老年精神医学雑誌 Vol.33-3
論文名 独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる社会環境の創出に向けて
著者名 粟田主一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):211-217,2022
抄録 独居認知症高齢者の数は着実に増加している.「認知症」であり「独居」であることは在宅生活中断のリスク因子である.生活支援の担い手となる同居家族がいないことが,地域生活の継続に必要な社会的支援の不充足(アンメット・ニーズ)の要因となっている.独居認知症高齢者等が安全・安心な暮らしを送れる社会環境を創るには,ケア・コーディネーションの機能を効果的に発揮できる地域システムを構築するとともに,生活支援のある社会環境を創り出す活動が不可欠である.
キーワード 認知症,独居,社会的支援,ケア・コーディネーション,社会環境
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論文名 一人暮らし在宅認知症高齢者の2年後の転帰,在宅継続率およびケアの場の移行状況
著者名 川越雅弘,南 拓磨
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):218-223,2022
抄録 一人暮らしの在宅認知症高齢者の「2年後の転帰」「在宅継続率」「ケアの場の移行状況」の実態把握を目的に,A市の世帯・認定・給付データを分析した.その結果,@2年後の死亡率は約4割である,A継続認定者の2年後の在宅継続率は約8割で,その割合は要介護4で最も低い,B要支援1では「特定施設」「認知症グループホーム(GH)」,要支援2では「特定施設」,要介護1では「GH」,要介護2では「介護老人保健施設(老健)」,要介護3以上では「介護老人福祉施設(特養)」に移行する割合が高いことなどがわかった.
キーワード 一人暮らし,認知症高齢者,在宅継続率,ケアの場,移行
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者本人の経験と在宅での生活継続が困難になる要因
著者名 堀田聰子,大村綾香,津田修治,大森千尋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):224-229,2022
抄録 文献レビューから,独居認知症高齢者の非独居群と比較した特徴,本人による診断や日常生活の変化の受け止めや対処を概観したうえ,独居認知症高齢者の在宅での生活継続をむずかしくさせる要因をみたところ,社会関係/生命安全確保/健康管理/日常生活/お金/インフォーマル・ケア/本人の支援受け入れ/尊厳の維持の困難にまとめられた.これらの困難の低減と本人の経験や工夫の共有に焦点をあてた支援の充実や地域システムの構築・検証が期待される.
キーワード 独居,認知症,高齢者,在宅限界点,内的世界
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の健康問題と支援ニーズ
著者名 津田修治
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):230-234,2022
抄録 認知症高齢者が一人暮らしをすることの影響は,身体的健康には現れにくいが,孤独感や向精神薬の服用など精神的健康の低下として表出する.本人たちは,自分のおかれた状況を自覚して,日常的に工夫して健康維持に努める.しかし,生活をともにして本人を支える家族が不在のため,支援は不足しやすい.彼らが健康的で自立した生活を送るためには,身体的健康や生活の支援に加えて,精神的健康や社会交流にも目を向けた支援が必要である.
キーワード 一人暮らし,認知症,精神的健康,孤独感,支援ニーズ
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者のケアマネジメント
著者名 石山麗子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):235-241,2022
抄録 一人暮らしの認知症の人のケアマネジメントでは,ケアマネジャーに集約される情報を現在と,症状の進行した将来の適切なタイミングでケアチームに共有可能とする情報管理は欠かせない.また,認知症の一人暮らしでは,家族等の関与が意思決定に影響するため,身寄りなし,家族ありを確認し,後者では本人と家族の揺れ動く関係性をつぶさにとらえて調和を図り,結果として一人暮らしの認知症の人の望む生活が実現されるよう支援する.
キーワード 認知症,一人暮らし,家族支援,ケアマネジジメント,情報管理
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の在宅医療
著者名 瀬義昌
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):242-246,2022
抄録 認知症とともに一人で暮らす高齢者の在宅医療は,身体疾患の治療とケアに加え,認知機能に応じた生活機能の維持の支援および認知症の行動・心理症状(BPSD)のコントロールが中心となる.また,できる限り安定的な療養空間を創出するため,チームでの治療とケアとトラブル回避のための予防的対応が重要である.ここでは,在宅医療が担うべき役割と独居認知症特有の問題の解決方法と体制づくりについて論じる.
キーワード 在宅医療,認知症,地域包括ケア,合意形成
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の訪問看護
著者名 秋山正子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):247-250,2022
抄録 入院を機に施設入所を勧められた認知症独居高齢者に対して,インスリン注射が必要なため入所ができず,在宅生活の組み立てが必要になった.インスリン注射のために訪問看護がはいると介護保険限度額が足りないために訪問介護員による通院介助によって実現.看護は生活全般にわたる健康管理,救急対応,主治医との連携,服薬管理,他職種との連携調整などを行うことで,7年間の在宅生活の維持ができた.実践事例として経過を呈示した.
キーワード 訪問看護,認知症独居高齢者,糖尿病管理,認知症行方不明,在宅療養
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の服薬管理支援
著者名 川名三知代
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):251-256,2022
抄録 独居高齢者の服薬管理支援においては,認知機能の低下に早く気づき,生活背景を確認し,必要な介護サービスに結びつけ,多職種で連携して服薬管理を支援することが,基礎疾患の悪化を防ぐ意味でも重要である.本稿では,@地域の保険薬局が認知症早期発見の場になりうることと,A多職種連携による服薬管理支援では医師の処方がケアプラン上実現可能かをすり合わせて考えることの重要性を述べ,薬剤師の役割を具体的に提示する.
キーワード 薬剤師,独居高齢者,認知症,在宅医療,薬局
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の金銭管理と権利擁護支援
著者名 森 純一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):257-262,2022
抄録 認知症とともに一人で暮らす高齢者の地域生活における課題が顕在化するきっかけに,家賃の滞納などの金銭管理支援のニーズがある.そのニーズを支援の入口として,福祉サービスの利用援助を基本に自らできることを活かした権利擁護支援のアプローチのひとつが日常生活自立支援事業である.人とのかかわりを通じて生活基盤を取り戻す同事業の視点は,「共生」と「予防」を両輪に認知症とともに生きることを支援する取組みとなっている.
キーワード 日常生活自立支援事業,共生,予防,福祉サービス利用援助,意思決定支援
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の生活を支える地域拠点;リアルワールドエビデンスのまとめ
著者名 岡村 毅
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):263-269,2022
抄録 われわれは東京都板橋区高島平において,認知症があっても安心して暮らせる社会(dementia-friendly communities ; DFCs)の創出に向けたコミュニティ参加型研究(community-based participatory research ; CBPR)を行っている.大規模団地の中央に拠点をつくり,専門職が常駐した.本稿では,これまでに得られたエビデンスをまとめ,若干の考察を加えた.認知症とともに一人で暮らす高齢者の生活を支える地域拠点のスタッフは責任をもって地域にかかわりつつ,高齢者本人にとっては医療よりも生活のほうが大事という大原則に立ち,細くても長くつながり続けることが重要であろう.
キーワード 高齢者,独居,認知症,CBPR,地域
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者のエンドオブライフと意思決定支援
著者名 井藤佳恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):270-275,2022
抄録 意思決定支援とは,本人が意思決定を行う権利を行使することの支援である.意思決定を行う権利が守られることが人にとって大切なのは,選択し,意思決定に参加する権利が尊重され,かつ決定が尊重されるという自己決定の中核的要素が,quality of lifeとwell-beingの中核的要素であるからである.よって意思決定は,それを行う機会が保障されるだけでなく,その意思決定が本人にとって意味あるものでなければならない.独居認知症高齢者の意思決定権の重大な侵害は,おそらく自立の喪失と関連して起こる.なぜなら,自立が損なわれていない状況では,本人が望まない他者が意思決定に強く関わることは想定されないからである.「意思決定支援者という他者」が意思決定に関わる意思決定支援は,本人の意思決定を制限するリスクを抱えている.意思決定のプロセスが本人にとって意味あるものであるために,意思決定支援者はどう関わることができるだろうか.
キーワード 認知症高齢者,独居,身寄りなし,意思決定,エンドオブライフ
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論文名 認知症の独居高齢者の家族支援を考える
著者名 涌井智子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):276-281,2022
抄録 今後ますます増加が懸念される認知症の独居高齢者の生活をいかに支えるかはわが国の喫緊の課題である.介護保険制度が導入され,手段的介護が介護保険サービスとして肩代わりされるようになった今も,要介護高齢者の家族が担う役割は多岐にわたる.在宅での生活支援に加え,見守り,介護・医療サービス利用のための代弁・選択や決定の補助・調整などが含まれ,認知症の高齢者の場合には代理意思決定者としての役割を担う.本稿では,認知症の独居高齢者の家族を改めて定義し,課題を整理したうえで,事例をもとに家族支援の可能性について考察した.
キーワード 認知症,独居,家族,支援,介護者
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論文名 独居認知症高齢者の行方不明の実態とその対策
著者名 菊地和則
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):282-287,2022
抄録 今後,わが国では独居認知症高齢者の増加に伴い,行方不明も増加すると見込まれる.しかし,認知症による行方不明については国内外を問わず系統的な研究が行われていない.とくに独居の行方不明については,ほとんど先行研究がない.本稿では,限られた知見のなかから独居認知症高齢者の行方不明の実態と自治体が行うべき対策について述べた.
キーワード 認知症,行方不明,独居,対策
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論文名 認知症とともに一人で暮らす高齢者の防災対策に向けて
著者名 田中昌樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):288-296,2022
抄録 近年の災害において,被害者(死者・行方不明者)の多くを高齢者が占めることが課題となっており,災害対策基本法の改正などによって災害時に支援を要する者の名簿作成や個別の避難計画の作成など対策の整備が行われてきた.本稿では,独居の認知症高齢者を念頭に,地域特性を把握する手法や災害対策で求められる内容を解説する.災害への取組みを契機として,多様な主体が協力して,地域共生社会の実現につながることに期待したい.
キーワード 独居,認知症,高齢者,災害,地域コミュニティ,地域特性,共生,分譲マンション,住居形態
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論文名 安心して認知症になれる社会環境を当事者とともに創り出す;認知症未来共創ハブのチャレンジ
著者名 堀田聰子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,33(3):297-302,2022
抄録 当事者の思い・体験と知恵を中心に,認知症のある方,家族や支援者,地域住民,医療介護福祉関係者,企業,自治体,関係省庁および関係機関,研究者らが協働し,「認知症とともによりよく生きる未来」をともに創り出すことを目指す認知症未来共創ハブの取組みについて,認知症のある当事者インタビュー(当事者参加型パネル)を中心に,安心して認知症になれる社会環境を当事者とともに模索する活動を概観した.
キーワード 共生,当事者,認知症未来共創ハブ,認知症当事者ナレッジライブラリー,認知症世界の歩き方
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