論文名 | レビー小体型認知症の前駆症状 |
著者名 | 岩田(遠藤)邦幸,藤城弘樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):419-428,2022 |
抄録 | 2020年にレビー小体型認知症(DLB)の前駆状態(prodromal DLB)の3つの臨床亜型が提示された.レム睡眠行動障害と嗅覚低下,便秘・起立性低血圧などの自律神経障害はDLBとパーキンソン病(PD)に共通する重要な前駆症状である.本稿では,その異同を含めて,prodromal DLB診断における注意点や治療介入の可能性について考察した. |
キーワード | レビー小体病,prodromal DLB,MCI-LB,delirium-onset DLB,psychiatric-onset DLB |
論文名 | レビー小体型認知症の精神症状 |
著者名 | 橋本 衛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):429-438,2022 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)では,幻覚や妄想,抑うつ,不安,睡眠障害など,さまざまな精神症状が病初期より高頻度にみられる.またDLBのなかには,認知機能障害が出現する何年も前に,抑うつや幻覚,妄想などの精神症状で発症する症例があり,これらはpsychiatric-onset DLBと呼ばれ,その病態や鑑別診断が注目されている.DLBの精神症状の治療は,他の認知症疾患と同様,非薬物療法が薬物療法よりも優先されるが,非薬物療法,薬物療法のいずれも十分なエビデンスはない.そのため精神症状の治療方針の立案は個々の医師の裁量にゆだねられているが,多彩な精神症状を認めるDLBでは,「幻視にはドネペジル」のような画一的な治療ではなく,患者ごとに治療の標的とすべき精神症状を見定め,非薬物療法と薬物療法を組み合わせて実施することが望まれる. |
キーワード | レビー小体型認知症,精神症状,prodromal DLB,非薬物療法,薬物療法 |
論文名 | レビー小体型認知症のパーキンソニズム |
著者名 | 志村秀樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):439-443,2022 |
抄録 | パーキンソニズムは,レビー小体型認知症(DLB)の臨床診断基準改訂版における中核的臨床特徴のひとつである.本診断基準では,パーキンソニズムについて,安静時振戦,筋固縮,運動緩慢(寡動)のうち1つでもあればよいと定義している.DLBでは,パーキンソン病(PD)に比べて姿勢反射障害と歩行障害等の体軸の症状が強い傾向がある.抗パーキンソン病薬に対する治療効果もPDに比べて乏しい. |
キーワード | パーキンソニズム,安静時振戦,筋固縮,運動緩慢 |
論文名 | レビー小体型認知症の自律神経症状 |
著者名 | 宮本 瞬,榊原隆次,澤井 摂 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):444-453,2022 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)の自律神経障害のなかで,最も頻度が高い症状である排尿・排便障害,および,やや頻度は低いがとても困る症状である失神について述べた.このうち.とくにイレウス,失神は,DLB患者の緊急受診の一因となることがある.高齢DLB患者の生活の質の改善と,イレウス,失神の予防のために,適切な治療が必要と思われる. |
キーワード | レビー小体型認知症,自律神経障害,排尿障害,排便障害,失神 |
論文名 | レビー小体型認知症における薬剤過敏性;真実と誤解 |
著者名 | 森 悦朗 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):454-461,2022 |
抄録 | 臨床診断基準で,重度の神経遮断薬に対する感受性が臨床特徴のひとつとして取り上げられたことから,レビー小体型認知症において「薬剤過敏性」が注目されるようになった.薬剤一般に「薬剤過敏性」があると誤解もされているが,それは正しくない.アレルギー性過敏反応や,非中枢性副作用に関して,脆弱であるという根拠はない.しかし,抗コリン作用を有する薬剤に対しては中枢性の薬理学的有害反応を示しやすく,感受性が高い.この総説では「薬剤過敏性」の真実と誤解について整理する. |
キーワード | dementia with Lewy bodies,drug sensitivity,neuroleptics,anticholinergic,donepezil |
論文名 | 1-year rule;DLB/PDD boundary issueをめぐって |
著者名 | 野川 茂 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):462-472,2022 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)と認知症を伴うパーキンソン病(PDD)の異同とその境界には議論があり,とくに研究面では両者は“1-year rule”で区別される.病理学的にはレビー小体蓄積が共通しているが,その進展様式と表現型が異なっており,DLB臨床診断基準(2017年改訂版)でも同ルールが踏襲された.今後,prodromal期からMIBG心筋シンチグラフィーなどのバイオマーカーを用いて検討することにより,合理的な診断基準が策定されることが望まれる. |
キーワード | レビー小体型認知症,パーキンソン病,認知症,診断基準,ドネペジル |
論文名 | Cingulate island sign |
著者名 | 石井一成 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):473-476,2022 |
抄録 | DLB Consortiumの臨床診断基準2017年改訂版において,レビー小体型認知症(DLB)診断基準の支持的バイオマーカー(supportive biomarker)として新たにcingulate island sign(CIS)が追加掲載された.CISは,中部ないし後部帯状回の代謝・血流が他の部位と比較して低下が弱いために島状に残ってみられる所見で,DLBに特徴的にみられることよりDLB診断においてその有用性が注目されている. |
キーワード | レビー小体型認知症,cingulate island sign,FDG-PET,脳血流SPECT,帯状回 |
論文名 | レビー小体型認知症の神経病理イメージング |
著者名 | 島田 斉,小野麻衣子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):477-484,2022 |
抄録 | レビー小体型認知症(DLB)においては,脳内にα-シヌクレインの異常凝集体がみられることが病理学的特徴であるが,しばしばアルツハイマー病(AD)でみられるアミロイドβ(Aβ)やタウタンパクの蓄積も認められる.近年,脳内異常蓄積タンパクの生体イメージング技術開発の進歩は著しく,Aβとタウタンパクについては,すでに実用的な可視化技術を用いた多くの知見が得られている.シヌクレインイメージングの実現にはさまざまな課題があるものの,着実に技術開発が進んでいる. |
キーワード | レビー小体型認知症,アミロイド,タウ,シヌクレイン,PET |
論文名 | レビー小体型認知症の体液バイオマーカー |
著者名 | 春日健作 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(5):485-494,2022 |
抄録 | レビー小体型認知症の約半数はアルツハイマー病理変化を伴っている.アルツハイマー病理変化を伴うことで認知機能予後および生命予後が悪化するため,生前にアルツハイマー病理変化の併存を検出することは重要である.脳脊髄液中のアミロイドβおよびリン酸化タウによりアルツハイマー病理変化の検出が可能であり,現在は侵襲性の低い血液バイオマーカーの開発が進められている.一方,レビー小体病理の検出には脳脊髄液中の異常凝集能を有するα-シヌクレインをとらえることにより可能となることが期待されている. |
キーワード | レビー小体型認知症,脳脊髄液,Aβ,リン酸化タウ,α-シヌクレイン |