8歳)を対象に,痛みの有無,およびその痛みの程度や痛みの心理的要素が抑うつと関連しているのかどうかを検討した.痛みのある群は36人,痛みのない群は29人であり,抑うつの度合いを評価するGDSは痛みのある群のほうが有意に高かった(平均得点6.3±3.2 vs. 4.1±3.6,p=0.01).また痛みのある群においてGDSを従属変数,痛みの程度および痛みに対する破局化思考,痛みに対する自己効力感を評価す
キーワード 要介護高齢者,抑うつ,痛み
 
論文名 一般病院での認知症身体合併症治療はどこまで可能なのか
著者名 服部英幸,鷲見幸彦,櫻井 孝,遠藤英俊,鳥羽研二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0185-0192,2014
抄録 入院治療が必要な認知症身体合併症を,一般病院で受け入れられないことが多い.国立長寿医療研究センターでは一般病棟としての認知症身体合併症治療病棟を開棟している.その経験について報告する.入院中の主科は身体治療科であり,認知症専門医(老年科,神経内科,精神科の医師)が副科としてかかわる.肺炎などの身体治療のほか,身体疾患治療中にBPSDが悪化した症例の入院治療を行った.認知症原因疾患別ではアルツハイマー型認知症,レビー小体型認知症が多かった.精神科病院への転院は全体の4%であった.BPSDの状態と重症度をコー
キーワード BPSD,身体合併症,入院治療,一般病院
 
論文名 オランザピンによるアカシジアと希死念慮を伴った高齢者双極性障害の1症例
著者名 石川博康,長幡 樹,石川勇仁,沓澤 理
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0193-0197,2014
抄録 気分障害における薬剤性の自殺関連事象の問題は,抗うつ薬による賦活症候群として広く知られている.アカシジアは賦活症候群において自殺関連事象を生じる主要な病態のひとつで,抗うつ薬よりもむしろ非定型抗精神病薬(AAP)において高頻度にみられる副作用であることから,AAPについても賦活症候群と同様の問題が想定される.双極性障害を中心に気分障害に対するAAPの使用が広がりつつあるが,自殺傾向を伴うアカシジアの報告はわずかしかない.われわれは72歳女性の双極性障害U型の症例において,うつ病相の再発時にオランザピン(o
キーワード アカシジア,オランザピン,双極性障害,賦活症候群,自殺傾向
 
論文名 「痴呆」から「認知症」へ
著者名 松下正明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,25(2):0199-0209,2014
抄録 平成16(2004)年6月に設置された「「痴呆」に替わる用語に関する検討会」の最終報告書に基づき,同年12月,日本では,「痴呆」という行政用語が「認知症」に変更になった.その間の経緯を,検討会における審議記録,配布された資料等を用いて,ありのままに記録することが本稿の目的である.変更の理由としては,「痴呆」という用語のもつ偏見,侮蔑,差別,誤解,尊厳の欠如等が指摘され,替わる用語としては,一般の人にわかりやすいこと,不快感や侮蔑感を感じさせないこと,「痴呆」と同一の概念であることの要件が示された.関係団体
キーワード 痴呆,認知症,用語変更,偏見・差別,行政用語と専門用語