老年精神医学雑誌 Vol.32-8
論文名 兵庫県の現状と県全体の新型コロナウイルス対策と高齢者への対策
著者名 山下輝夫
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):813-821,2021
抄録 世界に誇れる国民皆保険制度を土台とし,優れた医療提供体制が確立された世界有数の長寿国であるとの慢心のもとに日本では,感染症に対する危機感が薄れていた.感染症パンデミックへの備えは決して十分とはいえず,新型コロナウイルス感染症の拡大のなか,キープレーヤーである保健所は,規模の縮小などから脆弱化しており,危機的な機能不全に陥った.さらに入院病床数が多すぎるとの批判もある日本において,空床があるのに入院できない患者で溢れかえるという異常な状況は,医療提供体制というより健康危機管理の問題である.未知のウイルスとの闘いは,ワクチンの登場で,ようやく終息への一条の光がみえてきた.今こそ,地方自治体が行うべき役割の整理と官民学の三位一体となった国家レベルでの健康危機管理体制の確立が必要である.
キーワード 新型コロナウイルス感染症,医療提供体制,健康危機管理
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論文名 兵庫県精神科病院協会における新型コロナウイルス対策について;精神科病院のコロナ禍における現況と対策について
著者名 宮軒 将
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):822-828,2021
抄録 精神科病院は,人員配置や治療,療養環境から感染制御上不利な側面が多く,いったん感染者が出るとクラスター発生に至りやすい.いったんクラスター化すると,その解消に物質的,人的に大きな資源投入を必要とし,また病院を利用する患者・家族はもとより勤務する職員に心理的な面を含めさまざまな負担を強いることになる.最近は自院でPCR検査ができるなど,検査体制は充実してきているが,院内感染を予防するうえで最も大切なことは検査体制ではなく,院内感染の原因の多くが職員と新規入院患者の持ち込みであることを考えると,「個々の職員が基本的な感染防御について理解し,それを日々怠らず実践できるか」「検査を過信せず,入院後の患者観察と適切な治療環境を提供すること」が最も重要であると思われる.
キーワード 精神科病院,感染への脆弱性,クラスター,PCR検査,ワクチン接種
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論文名 新型コロナウイルス感染症病棟を有する総合病院精神神経科の診療現場におけるコロナ禍の影響と対策;職員へのアンケート調査からみえてきたもの
著者名 松石邦隆,福島春子,大谷恭平,宮井宏之,鶴谷 茂,川村修司,高橋年道,桑田美子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):829-836,2021
抄録 ・当院では,新型コロナウイルス感染症患者を受け入れるに際して大規模な院内感染が生じた.
・精神科リエゾンチームと総務課で協力して職員に対するアンケート調査を実施し,同時にメンタルヘルスケアとして情報提供や相談窓口の設置など,複数の取組みを行った.
・当初,職員は,感染への不安や情報不足にさいなまれていた.感染対策とともに職員の孤立感を減じるためにも,いち早く院内の隅々まで情報を行き渡らせることが重要であると考えられた.
キーワード 新型コロナウイルス感染症,医療従事者,メンタルヘルス,職員支援,院内感染
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論文名 COVID-19・パンデミックのもの忘れ外来への影響
著者名 小田陽彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):837-842,2021
抄録 精神科単科病院の認知症疾患医療センターのもの忘れ外来にCOVID-19・パンデミックが及ぼした影響について記した.最初にパンデミック発生前の当院の状況を解説し,次いでパンデミック発生後に状況がどのくらい変化したかを述べた.パンデミック発生後に外出の機会が激減し認知症症状が顕在化した症例と,パンデミック発生後もパチンコ通いを続け結果として認知症症状があまり悪化しなかった症例をそれぞれ呈示した.
キーワード COVID-19,新型コロナウイルス,認知症,もの忘れ外来,精神科単科病院
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論文名 新型コロナウイルス感染拡大の影響が比較的少ない地域の認知症疾患医療センターの診療現場におけるコロナ禍の影響と対策
著者名 大川愼吾
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):843-849,2021
抄録 当院は精神科病院の認知症疾患医療センターである.コロナ禍で院内感染防止のためには職員や外来者に対する感染対策の徹底が最も重要である.当院では,幸い新型コロナウイルス感染症の発生はなく,感染対策を講じて診療を継続している.その一方で,感染対策は診療の妨げになり,患者や職員の負担を増加させている.コロナ禍の長期化で高齢者では認知症の発症や重症化のリスクが高まっており,感染対策と認知症対策を両立させる必要がある.当院では,認知症予防に向けて精神科デイケアと精神科訪問看護の利用促進を図りたい.
キーワード 新型コロナウイルス感染症,精神科病院,認知症疾患医療センター,感染対策,認知症予防
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論文名 新型コロナウイルス感染拡大が続いている地域の認知症外来の診療現場におけるコロナ禍の影響と対策
著者名 若栄徳彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):850-855,2021
抄録 兵庫県神戸市は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について2回にわたる緊急事態宣言の対象となった.感染拡大が続いた同市の診療所の認知症専門外来におけるコロナ禍の影響と対策について,第1回緊急事態宣言の2020年4月から第2回緊急事態宣言の2021年3月までの認知症受診者60人について調査した.実行可能な範囲で感染拡大防止対策に取り組み,高齢認知症患者のCOVID-19関連死はみられなかった.
キーワード COVID-19,認知症,シルバー外来
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論文名 新型コロナウイルス感染症流行下における神戸市の認知症施策;認知症神戸モデルの現状と課題
著者名 長谷川典子,前田 潔
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):856-863,2021
抄録 兵庫県神戸市では,2018年に「神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例」を施行し,2019年には「認知症神戸モデル」(認知症診断助成制度と認知症事故救済制度)を創設した.あわせて,国の制度である認知症初期集中支援チームと認知症疾患医療センターの機能を充実させ,認知機能の低下が気になる状態から認知症の診断後支援まで切れ目のない施策を展開している.本稿では,平時に制度設計した認知症神戸モデルのコロナ禍における現状と課題を紹介した.
キーワード 認知症,軽度認知障害,認知機能検診,診断助成制度,事故救済制度
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論文名 COVID-19感染対策の面会制限下の特別養護老人ホームにおける認知症高齢者とその家族の課題と支援
著者名 淡路深雪, 角本貴子, 九津見雅美, 森村安史
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(8):864-869,2021
抄録 特別養護老人ホーム入所者に対してCOVID-19感染対策として,外出制限や家族との面会制限,施設内でのボランティアなどによる催しの中止等が挙げられる.本稿では,認知症高齢者への家族との面会制限によって生じたと思われる課題とそれに対する支援について事例をもとに呈示した.
キーワード 特別養護老人ホーム,面会制限,認知症高齢者
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