2013 Vol.24 No.5
 
 
第24巻第5号(通巻301号)
2013年5月20日 発行
 
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巻 頭 言
一般市民を対象とした遺伝子検査
米田 博
特集:老年精神医学領域におけるエビデンスを再考する
EBM概念によりもたらされた変化
鳥井勝義,佐藤順子,仲秋秀太郎
T.エビデンスに基づく薬物治療
抗認知症薬のエビデンス
柴田展人,新井平伊
向精神薬のエビデンス
角 徳文,繁田雅弘
漢方薬治療のエビデンス
久永明人,水上勝義
U.エビデンスに基づく非薬物療法
電気けいれん療法のエビデンス─ 施行方法が効果と安全性を決める
上田 諭
認知行動療法のエビデンス
川口彰子,渡辺範雄
認知トレーニングのエビデンス
松田 修
原著論文
認知症高齢者における通所介護(デイサービス)利用の有無が認知機能へ及ぼす影響-もの忘れ外来通院患者を対象とした縦断的検討
長沼 亨,鈴木宏幸,安永正史,竹内瑠美,扇澤史子,古田 光,藤原佳典
基礎講座
老年精神医学とBrain Imaging Dアミロイドイメージングの基礎
石井賢二
学会NEWS
IPA2013 International Psychogeriatric Association 16th International Congress 開催のご案内  
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投稿規定
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編集後記
 
論文名 EBM概念によりもたらされた変化
著者名 鳥井勝義,佐藤順子,仲秋秀太郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):441-448,2013
抄録 エビデンスに基づいた医療は,老年精神医学分野における医療の意識改革をもたらし,臨床家が診断と治療などに関して,「慎重」になった.その結果,治療や予後における老年精神医学の最近のエビデンスは,現実の臨床においていくつかのジレンマをももたらした.本稿では,認知症における精神症状への介入および高齢者うつ病と認知症のうつ状態への介入に関して臨床家が直面するジレンマに言及し,老年精神医学をめぐるエビデンス精神医療の問題点に言及した.
キーワード エビデンス,認知症,精神症状,介入方法,メタアナリシス,高齢者うつ病
 
論文名 抗認知症薬のエビデンス
著者名柴田展人,新井平伊
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):449-456,2013
抄録 認知症治療ではさまざまな病態・背景をもつ1人ひとりの症例に対して絶対的なEBMはない.本稿では,最初に認知症治療のエビデンスを判断する際に,とくに注意すべき点を挙げた.各薬剤の臨床的なプロフィールを,MCIへの導入,中核症状への効果,忍容性の問題,BPSDとの関連に分けて概説した. 現状のエビデンスでは,母集団の均一性,診断基準,評価スケールなどの問題があると思われた.また各薬剤で今後のエビデンスの集積が期待される領域について紹介した.
キーワード アルツハイマー病,コリンエステラーゼ阻害薬,メマンチン,軽度認知機能障害,中核症状,周辺症状,忍容性
 
論文名 向精神薬のエビデンス
著者名角 徳文,繁田雅弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):457-463,2013
抄録 老年精神医学領域においても向精神薬は広く用いられているが,若年成人に比較して高齢者を対象とした向精神薬治療の無作為化比較対照試験(RCT)を用いた研究の数は限られる.そのなかではうつ病,認知症の行動・心理学的症候(BPSD)に関する文献が比較的多いのかもしれない. しかし,これらの疾患も含めてエビデンスが十分とはいえず,個別の症例ごとに臨床的判断で薬物治療を行う必要があるのが現状である.
キーワード抗精神病薬,抗うつ薬,ベンゾジアゼピン系薬物,睡眠薬
 
論文名 漢方薬治療のエビデンス
著者名 久永明人,水上勝義
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):464-470,2013
抄録 近年,漢方医学の領域においても,方剤の臨床効果や安全性にかかわるエビデンスの構築が求められるようになってきている.老年精神医学領域における漢方薬のエビデンスとしては,認知症以外の領域では未開拓であるが,認知症の領域では,とくに行動・心理症状(BPSD)に対する抑肝散のエビデンスが示され,すでに臨床現場に浸透し,広く応用されている. 本稿では,抑肝散をはじめ,釣藤散,八味丸,当帰芍薬散に関するエビデンスを紹介した.
キーワード漢方薬,エビデンス,認知症,抑肝散,釣藤散,八味丸,当帰芍薬散
 
論文名 電気けいれん療法のエビデンス─ 施行方法が効果と安全性を決める
著者名 上田 諭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):471-478,2013
抄録 高齢者に対する電気けいれん療法(ECT)の効果と安全性を示すエビデンスは多い.一方,国内でいまだ注目に乏しいのは,施行方法に関するエビデンスである.世界標準である麻酔下のパルス波ECTでは,施行方法によって効果と安全性が大きく影響を受けるが,国内にはその意識が十分に浸透してない.パルス波ECTにおいて有効な「方法」として不可欠なのは,@脳波による発作の有効性判定,A適切な刺激用量設定,B発作抑制因子(麻酔薬,併用薬)への配慮,である. 発作の有効性は発作持続時間では判定できない.判定に重要なのは,規則的な対称性高振幅棘徐波と十分な発作時抑制,それに伴う交感神経系の興奮である.不適切な発作の場合は,次回に刺激用量を上げる必要がある.その際,臨床効果を得るには,両側性電極配置の場合,発作閾値の1.5?2.5倍すなわち「治療閾値」を超える刺激用量が必要であるため,1.5倍の上げ幅が合理的である.また,片側性電極配置が認知面の副作用を減少させることを支持する知見は多い.パルス幅が非常に短い超短パルス波での刺激も,片側性配置と組み合わせることで抗うつ効果を落とさず認知機能への影響を少なくできる可能性がある.
キーワードelectroconvulsive therapy,seizure adequacy,ictal electroencephalographic monitoring,stimulus dosing,therapeutic threshold
 
論文名 認知行動療法のエビデンス
著者名川口彰子,渡辺範雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):479-485,2013
抄録 認知行動療法(CBT)はAaron T. Beckが考案した精神療法で,幅広い精神疾患に対するエビデンスが蓄積され汎用されている.高齢者の場合には薬物療法が身体疾患の合併,副作用などのために困難となることも多く,精神療法の重要性が高い.本稿では,老年期のうつ病,不安障害,慢性疼痛,不眠症に対する認知行動療法のエビデンスについて最新のメタ解析を中心に紹介する.
キーワード認知行動療法,うつ病,不安障害,慢性疼痛,不眠症
 
論文名 認知トレーニングのエビデンス
著者名松田 修
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):486-491,2013
抄録 本稿では,認知トレーニングに関する最近のエビデンスの再考を試みた.その結果,内的妥当性を高めた準実験や,厳密な条件統制が行われた無作為化比較実験(RCT)により,特定の認知トレーニングには認知症,MCI,および健常高齢者の認知機能の維持・向上に一定の効果があること,多施設参加型のRCTが数多く行われているイギリスでは,在宅ベースの認知トレーニングの効果を検証するRCTが進行中であること,さらに最近では,BPSD治療に対する認知トレーニングの効果を検証したRCTのエビデンスが報告されていた.
キーワード認知トレーニング,リアリティ・オリエンテーション,学習療法,認知刺激療法
 
論文名 もの忘れ外来通院患者を対象とした縦断的検討
著者名 長沼 亨,鈴木宏幸,安永正史,竹内瑠美,扇澤史子,古田 光,藤原佳典
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,24(5):493-501,2013
抄録 本研究の目的は,デイサービス(以下,DS)の利用が認知症高齢患者の認知機能維持・低下抑制へ及ぼす影響について明らかにすることである.対象は当センターもの忘れ外来に通院し,同一主治医により2年間の継続観察が可能であった認知症患者35人(DS利用群21人,非利用群14人;内訳は,アルツハイマー型認知症22人,脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症5人,血管性認知症8人)である.利用群においては,日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)の得点が2年間維持されたが,非利用群は後半の1年間で有意に低下した.MoCA-Jの下位項目で同様に検討すると,見当識領域において非利用群は,後半の1年間で有意な得点低下を認めた.DSの利用にはプログラムに見当識を維持しうるような定期的・継続的な要因が包含されるとともに,閉じこもり予防が間接的に認知機能維持へ好影響を与えることも示唆された.
キーワードデイサービス,認知症ケア,日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J),縦断研究