論文名 | 認知症終末期の臨床倫理 |
著者名 | 箕岡真子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,22(12):1405-1411,2011 |
抄録 | 認知症終末期ケアを考えるとき,患者本人の望む治療のゴールを踏まえ,“その本人にとって”“人生のそのときに”“その状況において”なにが最も望ましいQOLなのかを考慮することが倫理的には重要である.そして,倫理的に適切な“看取り”を実践するためには,@医学的視点,A本人の意思,B家族の意思,C法的視点,D社会のコンセンサスについて十分な考慮がなされる必要がある. |
キーワード | 看取り,終末期延命治療,自己決定権,事前指示,家族同意 |
論文名 | 入所施設の認知症の行動心理学的徴候(BPSD)で入院を依頼する要因の実態調査 |
著者名 | 矢山 壮・繁信和恵・山川みやえ・牧本清子・田伏 薫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,22(12):1413-1421,2011 |
抄録 | 【目的】入所施設においてケアスタッフが対応困難により専門医療機関に入院依頼を検討する行動心理学的徴候(BPSD)の内容を明らかにすることを目的とした.【方法】BPSDの測定尺度である日本語版NPI-NH(Neuropsychiatric Inventory in Nursing Home)をもとに作成したアンケートを大阪府下の入所・入居施設977施設に郵送した.【結果】回収率は41.0%であった.入院依頼を検討するBPSDは「興奮」が全施設の77.1%と最も多かった.その下位項目は,「他人を傷つけたり,殴ったりしようとする」が最も多かった.次に多かったBPSDは「食欲と食行動の変化」(44.4%)で,下位項目では体重減少や食欲不振が最も多かった.そのほかに夜間徘徊などの迷惑行為が多かった.【考察】対応困難で入院依頼を検討するBPSDに共通してみられる特徴は,他の入所・入居者に影響があるものであった.また,異食などの行動の異常よりも体重減少や食欲不振などの身体的問題になりうるものも入院依頼を検討する要因であることがわかった. |
キーワード | BPSD,対応困難,入院検討,入所施設 |
論文名 | 地域での認知症相談において認知機能低下を
鑑別する評価指標 ── 地域在住健常高齢者を対象としたサンプル調査からの検討 ── |
著者名 | 若松直樹・根本留美・石井知香・野村俊明・川並汪一・北村 伸 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,22(12):1423-1431,2011 |
抄録 | 「街ぐるみ認知症相談センター」は,地域において気軽にもの忘れをチェックできることを目指している.健忘が疑われる場合には,来談者の「かかりつけ医」へ健忘の情報提供を行うことにより,認知症の早期診断・治療開始がなされることを目的としている.健忘のスクリーニングには,タッチパネル式もの忘れ検査(浦上ら)および,Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いた.相談のなかでは,スクリーニングでは明らかな健忘が認められないものの,家族や関係者などからの情報では健忘のエピソードが示唆される事例が散見される.こうした事例に対し,簡便にやや詳細な認知機能評価を実施するための神経心理検査バッテリーを設定し,今回は対照群とするための健常高齢者データを集積し,相談群と比較した. |
キーワード | 認知症,早期発見・治療,簡便な神経心理学的評価,タッチパネル式スクリーニング,Mini-Mental State Examination |
論文名 | 認知症専門医診療におけるドネペジル塩酸塩によるアルツハイマー型認知症の包括的健康関連QOL指標の変化に関する研究 |
著者名 | 安田朝子・河野禎之・木之下 徹・内海久美子・奥村 歩・繁信和恵・ 川嶋乃里子・川畑信也・繁田雅弘・高橋 智・田北昌史・玉井 顯・ 長田 乾・橋本 衛・平井茂夫・水上勝義・山田達夫・八森 淳・ 池田 学・朝田 隆・本間 昭・小阪憲司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 | 老年精神医学雑誌,22(12):1433-1445,2011 |
抄録 | 目的:ドネペジル塩酸塩の服薬が初診のアルツハイマー型認知症(DAT)者と介護者のQOLにもたらす効果を検討した.研究デザイン:14週間の前向きコホート研究.設定:全国の4精神科/神経内科クリニック,13病院,1大学病院の外来.対象:DAT者と介護者107組の連続症例.ドネペジル塩酸塩の服薬状況で3群(新規服薬群,継続服薬群,未服薬群)に分類.アウトカム指標:一次アウトカムをDAT者と介護者のQOL効用値(EQ-5D)の変化,二次アウトカムを認知機能やBPSD,介護負担度の変化などとして評価.結果と考察:新規服薬群においてQOL効用値はDAT者で0.122,介護者で0.117と有意な改善が認められ,二次アウトカムも有意に改善し,この差は,群間比較においても未服薬群に比して有意な改善であった.ドネペジル塩酸塩の服薬がDAT者および介護者のQOLの向上に役立つことが示唆された. |
キーワード | ドネペジル塩酸塩,アルツハイマー型認知症,EQ-5D,QOL,効用値 |