2011 Vol.22 No.10
 
 
第22巻第10号(通巻279号)
2011年10月20日 発行
 
 
巻 頭 言
認知症のくすり
佐野 輝 1110
特集:高齢者の生活支援のための心理検査の活かし方
老年期精神科臨床と心理検査
本間 昭 1113
認知機能の加齢変化と高齢者への知能検査の適用
山中克夫 1117
高齢者の日常生活の遂行能力と心理検査
川合嘉子 1125
高齢者の経済行為能力と心理検査
松田 修 1131
高齢者の運転技能と心理検査の活かし方
藤田佳男・三村 將 1137
高齢者の機能性精神疾患と心理検査
─ うつ病と認知症の鑑別における心理検査の役割 ─
松澤広和 1143
認知症ケアにおける心理検査
─ 認知症看護・介護における心理検査所見の活かし方,伝え方 ─
浅見大紀 1148
原著論文 
認知機能障害を伴う要介護高齢者の日常生活動作と行動・心理症状を測定する
新評価票
今井幸充ほか 1155
アルツハイマー病患者のコミュニケーション障害への対応
 ─ 聴覚障害に対する口形提示の効果 ─
飯干紀代子ほか 1055
連  載 
認知症臨床に役立つ生物学的精神医学(13)
 ─ 前頭側頭葉変性症の分類・病期と診断 ─
清水秀明・池田 学 1175
Column 
私たちの仕事
連載を始めるにあたって
加藤伸司
第1回 看護師
長瀬亜岐
第2回 保健師
長谷川聡子
第3回 専門看護師
桑田美代子
文献抄録 
永田智行・笠原洋勇
学会NEWS
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編集後記
 
論文名 老年期精神科臨床と心理検査
著者名 本間 昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1113-1116,2011
抄録 老年期精神科臨床で用いられることが多い,認知症のスクリーニングを目的とした検査法の来歴とその運用に関する考え方を示した.今後の認知症者の増加を考えればより軽度の段階でスクリーニングを含めて疑う手だてが広く共有され,受診者の認知症の診断や治療に対する知識や認識によって,スクリーニングの効率が左右されることから,検査方法についての検討と同時にさらなる啓発活動が積極的に進められる必要がある.
キーワード 認知機能検査,認知症,スクリーニング,アルツハイマー病治療薬
> 論文名 認知機能の加齢変化と高齢者への知能検査の適用
著者名 山中克夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1117-1124,2011
抄録 本稿では,臨床現場で利用頻度が高い知能検査(WAIS)のデータを中心に,認知機能の加齢変化(cognitive aging)に関する方法論や研究成果を具体的に紹介した.これまでの研究では,方法論による違いはあっても,ライフスパン全体でみた諸能力の保持・低下の順位は一貫した傾向が示されている.さらに本稿では,知能検査(WAIS)の高齢者への適用に関する解説を行った.
キーワード cognitive aging,横断法,縦断法,系列デザイン,WAIS
 
論文名 高齢者の日常生活の遂行能力と心理検査
著者名 川合嘉子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1125-1130,2011
抄録 認知障害による日常生活の遂行能力の低下は,認知症疾患の重要なサインであり,両者の関連を抑えるために心理検査は欠かせない.本稿では「もの忘れ外来」のデータ分析と認知症疾患治療病棟の事例を通し,心理検査の活かし方を論じた.心理検査結果は認知症の進行や精神症状により変化しうるため,定期的な多面的アセスメントの一環として行うこと,結果を具体的な支援に結びつけることが重要である.高齢者と家族の支援のため,さらなる研究と実践を積み重ねていくことが老年精神医学の専門家の役割であろう.
キーワード 高齢者,遂行能力,認知症,心理検査,ADAS-J cog
 
論文名 高齢者の経済行為能力と心理検査
著者名 松田 修
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1131-1136,2011
抄録 高齢者の経済行為能力(FC)を低下させる主たる要因は,認知能力の低下である.認知能力の評価には心理検査が用いられることが多いが,検査成績から高齢者のFCを判断する際には留意すべき点がある.認知症高齢者のなかには,IQや検査成績が正常域であっても,経済行為の遂行に問題のある高齢者は少なくない.正常加齢によっても,処理速度,知覚統合,ワーキングメモリが低下し,高齢者のFCを低下させる可能性もある.
キーワード 経済行為能力,心理検査,認知症,正常加齢
 
論文名 高齢者の運転技能と心理検査の活かし方
著者名 藤田佳男,三村 將
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1137-1142,2011
抄録 高齢者が引き起こす交通事故は増加しているが,その運転適性を評価することは容易ではない.本稿ではまず高齢者や認知症者の運転行動の事故の特徴を概説し,次に認知機能スクリーニング検査だけでは運転能力は予測困難であることを述べた.運転能力の評価は認知症の重症度の判断に加え,神経心理学的検査,運転シミュレータ,路上テストと事故歴などを勘案して判断する必要があるが,有効視野の測定を加えることにより正確になると考えられる.
キーワード 自動車,認知症,有効視野,認知機能検査,高齢者
 
論文名 高齢者の機能性精神疾患と心理検査;うつ病と認知症の鑑別における心理検査の役割
著者名 松澤広和
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1143-1147,2011
抄録 高齢者のうつ病と認知症の鑑別をめぐる心理検査の役割について論じた.前半は,筆者が心理検査を担当した症例として,うつ病と診断された70歳代男性への心理検査を取り上げ記述した.後半は,心理検査を実施し解釈する際の留意点について論じた.うつ病と認知症の鑑別に際しては,心理検査結果の量的な側面(点数)ではなく質的な側面(誤り方)を観察することが重要である.また,両疾患では課題への反応の仕方の一貫性に差があると考えられ,複数回の検査の実施が効果的であると考えられる.
キーワード うつ病,認知症,鑑別,心理検査,記憶障害
論文名 認知症ケアにおける心理検査;認知症看護・介護における心理検査所見の活かし方,伝え方
著者名 浅見大紀
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1148-1153,2011
抄録 認知症看護・介護においてどのように心理検査の結果を活かすのか,活かすためには看護師・介護士にどのように伝えるべきなのかについて,筆者の見解を論じた.活かし方では検査態度,認知機能の障害プロフィールの把握,行動観察の協働実施の重要性についてふれた.伝え方では,点数のみの報告にしないこと,認知機能の低下と残存の両方に言及すること,スタッフの心理教育を意識することなどについて述べた.最も重要なのは検査結果を現場で活かしてくれる看護師・介護士との日頃からのコミュニケーションである.
キーワード 認知症,心理検査,チーム医療,認知機能,障害プロフィール
論文名 認知機能障害を伴う要介護高齢者の日常生活動作と行動・心理症状を測定する新評価票
著者名 今井幸充,長田久雄,本間 昭,萱間真美,三上裕司,加藤伸司,木村隆次,石田光広,沖田裕子,遠藤英俊,池田 学,半田幸子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1155-1165,2011
抄録 認知機能障害がある高齢者の日常生活動作の程度を測定する「認知機能障害に伴う日常生活動作評価票(以下,ADL-Cog)」と行動と心理状態を測定する「認知機能障害に伴う行動・心理症状評価票(以下,BPS-Cog)」を考案し,要介護度認定調査員ならびに日本老年精神医学会員医師に依頼し,その信頼性と妥当性の検証を行った.方法は,認知機能障害を伴う高齢者に2つの新しい評価票を用いてADLと行動・心理症状を測定した.信頼性の検証では,DVD画像を用いて認定調査員42人,医師39人の評価者間一致率を,また認定調査員のみ評価者内一致率を検証した.妥当性の検証では,565人の認知機能障害を伴う高齢者にADL-CogならびにBPS-CogとFAST,Behave-AD,「認知症高齢者の日常生活自立度」を同時に実施し,相互の相関関係を求めた.結果では,評価者間一致率が2つの評価票ともに69%以上と高く,また認定調査員による評価者内一致率もADL-Cog,BPS-Cogともに87%以上の一致率がみられ,さらに級内相関係数(ICC)は認定調査員間で相関係数が0.77以上,医師と調査員間では0.71以上であった.既存測度のFASTとADL-Cogの相関は相関係数が0.715,またBehave-ADとBPS-Cogは相関係数0.611の相関が認められた.以上から,ADL-CogならびにBPS-Cogの信頼性と妥当性は,検証された.
キーワード 認知症,ADL-Cog,BPS-Cog,認知機能,評価測度
論文名 アルツハイマー病患者のコミュニケーション障害への対応 -聴覚障害に対する口形提示の効果-
著者名 飯干紀代子,大森史隆,東 慎也,猪鹿倉忠彦,三村 將
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,22(10):1166-1173,2011
抄録 Probable AD患者80例(平均年齢81.7歳,平均Mini-Mental State Examination〈MMSE〉得点16.8点)を対象に,発話者の口形提示が単語の聞こえに及ぼす効果について検討した.純音聴力検査と,日本聴覚医学会作成67語表の20単語を用いた復唱検査を実施した.復唱検査では,1対象に口形提示あり・なしの2条件をランダムに実施した.その結果,@口形提示あり条件が,なし条件より有意に単語の復唱正答数が高かった.A口形提示の有無を被験者内要因,聴覚障害を被験者間要因とした2way ANOVAの結果,口形の主効果と交互作用が有意,単純主効果の検定で,聴覚障害moderateとsevereにおいて口形の効果が有意であった.B同様にMMSEを被験者間要因とした結果,口形の主効果を認めたが交互作用は認めなかった.ADに対する口形提示は,ADの残存能力のひとつである音韻系の機能を活用した方法と考えられ,moderate以上の聴覚障害があり,かつ補聴器装用が困難な例に対する有効なコミュニケーション方法となりうることが示唆された.
キーワード アルツハイマー病,聴覚障害,了解度検査,コミュニケーション方法,口形提示