老年精神医学雑誌 Vol.33-7
論文名 AD continuumとATNバイオマーカー
著者名 岩田 淳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):643-648,2022
抄録 アルツハイマー病の診断根拠となる病理学的変化の存在がバイオマーカー検査で可能となった.老人斑の存在はアミロイドPETでの陽性所見もしくは脳脊髄液A?42の低値で,神経原線維変化の存在はタウPETでの陽性所見もしくは脳脊髄液リン酸化タウ高値で診断するのが従来の診断基準だが,それを拡張するかたちで神経変性の存在を脳脊髄液総タウの高値もしくはFDG-PETでの代謝低下,脳MRIでの萎縮で表現するのがATN分類である.現在では血液でのATN分類の試みもなされ,将来の疾患修飾薬の社会実装に備えた診断システムの構築がなされつつある.
キーワード AD continuum,ATNバイオマーカー,アミロイドPET,脳脊髄液,血液バイオマーカー
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論文名 認知症臨床におけるStructural/Functional imagingはどこへ行くのか?
著者名 根本清貴
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):649-655,2022
抄録 脳画像は認知症の日常臨床に応用されているバイオマーカーである.本邦では,脳画像解析ソフトウェアの普及により側頭葉内側部の萎縮度や脳血流によるアルツハイマー病らしさ,レビー小体型認知症らしさなどが数値化できるようになっている.しかし,簡便に数値化できるということは,情報量の削減とのトレードオフともなっている.機械学習やマルチモーダル解析の導入などがさらなる発展につながるかもしれない.
キーワード 脳形態MRI,脳血流SPECT,脳画像解析ソフトウェア
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論文名 PETを用いたバイオマーカーの意義
著者名 互 健二,樋口真人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):656-662,2022
抄録 PETを用いた神経病理イメージングは,病理学的知見に基づいた生前診断を可能とし,疾患修飾薬開発を行ううえで基盤的な技術となりつつある.これまでアルツハイマー病に伴うアミロイド?病変を可視化するPET薬剤が数多く開発され,さまざまな臨床研究や治験に活用されてきた.近年,PETを用いた認知症診断は研究面での活用だけではなく,臨床面での実装においても現実味を帯びた段階に移行してきている.本稿では,とくに発展の著しいタウPET薬剤の開発状況やその有効性の検証,課題などを中心に紹介しながら,PETを用いたバイオマーカーの意義について論じた.
キーワード アルツハイマー病,前頭側頭葉変性症,アミロイドPET,タウPET,バイオマーカー
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論文名 体液バイオマーカーの進歩と臨床応用の課題
著者名 徳田隆彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):663-671,2022
抄録 "・アルツハイマー病(AD)の髄液バイオマーカー(BM)では,アミロイド?42とリン酸化タウが脳内のアミロイド蓄積とタウ蓄積と相関することが証明されている.近年,ADのATN-BMを血液で測定できるようになっている.
・髄液・血液BMの臨床応用には,検体の採取・処理および測定方法の標準化,診断に必要なカットオフ値の設定,など多くの課題がある.
・量子科学技術研究開発機構では,ATNシステムを凌駕する画像・体液BMを一体化した多項目BMシステムであるProVENシステムを実用化して,多様な認知症患者を診断・層別化したいと考えている."
キーワード 髄液バイオマーカー,血液バイオマーカー,SOP(Standard Operating Procedures),ATNバイオマーカーシステム,“ProVEN”システム
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論文名 AIを用いたアルツハイマー病新規診断技術の可能性と今後の展望
著者名 亀山征史,亀山祐美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):672-678,2022
抄録 人工知能(AI)は,今まさに進化しつつある分野であり,認知症についてもさまざまな試みがなされてきている.とくに,画像分類,自然言語処理の分野では近年著しい進展が認められる.ここでは,画像分類を利用した顔写真でのアルツハイマー病および正常の分類の試みと,自然言語処理による認知症の弁別ソフトウエアを紹介する.また,20〜30年後には人類の叡智を凌駕するともいわれるAIの様相(singularity)を考えながら,未来の認知症診療を展望したい.
キーワード 人工知能,機械学習,深層学習,認知症,自然言語処理
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論文名 レビー小体型認知症のバイオマーカー
著者名 小林良太,森岡大智,川勝 忍
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):679-686,2022
抄録 2017年に改訂されたレビー小体型認知症(DLB)の臨床診断基準では,バイオマーカーという項目が加えられた.バイオマーカーの存在はDLB診断をより信頼性のあるものにするとともに,最近では,前駆期DLBにおけるバイオマーカーの有効性も検証されている.DLBは認知症の発症前から,レム睡眠行動障害などさまざまな臨床徴候が出現することが知られているが,近年,前駆期DLBを診断するための研究基準が提案され,前駆期DLBはますます注目されている.本稿では,前駆期を含むDLBのバイオマーカーについて解説した.
キーワード レビー小体型認知症,バイオマーカー,α-シヌクレイン
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論文名 前頭側頭型認知症のバイオマーカー
著者名 品川俊一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):687-695,2022
抄録 前頭側頭型認知症あるいは前頭側頭葉変性症は.臨床症候群としても,神経病理学的にも,ヘテロジニアスで多彩な疾患群である.そのためアルツハイマー病(AD)などの他の認知症疾患に比べても「疾患」特異的な診断バイオマーカーの開発が困難であった.現在開発中のものとして,PETなどの神経画像マーカー,体液マーカーとしてはニューロフィラメント軽鎖(NfL)などの神経変性マーカー,遺伝子マーカー,そしてとくにADとの鑑別診断においてはp-tau181やp-tau217,p-tau231などが有用なことが明らかになりつつある.現時点で依然として特異的なマーカーはなく,技術上の課題も多いが,大規模なマルチセンターコホートの構築により,今後の疾患修飾薬による治療介入を見据えたアプローチが期待される.
キーワード 前頭側頭型認知症,前頭側頭葉変性症,バイオマーカー,臨床-病理相関,鑑別診断
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論文名 神経心理学的検査とバイオマーカー:認知症臨床における相互補完
著者名 今村 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(7):696-701,2022
抄録 認知症臨床において,神経心理学的検査とバイオマーカーは目的を異にしており,両者が競合しているわけではない.むしろ,患者の日常生活機能障害(functional impairment)のマネジメントという目標に向けて,相互に補完しあうものである.本稿ではこれらについて論じるとともに,認知症の臨床を専門としない人々が陥りがちな「一元論への逃避」に言及する.最後に,認知症臨床において神経心理学的検査所見を含む臨床症候学とバイオマーカーの相互補完によって期待される新たなインパクトについてもふれる.
キーワード 日常生活機能,認知機能障害,一元論,多元論,症候群
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