以下の文は小社刊「老人のための家庭医学百科」からの転載です

 

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医療施設から治療の目的により処方される薬には、次のようなものがあげられます。

 

(1)抗生物質
 まず、急性の感染性疾患(たとえば、扁桃炎、気管支炎、肺炎など)に対しては、抗生物質があります。これは病気の原因となる菌(病原菌)に対して殺菌的に働く薬で、病気(疾患)が回復すれば服用を中止するという種類の薬です。また、抗生物質は、病気を予防するための投与・服用は行われず、「少し熱があるから」とか「かぜ気味であるから」とかの自己診断で残っていた抗生物質を服用することは危険です。さらに、抗生物質は薬としてすぐれたものですが、副作用や耐性(病原菌に抗生物質を使用していくうちに、この抗生物質が効かない菌種が生まれてくること)などの問題もあります。
 抗生物質とよく併用される薬には、抗炎症薬や解熱薬があげられますが、服用方法はほぼ抗生物質と同じと考えてよいと思われます。

 

(2)鎮痛薬
 また、鎮痛薬などは、頭痛、関節痛その他の痛みの症状があるときに頓服(1つの薬を必要に応じて、そのとき1回に服用すること)として用います。そのためか、他人に自分の鎮痛薬を親切心からでもあげてしまうことがありますが、時としてその薬をもらった人が薬物アレルギーを起こすこともあり、非常に危険ですから、そのようなことはしないように心がけてください。

 

(3)ホルモン剤
 副腎皮質ステロイド剤をはじめとするいわゆるホルモン剤は、さまざまな疾患において広く用いられ、有用性の高い薬ですが、これらのホルモン剤は疾患や症状により服用量や服用回数が異なるために必ず決められた用量・用法を守ることが大切です。また、長期の使用により、とくに老人では骨がもろくなったり(骨粗鬆症)、細菌感染への抵抗力が低下するなどの副作用がでることもあります。したがって、このような薬物を使用している患者さんは、医師の定期的な診察および検査を欠かさずに受け、服用量を調節することが重要になります。

 

 痛風、糖尿病、高脂血症、心臓病、高血圧症、不整脈、狭心症、脳卒中後遺症やパーキンソン病などの慢性的に経過する疾患では、薬もまた長期間にわたって服用しなければならなくなります。
 痛風や狭心症では、発作時に服用する薬と、普段連用内服している薬とでは種類の異なることが多く、服用時には注意が必要となります。糖尿病、高脂血症、高血圧症などの薬は、朝・昼・夕で服用量が異なったりすることが多く、朝飲み忘れたときなど、昼に朝の分の薬をひとまとめに服用することは時として危険を招く場合もあります。このようなときには、医師または薬剤師に相談する必要があります。
 また、糖尿病の治療には経口薬(経口血糖降下薬)も多く用いられますが、アスピリンと併用した場合などは、時に血糖降下作用が強く現れ、低血糖症状(冷や汗、ふるえ、吐きけ、意識低下など)が生じることがあります。したがって、経口血糖降下薬を使用している人で、アスピリンを含んだかぜ薬を服用する場合には、とくに注意が必要です。
 また、喘息の治療を続けている患者さんでは、主治医以外の医師に高血圧の治療を受ける際には、必ず喘息の既往のあることを告げる必要があります。喘息の薬と高血圧の薬は、時によっては飲み合わせの悪くなることがあるからです。
 消化器系の疾患、たとえば胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の治療薬は、疾患の回復や治癒により服用の休止できる薬も多く、定期的な胃X線検査や胃内視鏡検査を受けて、服用薬の量を調節することが可能です。
 老人でしばしばみられる疾患に、不眠症や抑うつ症状があります。現在、これらの疾患に対しては効果の発現が早く、また体内からの排出もすみやかに行われる薬も広く用いられています。とくに睡眠薬の服用については、以下のような注意が必要です。
 まず睡眠薬を服用したら、すぐに床にはいり、安静にすることを守らなければなりません。睡眠薬を服用後に眠けを我慢して起きていたり、お酒を飲んだりすると、一時的に記憶を失った状態に陥ったり、また転倒して骨折する危険性があるからです。

 今日では、薬の安全性については、十分に確立されている状態といえますが、まれに薬がその人の体質にあわないこともあります。薬を服用していて、発疹、発赤、吐きけ、ふるえや呼吸困難などが生じた場合には、すぐに薬の服用を中止し、ただちに近医を受診するようにしてください。

 


 

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