2012 Vol.23 No.3
 
 
第23巻第3号(通巻284号)
2012年3月20日 発行
 
 
巻 頭 言
認知症診療の今とこれから
長谷川和夫
特集:認知症の地域連携を推進するための方法論
Community-based integrated careの基本的な考え方 - 地域包括ケアシステムにおける認知症患者への支援
筒井孝子 271
認知症ケアにおける地域連携の政策的展望
武田章敬・堀部賢太郎 280
かかりつけ医制度の現状と課題
鷲見幸彦 287
認知症疾患医療センターの連携機能
小嶋誠志郎・池田 学 294
地域包括支援センターの機能;現状と課題 - 仙台市における認知症対策の取組みから
菊地和子・佐藤彰子・山口健太・福本 恵 299
地域連携のための認知症地域支援推進員の役割
大島憲子 305
認知症地域連携パス
杉山博通・数井裕光・繁信和恵・田伏 薫・武田雅俊 314
原著論文 
レビー小体を伴う認知症(dementia with Lewy bodies ; DLB)とアルツハイマー病における認知機能変動の検討
飛田靖人・永島敦子・佐藤卓也・佐藤 厚・今村 徹 325
運動器の機能向上プログラム実施後の要支援高齢者における心理的変化の分析 - マズローの基本的欲求を基盤とした調査より
望月秀樹・大嶋伸雄・繁田雅弘 334
基礎講座 
老年精神医学と神経心理学(3)
重複記憶錯誤とカプグラ症候群
狩野正之 347
連  載 
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学(17)
レビー小体型認知症の神経変性機序・分子生物学
野中 隆・新井哲明・水上勝義・長谷川成人 353
Column
私たちの仕事
第15回 認知症ケア専門士
福島富和 361
文献抄録 
認知症を抱える配偶者を介護することは認知機能低下を招くか?;1つの仮説と考えられるメカニズム
井藤佳恵・粟田主一
大うつ病と遂行機能障害を併せ持つ高齢者における問題解決療法の効果
岡村 毅・粟田主一
学会NEWS
一般社団法人への移行について
第30回日本認知症学会学術集会 印象記
第27回日本老年精神医学会開催のご案内
日本老年精神医学会「第8回生涯教育講座」開催のお知らせ
学会入会案内
バックナンバーのご案内
編集後記
 
論文名 Community-based integrated careの基本的な考え方 ─ 地域包括ケアシステムにおける認知症患者への支援 ─
著者名 筒井孝子  
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):271-279,2012
抄録 日本は,これまでのピラミッド型医療圏を前提とした医療サービス提供の仕組みを,地域圏をベースとした他職種連携による医療・介護サービス提供体制(地域包括ケアシステム)とする組み換えを急いでいる.本稿では,この新たなシステムの定義に含まれる2つの独立したコンセプトの基本的な考え方を説明しながら,今,日本が早急に取り組むべき地域の認知症高齢患者への医療・介護サービス提供のあり方を論ずることを目的とした.
キーワード community-based integrated care,integrated care,care pathway,地域包括ケアシステム
論文名 認知症ケアにおける地域連携の政策的展望
著者名 武田章敬,堀部賢太郎     
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):280-286,2012
抄録 平成24年度から施行される改正介護保険法の理念は「地域包括ケアシステムの構築」である.環境変化に脆弱な認知症の人にとっても日常生活圏域で必要なサービスが切れ目なく提供されることはひときわ重要である.現在,認知症の人と家族が住み慣れた地域で生活し続けることを支援するために,認知症サポート医養成研修事業,かかりつけ医認知症対応力向上研修事業,認知症疾患医療センター運営事業,市町村認知症施策総合推進事業等が行われており,平成23年11月にとりまとめられた「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム(第2R:認知症と精神科医療)」報告書でも「入院を前提とせず,地域生活を支える」認知症医療の方針が打ち出されている.認知症の人と家族の生活の質を向上させるために,地域の関係者が連携する必要性がさらに高まっている.
キーワード 介護保険法改正,地域包括ケアシステム,かかりつけ医,認知症サポート医,認知症疾患医療センター,認知症地域支援推進員
論文名 かかりつけ医制度の現状と課題
著者名 鷲見幸彦      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):287-293,2012
抄録 認知症ケアと医療の地域連携の必要性についてかかりつけ医の視点から述べた.かかりつけ医には@早期段階での発見・気づき,A専門医療機関への受診誘導,B一般患者として日常的な身体疾患対応,健康管理,C家族の介護負担,不安への理解,D地域の認知症介護サービス諸機関との連携,E地域の人たちへの啓発活動などの役割が期待され,知識・理解の向上が求められている.地域連携の構築にはかかりつけ医を支える複数のシステム(認知症サポート医,専門医療機関,医師会の協力,地域包括支援センター)が必要であるが,地域ごとの実態は明らかでなく地域差が大きいことが推測される.
キーワード 認知症,地域連携,かかりつけ医,サポート医
論文名 認知症疾患医療センターの連携機能
著者名 小嶋誠志郎,池田 学      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):294-298,2012
抄録 認知症疾患医療センターの役割として,専門医療相談,早期診断(鑑別診断)に基づく初期対応,認知症に伴う精神症状や行動障害(behavioral and psychological symptoms of dementia ; BPSD)の治療,身体合併症のマネジメント,かかりつけ医や介護スタッフとの連携・医療研修の実施,標準的な認知症医療の普及・啓発などがあり,熊本県では2009年から基幹型センターと地域拠点型センターの2層構造(熊本モデル)で認知症疾患医療センターを運営している.本稿では,地域連携ネットワーク構築の手段として基幹型センター(熊本大学病院)が実施している人材育成機能(事例検討会・かかりつけ医研修・サポート医研修)について紹介する.
キーワード 認知症,地域連携,認知症疾患医療センター,熊本モデル
論文名 地域包括支援センターの機能;現状と課題 ─ 仙台市における認知症対策の取組みから ─
著者名 菊地和子,佐藤彰子,山口健太,福本 恵      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):299-304,2012
抄録 全国の各自治体では,高齢化の進展に伴い,さまざまな認知症の対策を講じているが,比較的人口規模の大きい仙台市においては,中学校区を基本に設置され,地域住民や関係機関と密接なネットワークを構築している地域包括支援センターが大きな役割を果たしており,認知症対策への取組みによって構築・強化された関係者とのネットワークが,センターの通常業務や災害時対応に活かされるといった効果が生まれている.ただし,センターが取り組む認知症対策については,全国版のマニュアルには明確に位置づけられていないことから,自治体独自の視点から方針を示すとともに,センターの円滑な活動を支援するための取組みを進める必要がある.
キーワード 高齢者,認知症,地域包括支援センター,認知症地域支援推進員,地域連携
論文名 地域連携のための認知症地域支援推進員の役割
著者名 大島憲子      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):305-313,2012
抄録 認知症の人が住み慣れた地域で暮らしていくことが継続できるための支援について,平成23年度「市町村認知症施策総合推進事業」のなかで位置づけられた認知症地域支援推進員の役割から,認知症の人の地域における現状と施策について概観した.さらに,認知症地域支援推進員研修受講者の状況から連携のための条件,課題を整理し,地域連携を図るうえでの認知症地域支援推進員の役割について考察した.
キーワード 地域連携,認知症地域支援推進員,市町村認知症施策総合推進事業,地域包括ケア体制,認知症疾患医療センター
論文名 認知症地域連携パス
著者名 杉山博通,数井裕光,繁信和恵,田伏 薫,武田雅俊     
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):314-322,2012
抄録 認知症地域連携パスとは,認知症患者がいつ,どこで,どのような医療やケアを受ければよいのか,その標準的な手順を視覚化してわかりやすく提示したものである.筆者らは,@認知症の気づき〜診断,A非日常診療,B日常在宅診療およびケア,の3部分に分けたパスを提案した.またパスを補完する連携ツール(「連携ファイル」「疾患別・重症度別ガイドブック」)を作成し,活用することとした.
キーワード 認知症,地域連携,連携パス,連携ファイル
論文名 レビー小体を伴う認知症(dementia with Lewy bodies ; DLB)とアルツハイマー病における認知機能変動の検討 
著者名 飛田靖人・永島敦子・佐藤卓也・佐藤 厚・今村 徹      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):325-333,2012
抄録 認知機能変動はレビー小体を伴う認知症(dementia with Lewy bodies ; DLB)における中核症状のひとつであるが,臨床上の認知機能変動そのものを対象とする研究はほとんど報告されていない.そこで本研究では先行研究をもとにShort Fluctuations Questionnaire(SFQ)で定義した認知機能変動と他の要因の関係を検討した.対象:アルツハイマー病(Alzheimer's disease ; AD)またはDLB患者111人.方法:年齢の影響を統計学的に統制したうえで認知機能変動の有無と認知機能の指標との関係を検討した.結果:ADAS下位項目の口頭命令と構成,FAB合計得点,下位項目の葛藤指示,Go/No-goに有意な群間差がみられた.またMMSE下位項目のSerial-7,三段階命令,FAB下位項目の運動系列で群間差の傾向がみられた.考察:群間差,またはその傾向がみられたFAB下位項目の葛藤指示,Go/No-go,運動系列はいずれも反応抑制課題であるが,これらの課題はDLBとADで成績に差がないことがすでに報告されている.反応抑制の低下と認知機能変動の関係は直接的なものである可能性がある.
キーワード レビー小体を伴う認知症,認知機能変動,Short Fluctuations Questionnaire,アルツハイマー病,反応抑制
論文名 運動器の機能向上プログラム実施後の要支援高齢者における心理的変化の分析 ─ マズローの基本的欲求を基盤とした調査より ─
著者名 望月秀樹・大嶋伸雄・繁田雅弘      
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,23(3):334-345,2012
抄録 通所介護施設にて,介護予防として運動器の機能向上プログラムを実施した要支援高齢者を対象とし,マズローの基本的欲求の階層理論に基づき心理的変化を分析した.また同時に介護予防における身体的要因,心理的要因,社会・環境要因との関連を検討した.その結果,開始時に比べて3か月後には歩行を中心とした運動機能と役割や外出頻度の増加などの活動性が改善・向上し,それに伴い,欲求の階層構造が変化した.それらを分析し,介護予防プログラムを進めるうえで,導入時は所属感や対人交流に考慮し,効果的な運動プログラムを提供し,得られた効果によりさらなる運動に対する意欲を引き出すような取組みが必要であると結論づけられた.また歩行能力の改善,自己実現の欲求を持ち続けること,外出頻度の向上が介護予防における関連要因として示された.
キーワード 介護予防,運動器の機能向上,マズロー