論文名 | 高齢者のコンサルテーション・リエゾン精神医学の近年の動向 |
著者名 | 忽滑谷和孝,常泉百合 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):5-10,2022 |
抄録 | 近年,総合病院では高齢者の入院治療が増え,それに伴い,外科的治療の増加,意思決定支援の重要性への関心の高まり,退院後のケアの観点から多職種協働でのチーム医療が求められ,精神科専門医のプログラムに精神科コンサルテーション(CLP)の研修が必須となった.本稿では,高齢者によくみられるせん妄,認知症,うつ病と自殺についての最近のトピックを取り上げた.新型コロナウイルス禍で新たに加わったCLPの役割を見据えた研究,活動が発展し,多くの精神科医にこの領域に興味をもっていただくことを願う. |
キーワード | コンサルテーション・リエゾン精神医学,高齢者,意思決定,新型コロナウイルス感染,近年の動向 |
論文名 | 緩和ケアにおける精神科の役割 |
著者名 | 小川朝生 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):11-17,2022 |
抄録 | がん医療を中心に,緩和ケアは治療のより早期から治療と並行して提供することが認識されるようになってきた.海外での早期緩和ケアの動きに加え,わが国では,施策として「診断時からの緩和ケア」が盛り込まれ,疾病への適応支援を意図した活動が求められている.加えて近年では,緩和ケアをがん以外の疾病へも適応する動きがあり,高齢者のエンドオブライフ・ケアと重なりつつある.緩和ケアの資源をいかに地域で効果的に利用するか,地域での話し合いが望まれる. |
キーワード | 緩和ケア,コンサルテーション・リエゾン精神医学,がん,エンドオブライフ・ケア,アドバンス・ケア・プランニング |
論文名 | せん妄への対応 |
著者名 | 八田耕太郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):18-24,2022 |
抄録 | せん妄の診断において重要な点は,高齢者の不穏がすべて「せん妄」ではないことである.とくに,認知症患者が入院する場合の極度の不安からの興奮,すなわち認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)との鑑別は,介入方法が異なるため注意深くする必要がある.非薬物的介入は,DELTAプログラムに代表されるようにすでに実装されている.一方,薬物的介入では,せん妄状態の治療には抗精神病薬,予防にはメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬が鍵となる. |
キーワード | せん妄,DELTAプログラム,抗精神病薬,メラトニン受容体作動薬,オレキシン受容体拮抗薬 |
論文名 | 身体疾患に伴う不眠 |
著者名 | 角谷 寛 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):25-28,2022 |
抄録 | 高齢者では不眠の訴えが多いが,その主要な原因には,年齢に伴う睡眠の変化,高齢者の過剰に長い床上時間,抑うつなどの精神的問題がある.これらが除外された場合に,初めて身体疾患に伴う不眠を疑う必要がある.不眠をきたす身体疾患は多岐にわたるので,不眠をきたす身体疾患について概説する. |
キーワード | 高齢者,不眠症,身体疾患,認知行動療法,抑うつ |
論文名 | 多様化するうつ状態の背景 |
著者名 | 下田健吾,木村真人 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):29-37,2022 |
抄録 | 身体疾患に伴う高齢者は,うつ状態を呈しやすく,精神科コンサルテーション・リエゾン(CLP)サービスでせん妄の次に相談件数が多い.その病態をとらえるためには,うつ病のみならず身体疾患に対する知識のアップデートが必要である.入院患者では,「生物学的要因」「器質的要因」「心理的要因」に加えて,「複数の併存疾患」「多剤使用」「認知機能低下」「社会経済学的な問題」「生存年齢」や「実存的生き方」が関与する.患者の全人的苦痛を理解し,そのなかの精神的問題のリーダシップとしてCLPが機能する必要がある. |
キーワード | 身体疾患に伴ううつ,高齢者うつ病,コンサルテーション・リエゾン精神医学,危険因子,治療 |
論文名 | コンサルテーション・リエゾンにおける不安の質的水準の吟味;「人間性の事実」の揺らぎのなかで |
著者名 | 川上正憲 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):38-44,2022 |
抄録 | 人類がこれまでに経験したことのない超高齢社会を迎えるわが国日本において,「人間性の事実」の揺らぎがあるのではないかと問題提起を行った.森田療法においては,患者の「不安」を自然な感情とみなし,生きようとする欲求がある限り,だれもが免れることのできない「人間性の事実」だと理解する.ここでの「人間性の事実」とは,有限な生を生きる人間存在にとって,死の恐怖(不安)が絶対的に免れうることのできない事実として現前する限りにおいての謂いであった.この文脈においては,「なにを人間にとっての有限と位置づけるか」という問題点が浮かび上がる.つまりは,生老病死から不老不死への近似現象が認められるなかで,不安の質的水準の吟味の必要性を論じた. |
キーワード | 森田療法,人間性の事実の揺らぎ,不安,生老病死,不老不死 |
論文名 | 救命救急センターにおける高齢者の自殺企図者への対応 |
著者名 | 新井久稔,上條吉人,松尾幸治 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):45-52,2022 |
抄録 | 救命救急センターには,自殺企図のために搬送される患者が多く,高齢者における自殺企図の臨床的特徴を検討した.高齢者は,縊首による自殺企図が多く,気分障害を中心として複雑な精神症状を呈することもあり,精神疾患の診断は慎重に行う必要がある.今後高齢化率が増加していくに伴い,救命救急センターにおける自殺企図患者を中心とする高齢の精神疾患患者に対しての対応はさらに重要となってくる. |
キーワード | 高齢者,救命救急センター,自殺,気分障害,認知症 |
論文名 | 高齢者のリエゾン;高齢者の自殺企図への対応 |
著者名 | 野呂孝徳,石井貴男,河西千秋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):53-58,2022 |
抄録 | わが国では,少子高齢化が進展しており,それに付随して通常の外来・入院はもちろん,救急搬送においても高齢患者が増加し,精神科コンサルテーション・リエゾンにおける高齢者への対応も増加している.わが国の自殺者に占める60歳以上の割合は,40%近くにも上るが,高齢者には,特有のメンタルヘルス上の課題があり,それが自殺リスクにつながっている.最近,アサーティヴ・ケース・マネージメントが,自殺未遂者の自殺再企図,自傷行為の抑止に有効であることから診療報酬化がなされたが,筆者らは,積極的にこの介入プログラムを高齢自殺企図者に導入し,一定の成果を認めている. |
キーワード | 自殺企図,高齢者,コンサルテーション・リエゾン,アサーティヴ・ケース・マネージメント介入 |
論文名 | コンサルテーション・リエゾンにおける公認心理師の役割 |
著者名 | 花村温子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):59-63,2022 |
抄録 | 2015(平成27)年9月に「公認心理師法」が成立し,心理職の国家資格が誕生した.公認心理師は個別に患者に対して心理検査や心理カウンセリングを行っているイメージが強いと思われるが,チーム医療において精神科医とともに患者の精神的支援に当たることが期待されており,病棟入院中の身体疾患患者のところへも赴き,心理検査などを用いたアセスメント,心理面接などを用いて,さまざまなチームのメンバーとして活動している.とくに高齢患者の支援では,そのライフステージに沿った支援,多職種・多機関での支援が重要になるが,そのなかで今この方に必要な支援はなにか,そのなかで公認心理師ができることはなにかを見極めてかかわっていくことが必要と考えられる. |
キーワード | 公認心理師,コンサルテーション・リエゾン,総合病院,国家資格,チーム医療 |
論文名 | 意思決定支援のあり方について;精神医学的立場から |
著者名 | 井藤佳恵 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,33(1):64-70,2022 |
抄録 | 本稿で念頭においているのは,慢性期の統合失調症患者が重篤な身体合併症を抱えた場合の意思決定の課題である.精神疾患をもつ者の医療上の意思決定においては,意思決定能力が常に問題になり,本人が表示する意思をどのように取り扱うのかということが課題となる.意思決定とはなにか,意思決定権とはなにか,意思決定能力とはなにか,それは,だれがどのように評価することが可能なのか.臨床の場では,そういった議論を飛ばして,必要に迫られた医師が比較的簡単に,ある/なしの二分法で患者の意思決定能力を判断していることが多い.本稿では,そのように「意思決定能力がない」と判断された患者の,法的には効力がない意思がもつ意味について,そして「意思決定能力がない」患者の意思決定のプロセスに関わることの意味について,進行がんを診断された統合失調症残遺状態の患者の症例を通じて考察する. |
キーワード | 統合失調症,身体合併症医療,意思決定,意思決定能力,インフォームド・コンセント |