論文名 | 電気けいれん療法のエビデンス─ 施行方法が効果と安全性を決める |
著者名 | 上田 諭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,24(5):471-478,2013 |
抄録 |
高齢者に対する電気けいれん療法(ECT)の効果と安全性を示すエビデンスは多い.一方,国内でいまだ注目に乏しいのは,施行方法に関するエビデンスである.世界標準である麻酔下のパルス波ECTでは,施行方法によって効果と安全性が大きく影響を受けるが,国内にはその意識が十分に浸透してない.パルス波ECTにおいて有効な「方法」として不可欠なのは,@脳波による発作の有効性判定,A適切な刺激用量設定,B発作抑制因子(麻酔薬,併用薬)への配慮,である.
発作の有効性は発作持続時間では判定できない.判定に重要なのは,規則的な対称性高振幅棘徐波と十分な発作時抑制,それに伴う交感神経系の興奮である.不適切な発作の場合は,次回に刺激用量を上げる必要がある.その際,臨床効果を得るには,両側性電極配置の場合,発作閾値の1.5?2.5倍すなわち「治療閾値」を超える刺激用量が必要であるため,1.5倍の上げ幅が合理的である.また,片側性電極配置が認知面の副作用を減少させることを支持する知見は多い.パルス幅が非常に短い超短パルス波での刺激も,片側性配置と組み合わせることで抗うつ効果を落とさず認知機能への影響を少なくできる可能性がある. |
キーワード | electroconvulsive therapy,seizure adequacy,ictal electroencephalographic monitoring,stimulus dosing,therapeutic threshold |