抄録 |
高齢者(65歳以上)の脳にみられる所見は,脳重を含めた外観の変化,正常加齢にみられる組織所見,神経変性疾患にみられる異常タンパクの蓄積,脳血管疾患,脳腫瘍,栄養障害,感染症などに分類される.一般に脳重は男性が女性より重く,65歳以降緩徐にその重さを減じる.よく知られた顆粒空胞変性,平野小体,Marinesco小体は正常加齢に伴いみられ,疾患特異性が低い.神経変性疾患に関連する異常タンパクの蓄積としては,アミロイドβタンパク,タウタンパク,α-シヌクレイン,TDP-43などがあり,臨床的な症候が出現する前段階の病変を認めることも高齢者では多い.脳血管疾患は脳梗塞,脳出血などが生じるが,時に無症候性であることも多い.脳腫瘍は,神経膠腫,星細胞系腫瘍,髄膜腫が多い.また,栄養障害に伴うビタミン欠乏などもまれではない.とくに100歳以上の超高齢者では,アルツハイマー病や重篤な脳血管疾患の症例は少ない.背景にある疾患を理解することは,高齢者の医療対応の面からも重要である.
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