老年精神医学雑誌 Vol.33-6
論文名 特集にあたって:老年精神医療の臨床における倫理的課題
著者名 井藤佳恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):539-544,2022
抄録 精神医療,精神保健のなかで臨床倫理について考えるとき,私たちは最初から矛盾の多い状況のなかにいる.それは私たちが向き合うべき課題であり,目標にすべきは医療者が倫理的葛藤から解放されることではない.本稿では,臨床倫理とは,臨床の場における,人と人との関わりのなかにある答えのない「問い」なのだという立場に立ち,よく葛藤すること,正しい「問い」を立てるとはどういうことなのかということについて考えたい.
キーワード 老年精神医療,認知症,終末期医療,臨床倫理,意思決定
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論文名 人格主義生命倫理学と患者の自己決定権
著者名 秋葉悦子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):545-554,2022
抄録 自己決定権は米国の公民権運動によって勝ち取られた米国憲法における最高の権利であるが,限定原理をもたないため権利闘争に参加できない弱者が置き去りにされるデメリットがある.人格の尊厳原則を最高原理とする国際法と日本国憲法のもとで自己決定権をどのように位置づけるべきか,グローバルな公的医療が求められている今日,医師の果たすべき役割はなにかを,伝統的な医の倫理を現代化した人格主義生命倫理学の視点から考察した.
キーワード 自己決定権,人間 (人格) の尊厳,人格主義,普遍的道徳律,公的医療制度,社会的共通資本
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論文名 私たちは「よい死」を語りすぎていないか?
著者名 安藤泰至
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):555-564,2022
抄録 「よい死」は「安楽死(euthanasia)」という言葉の語源であるが,今日,狭い意味の「安楽死」だけではなく,「よい死」を求め,それを実現しようという動きが盛んになってきており,こうした動きは,現代医療における「治す医療」と「支える医療」の乖離によっても後押しされているように思える.しかし,人は死に至るまで「生きている」のであり,そうした「生」をどのように支えるのか,ということこそが医療やケアにとっての要ではなかろうか.
キーワード よい死,安楽死,延命治療,治す医療,支える医療
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論文名 老年精神医療と倫理
著者名 齋藤正彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):565-571,2022
抄録 2つの事例を通じて,今日,私たちの臨床を取り囲む倫理的な課題について考察した.医療内部では操作的診断と根拠に基づく医療(EBM),治療アルゴリズムに対する無批判な態度が,行政サービスでは,法制度を逆手にとった代行決定が,障害をもつ高齢者の支援に不可欠な倫理的プロセスに目をつぶる手段になっており,精神科医のなかには無意識にその要請に応えようとするものがあることを述べた.さらに,医療,福祉分野の倫理観の喪失は,医療,介護に経済効率ばかりを要求する新自由主義的な風潮に促されたものではないかという危惧を述べた.
キーワード 医療倫理,精神医療,自己決定,高齢者,認知症
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論文名 高齢者のコンサルテーション・リエゾン精神医療における臨床倫理;腎臓領域に焦点をあてて
著者名 西村勝治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):572-578,2022
抄録 医療技術の高度化,医療におけるインフォームド・コンセントの浸透などに伴い,近年,治療を受ける側の意思決定能力や意思決定プロセスに関して精神科医に意見を求められる機会が増えており,コンサルテーション・リエゾン(CL)精神医療に対する新たな要請となっている.本稿では高齢者に対するCL精神医療における臨床倫理の課題について,腎臓病領域,とくに維持血液透析の見合わせと生体腎ドナーに焦点をあてる.
キーワード コンサルテーション・リエゾン精神医療,高齢者医療,臨床倫理,維持血液透析見合わせ,生体腎ドナー
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論文名 認知症高齢者のエンドオブライフ・ケアと臨床倫理
著者名 平原佐斗司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):579-586,2022
抄録 先進国では,認知症は緩和ケア・エンドオブライフ・ケアの中心的課題となってきている.重度〜末期認知症の代弁者による意思決定においては,摂食嚥下障害の進行に伴う食支援や人工的水分・栄養摂取,さらには末期の肺炎の治療に関する意思決定が約半数を占めている.本稿では,重度〜末期認知症の身体的苦痛と緩和ケアの実際,それらの問題に伴う意思決定支援上の課題について解説する.
キーワード 認知症,緩和ケア,エンドオブライフ・ケア,摂食嚥下障害,終末期の肺炎
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論文名 精神医療における倫理的な問題を医学生に教える
著者名 大森一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(6):587-592,2022
抄録 福井大学で医学科3年生を対象に開講されている連続講義「医の原則」では,1コマの講義を使って,精神医療における倫理的問題,とくに,自律尊重原則やインフォームド・コンセントのあり方が議論になる「非自発的入院・治療」および「安楽死・医師の援助による自殺」の問題を扱っている.本稿では,講義の実際と学生とのやりとりを紹介し,精神医療における倫理的な問題を卒前教育で扱うことについて考察した.
キーワード 卒前教育,医療倫理,自律尊重原則,インフォームド・コンセント,人格主義生命倫理学
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