論文名 | 認知症初期集中支援チームとは |
著者名 | 粟田主一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):749-755,2022 |
抄録 | 認知症初期集中支援チームは,地域包括ケアシステムの実現という文脈のなかで,地域包括支援センターの機能を補完・強化するという方向性をもって事業化された.認知症とともに暮らせる社会をつくるには,地域包括支援センターと認知症初期集中支援チームのシステム統合,複雑困難事例に適切に対応できる体制整備,独居認知症高齢者等が必要とする社会的支援へのアクセシビリティを高める環境づくりが肝要である.認知症初期集中支援チームが果たすべき役割は大きい. |
キーワード | 認知症初期集中支援チーム,地域包括ケアシステム,地域包括支援センター,独居認知症高齢者,システム統合 |
論文名 | 認知症初期集中支援チームの活動状況 |
著者名 | 池田 学, 垰夲大喜, 佐竹祐人, 橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):756-766,2022 |
抄録 | 認知症初期集中支援チーム(以下,支援チーム)は医療と福祉の専門職2人以上に医師を含めた3人以上で編成されるチームであり,認知症の発症初期,医療とのかかわりの初期に対応すべく,2019年に全市区町村へ配置された.支援チームの対象には,アプローチや医療や介護につなぐことがきわめて困難な事例(困難事例)が相当数含まれる.本稿では,令和2・3年度に実施した全国調査の結果をもとに,支援チームの活動状況について考察する. |
キーワード | 認知症初期集中支援チーム,困難事例,幻覚・妄想,BPSD,セルフネグレクト |
論文名 | <支援チーム内での精神科医の役割:大都市の場合> 認知症神戸モデルにおける認知症初期集中支援チームの活動 |
著者名 | 長谷川典子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):767-774,2022 |
抄録 | 兵庫県神戸市では,2018年に「神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例」を施行し,2019年には認知症診断助成制度を核とした「認知症神戸モデル」を創設した.その際,以前から活動していた認知症初期集中支援チームを一元化し,認知症神戸モデルへつなぐ入口の役割を担えるよう位置づけた.認知症初期集中支援チーム内での精神科医の活動にもふれながら,認知症神戸モデルを利用して医療・介護につなぐ支援の現状を紹介する. |
キーワード | 認知症,認知症初期集中支援チーム,認知機能検診,診断助成制度,精神科医 |
論文名 | <支援チーム内での精神科医の役割:地方都市での活動> 熊本県荒尾市における認知症初期集中支援チームの活動概要 |
著者名 | 石川智久 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):775-780,2022 |
抄録 | 熊本県荒尾市では,認知症初期集中支援チームを,単科精神科病院を母体とする「医療系」の支援チームと社会福祉法人を母体とする「福祉系」の支援チームの2チーム設置している.医療系チームは精神科医や精神保健福祉士といった精神科専門職で構成されており,種々の精神症候への対応が求められるケースにかかわり,福祉系チームは生活支援への介入を主に担っている.両者は市地域包括支援センターを中心に連携しながら,相互に役割分担している. |
キーワード | 認知症初期集中支援チーム,熊本県地域拠点型認知症疾患医療センター,荒尾市地域包括支援センター,医療系チーム,福祉系チーム |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> 高齢者の発達障害 |
著者名 | 繁信和恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):781-785,2022 |
抄録 | 現在の初老期から高齢期の人々が幼少のころには,「発達障害」という概念は浸透していない時代であった.そのため,診断や療育・指導を受けることなく,本人・家族ともに,さまざまな生きづらさを経験しながらも,発達障害を自覚することなく長年生活してきたことが推測される.もともとの発達特性が加齢に伴い先鋭化することも考えられる.また,高齢になればなるほど認知症が合併してくる割合も増加する.発達障害の特性をもつ高齢者が日常生活にさらに支障をきたすようになったり,配偶者との死別や子どもの独立などにより地域で孤立することが実際に起こっている.そのような事例が認知症初期集中支援チームの相談に上がり,通常の認知症対応では問題の解決が困難な事例となっている. |
キーワード | 発達障害,認知症,こだわり |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> 老年期のサイコーシス |
著者名 | 佐竹祐人,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):786-792,2022 |
抄録 | 認知症初期集中支援チーム活動における困難事例のなかには,認知機能障害より妄想や幻覚が前景に立ち,高齢発症の精神病性障害(very-late-onset schizophrenia-like psychosis〈VLOSLP〉)とされるような事例が少なからず存在する.本稿ではそうした事例を3例呈示し,困難事例化する理由,認知症初期集中支援チームの有用性,VLOSLPと変性疾患の鑑別のむずかしさを論じる.VLOSLPはその疾患特性から困難事例化しやすいと考えられ,受診勧奨の方法を検討していくことは重要と考えられる. |
キーワード | 認知症初期集中支援チーム,アウトリーチ,妄想性障害,very-late-onset schizophrenia-like psychosis,遅発パラフレニー |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> 認知症初期集中支援チームが関与した迷惑行為の特徴 |
著者名 | 内海久美子,福田智子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):793-799,2022 |
抄録 | 全国8つの認知症初期集中支援チーム(チーム)が支援したケースについて,相談内容が迷惑行為であった迷惑行為群(迷惑群)とそれ以外の相談内容の非迷惑行為群(非迷惑群)について分析した.迷惑群は独居が多く,迷惑行為の内容としては大都市では地方都市に比べて直接的被害が多いなどの特徴が認められた.認知症高齢者の迷惑行為によるチーム介入では,本人や家族の意思を尊重し,地域住民の安全をも考慮しつつ専門職からなるチーム活動は有益であると思われる. |
キーワード | 認知症高齢者,迷惑行為,大都市,地方都市,独居 |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> 8050問題 |
著者名 | 澤 滋,中島憲行,藤原 誠 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):800-805,2022 |
抄録 | 8050問題とは,ひきこもりの状態にある人と,支援する家族が高齢化したことにより生じる社会問題である.筆者の法人では認知症初期集中支援チームと別に,精神疾患の未治療や治療中断を対象とした多職種による訪問支援チームが活動しており,両者が連携して8050問題やその予備軍に対応することがある.今後,高齢社会において「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」を推進するためには,より重層的なアウトリーチサービスへの取組みが求められるであろう. |
キーワード | 8050問題,認知症,ひきこもり,アウトリーチ,高齢化,地域包括ケア |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> ためこみ症/いわゆる「ごみ屋敷」 |
著者名 | 井藤佳恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):806-810,2022 |
抄録 | いわゆる「ごみ屋敷」への対応は,地域保健のなかの大きな課題である.困難事例に対する支援は社会的困難に主眼がおかれがちで,とくに「ごみ屋敷」については住環境に焦点をあてた支援策が打ち出される傾向にある.しかしながら,背景にある社会的孤立へのアプローチを考えるなら,この事態に至った本人の心理に焦点をあてることが重要であり,精神科医が果たしうる役割は大きいと考える. |
キーワード | 認知症,高齢者,困難事例,ごみ屋敷,ためこみ |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> ごみ屋敷/令和3年度全国調査 |
著者名 | 垰夲大喜,藤本 宏,三田駒子,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):811-816,2022 |
抄録 | 認知症初期集中支援チームの対応する対象に関しては,アプローチそのものや医療や介護につなぐことがきわめて困難な事例(困難事例)が相当数含まれており,困難事例には身体的,内科的課題のある事例,認知症に伴う行動・心理症状を伴う事例,ごみ屋敷事例,アルコール使用障害,支援拒否,虐待事例などが含まれることが報告されている.本稿では,令和3年度の認知症初期集中支援チームに関する全国調査で報告され,入院後の経過を確認することができた事例をもとに,複合的な問題を抱える困難事例に関して考察する. |
キーワード | 認知症初期集中支援チーム,ごみ屋敷,ためこみ症,セルフネグレクト,Diogenes症候群 |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> 支援拒否があったが医療と介護につながった事例と困難事例の課題 |
著者名 | 三好豊子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):817-825,2022 |
抄録 | 大阪府堺市にある浅香山病院の認知症初期集中支援チームは,認知症疾患医療センターが併設されている総合病院に設置され,7年間に365件の困難事例の相談があった.相談内容から支援困難理由を本人と家族に起因する理由および社会的な理由に分類した.その分類で相談件数が多かった「幻覚妄想」と「暴言・暴力」および「家族の脆弱」により支援拒否があり医療と介護につながった6事例を報告する.また,効果的な対応のために医療と介護につなぐための支援,本人の権利擁護と意思決定支援,家族や地域支援者からの相談や教育的支援について紹介する. |
キーワード | 支援拒否,幻覚妄想,暴言・暴力,家族の脆弱,アセスメント |
論文名 | <地域において支援チームが直面する困難事例> 支援拒否事例を通じて困難事例の背景にある問題や多職種の役割などを考える |
著者名 | 柏木一惠 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(8):826-831,2022 |
抄録 | 認知症初期集中支援チームが対応する困難事例の多くは支援拒否事例といっても過言ではない.支援を拒否する認知症者の具体事例を通じて,その現状や背景にある問題,支援のポイント,多職種の役割などを考える.困難事例はそこに至るまでに問題を見逃されてきた,あるいは当事者たちのSOSを受信できなかった地域や社会側の問題である. |
キーワード | 脆弱な家族基盤,劣悪な居住環境,ライフライン停止,社会的孤立,アウトリーチのリスク |