論文名 | 介護サービスにおける認知症高齢者の権利擁護をめぐるジレンマ -ソーシャルワーク実践との接点からの考察- |
著者名 | 鵜浦直子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):545-552,2013 |
抄録 | 認知症高齢者の日常生活と密接にかかわる介護サービスでは,本人の心身のケアのみならず,本人の権利擁護をめぐっても多くの課題と向かうことになる.その際,権利擁護をめぐるジレンマも避けられないテーマである.本稿では,ソーシャルワーク実践との接点から,介護サービスにおける認知症高齢者の権利擁護をめぐるジレンマが生じる要因とそのアプローチについて論考した. |
キーワード | 介護サービス,認知症高齢者,権利擁護,ジレンマ,ソーシャルワーク |
論文名 | 介護サービスと訴訟リスク |
著者名 | 横田 一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):553-559,2013 |
抄録 | 介護サービスは,もろく傷つきやすい高齢者の状況に似て,リスキーといわれる.ケアの事故は増え,しばしば訴訟へ発展する.しかし,言い分がぶつかり合う訴訟をリスクとするなら,許し合いのプロセスのなかでリスクは消える.それには親身なケア,利用者に対するインフォームド・コンセント,率直にミスを認めるトップの虚心坦懐さ,そして,事故など望まないであろう介護者が期待するケアを実現できる仕組みが不可欠である. |
キーワード | 介護訴訟,ケアの質,インフォームド・コンセント,自由と安全,不可抗力 |
論文名 | 医療サービスにおける認知症の本人にかかわる人権とジレンマ |
著者名 | 水野 裕 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):560-567,2013 |
抄録 | 認知症の本人が医療にかかわるときは,家族等他者のかかわりによることが多い.しかし,時には介護者が望まないのにもかかわらず入院・入所へと進む場合もある.本稿では,・虐待からの保護のための入院,・介護破綻が予想される場合の救済としての入院,・社会的理由による入院,・自分自身の健康・財産管理ができない場合の入院という実例を挙げ,検討を試みた.人権は認知症の本人や家族だけのものではなく,認知症者にかかわる多職種の人であっても個人としてのニーズや人権はあり,故意ではなくても自分の思う権利擁護がだれかの権利の制限となっている可能性を常に意識すべきである. |
キーワード | 医療サービス,認知症,介護家族,人権擁護,人権の相反 |
論文名 | 認知機能が不十分な高齢者の医療と訴訟リスク |
著者名 | 長野展久 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):568-575,2013 |
抄録 | 認知機能が不十分な高齢者が病院内で転倒・転落事故を起こすと,施設側の管理責任をめぐって紛争に至ることがある.高齢者の転倒・転落には加齢や疾病による不可避的な側面があるものの,今回取り上げた裁判例のように,事故を契機として死亡すれば不可抗力という考え方になかなか理解は得にくい.こうした医療事故・紛争を防止するためには,患者およびその家族への「事前説明」と「現状認識」がきわめて重要である. |
キーワード | 認知症,夜間せん妄,転倒・転落,医療事故,損害賠償 |
論文名 | 認知症患者の人権と介護家族のケア |
著者名 | 新里和弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):576-582,2013 |
抄録 | 在宅での介護を受ける者とその介護家族との関係について,「権利」をテーマとして,医療の側からみた考察を行った.介護の場における葛藤を単に権利対権利の対立で考えることはむずかしく,家族のあり方,家族の歴史といったものに配慮すること,特別な事例を除いては,それを超えてまでの介入は困難であることを示した.また,家族会のもつ役割の重要性に関しても考察を行った. |
キーワード | 認知症,権利,介護家族,家族の歴史 |
論文名 | 若年性認知症患者の就労支援と同僚のストレスケア |
著者名 | 斎藤正彦・宮本典子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):583-589,2013 |
抄録 | 就労中に若年性認知症を発症した職員と同じ職場にいるために強いストレスを受け,組織内のカウンセリングを受診した2人の事例を分析して,若年性認知症患者の就労継続に必要な配慮について考察した.第1に早期に正確な診断を得て,関係者が共通の認識をもつこと,第2に産業医の機能を活用すること,第3に組織と家族との連携を図ること,第4に対応を現場任せにせず,組織として対応することの重要性を指摘した. |
キーワード | 若年性認知症,就労,企業,産業医,ストレス |
論文名 | 高齢者急性期精神病にオランザピンが有用であった2 症例 -身体合併症のリスク低下と維持期を見据えた薬物療法- |
著者名 | 森川文淑・飯田愛弓・直江寿一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(6):591-597,2013 |
抄録 | 高齢者では,抗精神病薬による過鎮静や錐体外路症状とそれらにより引き起こされる二次的な障害や弊害が懸念され,早急な症状改善を必要とする状況においても十分量の抗精神病薬投与ができず,治療に苦慮する場合がある.今回,高齢で治療に苦慮した急性期精神病に修正型電気けいれん療法(m-ECT)とオランザピン口腔内崩壊錠を使用し良好な経過を得た2症例を経験した.高齢者であっても十分な身体精査のもと,期間と回数を限ってm-ECTを実施することで,速やかに緊張状態を脱し,その後の薬物療法導入がスムーズとなり得る.そのうえで抗精神病作用に優れ,錐体外路症状のリスクの少ない抗精神病薬を選択することにより長期的に安定した経過が得られる可能性がある. |
キーワード | 高齢者,急性期精神病,薬物療法,オランザピン,m-ECT |