論文名 | アルツハイマー病患者の構成障害 -立方体透視図と平面図形の模写課題における教育年数の影響と天井効果,床効果についての検討- |
著者名 | 渡部宏幸,佐藤卓也,佐藤 厚,今村 徹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,24(2):179-188,2013 |
抄録 | 【目的】アルツハイマー病(AD)症例に施行した立方体透視図模写課題および平面図形模写課題における教育年数の影響と天井効果,床効果について検討する.【対象】新潟リハビリテーション病院神経内科を初診し,ADと診断された症例で,数唱,MMSE,ADASを施行した320症例.平均教育年数8.5±2.5年,平均年齢79.9±6.5歳,平均MMSE得点18.7±4.3点,平均ADAS減点19.5±8.6点.【方法】対象全体で立方体透視図および平面図形模写課題の正誤と他の要因との関係をロジスティック単回帰分析で検討した.また対象を教育年数で4つの群に分け,さらに各群をMMSE得点の下位群と上位群に分け,各群における両課題の天井効果,床効果について検討した.さらに各群で両課題の正誤と他の要因との関係をロジスティック単回帰分析で検討した.【結果】対象全体の結果では,模写課題の正誤に教育年数と認知機能障害の全般重症度が影響していた.群別の検討では,教育年数7年未満および7〜9年のMMSE下位群において立方体透視図模写が可能な症例が著しく少なく,構成障害の重症度に関して床効果が生じていると考えられた.教育年数10〜12年のMMSE上位群では平面図形模写が可能な症例が著しく多く,構成障害の有無に関して天井効果が生じていると考えられた.群別のロジスティック単回帰分析では一貫した結果を得ることができなかった.【考察】ADにおいては,教育年数が9年以下の低さで認知機能障害の全般重症度が重度な症例では,構成障害の重症度の評価には平面図形模写がより有用であり,教育年数が10年以上の高さで認知機能障害の全般重症度が軽度な症例では,構成障害の有無の検出には立方体透視図模写がより有用であると考えられる.初期評価などの臨床場面では,立方体透視図模写と平面図形模写課題を併用することによって,煩雑さをそれほど増すことなく,課題を単独で用いると一部の群で生じる天井効果や床効果を回避し,構成障害を評価するうえでの有用な結果が得られると考えられる. |
キーワード | アルツハイマー病,Necker cube,教育年数,天井効果,床効果 |