2012 Vol.23 No.5
 
 
第23巻第5号(通巻287号)
2012年5月20日 発行
 

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巻 頭 言
本誌の創刊当時のこと
三好功峰
特集:精神科病床における認知症治療;入院期間短縮を目指して
認知症有病率と精神医療資源の今後
朝田 隆 535
認知症と精神科医療
中谷祐貴子 544
精神科病床における認知症治療の現状と課題 ─ 2025年への提言
渕野勝弘 558
既存の精神科病院をつなぐ地域ネットワーク,熊本方式の現状と課題
丸山貴志ほか 568
福祉施設ケアと精神科入院治療の現状と課題
小山 剛 572
訪問診療の立場からみた精神科入院医療の役割,現状と課題
木之下 徹 578
低所得者の認知症医療と施設介護の現状と課題
繁信和恵ほか 586
症例報告 
前頭側頭型認知症に伴う喉頭と舌のジストニアにクロナゼパムが有効であった1症例
江原 嵩ほか 593
調査報告 
かかりつけ医と介護支援専門員の地域連携に関する調査(介護支援専門員調査)
永島 徹・今井幸充 599
基礎講座 
老年精神医学と神経心理学・進行性失語症候群:進行性非流暢性失語と意味性認知症(進行性語義失語)
小森憲治郎 609
連  載 
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学・認知症の治療薬と予防薬
田上真次ほか 621
Column 私たちの仕事
第16回 弁護士
岡ゆかり 629
書  評 
「プライマリケア医の認知症診療入門セミナー」
中村 祐
学会NEWS
第27回日本老年精神医学会開催のご案内
一般社団法人日本老年精神医学会「第8回生涯教育講座」開催のお知らせ
学会入会案内
バックナンバーのご案内
編集後記
 
論文名 認知症有病率と精神医療資源の今後
著者名 朝田 隆  
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):535-543,2012
抄録 平成20(2008)年に推定された認知症有病率は12.4〜19.6%(平均14.4%)であった.今後は都市部における同様の調査を行って,本調査結果と比較検討することにより,全国レベルの有病率推定を行う必要がある.次に病院種別に認知症患者の特性に差異がみられた.寝たきり度,医療依存度ともに療養病床が最も高い.一方で,認知症医療における精神科の最大の特徴はBPSDにある.このように病院種別に機能分化がなされていると考えられる.
キーワード 認知症,有病率,介護保険,認知症医療,精神科病床
論文名 認知症と精神科医療
著者名 中谷祐貴子     
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):544-557,2012
抄録 今後の高齢化に伴い認知症の人が増加していくなかで,認知症に対する精神科医療の果たす役割を検討するため,「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム」(主担当:厚生労働大臣政務官)において,認知症と精神科医療について,平成22年9月〜平成23年10月まで検討を行った.本稿では,検討チームにおける議論と,そのとりまとめの概要から,認知症患者に対する精神科医療の役割に関する考え方について概説する.
キーワード 精神科医療,認知症
論文名 精神科病床における認知症治療の現状と課題 ─ 2025年への提言 ─
著者名 渕野勝弘      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):558-567,2012
抄録 公益社団法人日本精神科病院協会はわが国の精神科医療の将来ビジョンをとりまとめた.そのなかのひとつに「認知症と精神科医療」がある.精神科医療における認知症治療の現状と課題を明らかにし,2025年への具体的な施策について提言を行った.早期診断から終末期までの長い経過を介護・福祉と連携し,継続した精神科医療を行うことが重要である.精神科医療に求められている認知症治療について検討した.
キーワード 公益社団法人日本精神科病院協会はわが国の精神科医療の将来ビジョンをとりまとめた.そのなかのひとつに「認知症と精神科医療」がある.精神科医療における認知症治療の現状と課題を明らかにし,2025年への具体的な施策について提言を行った.早期診断から終末期までの長い経過を介護・福祉と連携し,継続した精神科医療を行うことが重要である.精神科医療に求められている認知症治療について検討した.
論文名 既存の精神科病院をつなぐ地域ネットワーク,熊本方式の現状と課題
著者名 丸山貴志,西田まゆみ,坂本眞一,池田 学      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):568-571,2012
抄録 熊本県認知症疾患医療センターにおける基幹型センターと地域拠点型センターの役割分担,センターの利用状況,入院患者の内訳や入院期間を中心に紹介し,精神科病床における入院期間短縮の課題について考察を加えた.地域拠点型センターの9か所はすべて民間の精神科病院に設置されている.主な役割は早期診断,治療計画の策定,BPSDに対する治療,合併症のマネジメント,地域の医療や介護との連携である.地域拠点型センターでは91日以上の入院が24%を占めたが,治療が長期化しているというよりはむしろ症状改善後の受け皿不足が原因であり,地域の受け皿を増やしたり精神科病院から家族や施設へのアウトリーチを実施するシステムを確立していくことが今後の課題である.
キーワード 認知症疾患医療センター,精神科病院,長期入院,BPSD,熊本モデル
論文名 福祉施設ケアと精神科入院治療の現状と課題
著者名 小山 剛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):572-577,2012
抄録 従来の認知症高齢者への対応は,福祉施設においても精神科病院においても認知症に対応しているのではなく,在宅生活の継続が困難になった介護者の代理として介護支援を行ったもので,在宅復帰に向けたリハビリテーションや治療は皆無であった.しかし認知症の人への支援においては,専門家の診断と,これに基づくチームによるかかわりが,「地域社会の生活の継続のなか」で行われなければならないし,入院治療や施設入所の期間があっても認知症の人を在宅生活に戻すことに基本をおかなければならない.
キーワード 早期の診断,チームによる支援,地域での生活が基本,24時間365日の支援,地域包括ケア
論文名 訪問診療の立場からみた精神科入院医療の役割,現状と課題
著者名 木之下 徹      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):578-585,2012
抄録 訪問診療の立場から,認知症を「自分ごと」と考えることを軸として論考した.精神科的な急変時の緊急対応の場としての技術的な連携の内容にも言及した.同時にそれ以外の場合に求められる生活の場としての機能についても加えて考察した.施策あるいは制度設計をするうえでも,今の地域の現状からみた必要性だけを論じるのと,自分にとって望ましいビジョンのもとで,今ある姿を一過程とみて論じるのとではその後の姿が異なる.
キーワード 訪問診療,精神科入院,パーソン・センタード・ケア,自分ごと,生活
論文名 低所得者の認知症医療と施設介護の現状と課題
著者名 繁信和恵,柏木一恵,比良美千代,山本めぐみ,駒野敬行,谷口典男     
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):586-591,2012
抄録 超高齢社会を迎え,精神科病床における認知症患者の入院期間の長期化や社会的入院が問題となっている.入院期間が長期化する理由のひとつに,認知症の精神症状の入院治療終了後,在宅への退院が困難な場合,経済的理由から入所施設の選択肢が狭まり,施設への速やかな移行が困難であることが考えられた.
キーワード 認知症,低所得者,ユニット型特別養護老人ホーム,経済的理由
論文名 前頭側頭型認知症に伴う喉頭と舌のジストニアにクロナゼパムが有効であった1症例 
著者名 江原 嵩,伊吹康良,河上靖登,富田常次,前田常成      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):593-598,2012
抄録 ピック病の末期状態においては,錐体外路症状をはじめとする種々の神経症候を呈する症例が知られている.前頭葉性失行による高度な無言・行動抑制・臥褥状態にある発症後8年を経過したピック病の80歳女性において,無動,筋固縮,眼瞼痙攣,頸部の後屈と捻転ジストニア,舌捻転ジストニア,喉頭ジストニア,痙攣性発声困難などがみられた.なかでも,喉頭ジストニアに伴う声帯の瞬間的な開放?閉鎖の反復運動と舌捻転ジストニアに伴う舌根沈下による閉塞性呼吸障害の改善は急務であったが,クロナゼパム投与により喉頭ジストニア,舌ジストニア,痙攣性発声困難,眼瞼痙攣の頻度と持続時間は顕著に減少した.
キーワード 前頭側頭型認知症,喉頭ジストニア,眼瞼痙攣,痙攣性発声困難,クロナゼパム
論文名 かかりつけ医と介護支援専門員の地域連携に関する調査(介護支援専門員調査)
著者名 永島 徹,今井幸充 
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(5):599‐607,2012
抄録 A県B市内の居宅介護支援事業所ならびに介護保険施設に勤務するすべての介護支援専門員148人を対象にかかりつけ医との連携に関する意識調査を行い,94人(回収率63.5%)から回答が得られた.結果は,利用者の医療情報をかかりつけ医から直接得ている者は13%で,他は家族からの間接的手段であった.また,ケアプラン作成時にかかりつけ医の意見を反映させている者は24.5%で,ケアプラン関連書類をかかりつけ医にほとんど渡していない者が86.1%であった.かかりつけ医との連携に満足している介護支援専門員は6%であったが,98%の介護支援専門員は連携の必要性を感じていた.
キーワード 地域医療,介護支援専門員,連携,認知症,意識調査