老年精神医学雑誌 Vol.32-7
論文名 パーキンソン病における認知機能障害
著者名 馬場 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):701-709,2021
抄録 パーキンソン病(PD)において認知機能障害は一般的な症状であり,最終的には大部分のPD患者が認知症を発症すると考えられている.PDの認知機能障害ではコリン神経系の障害が中核的役割を果たしており,コリン神経系の神経核であるマイネルト基底核の体積測定によりPDの進行度評価や認知機能予後の予測が可能となってきた.PDに伴う認知症の治療でもコリンエステラーゼ阻害薬が重要な役割を果たすものと期待されている.
キーワード PD-MCI,PDD,マイネルト基底核,voxel-based morphometry,コリンエステラーゼ阻害薬
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論文名 パーキンソン病の幻視;その病態と治療
著者名 栗田 正
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):710-715,2021
抄録 @パーキンソン病(PD)の幻視はリアルな内容が主体で,PD発症後10年間に複合幻覚の様相を呈する.
APD治療薬は幻視を誘発・助長するが,それ自体は原因ではない.
BPDの幻視は,脳内における内的画像の形成異常ととらえられ,視覚情報処理回路における複合的な障害と,回路内の部分的な過剰興奮が原因と考えられる.
C幻視の治療は,日本神経学会の『パーキンソン病診療ガイドライン2018』に従い,PD治療薬を順次中止する.また,本邦保険適応外であるが,コリンエステラーゼ阻害薬,非定型・定型抗精神病薬の使用を検討する.
キーワード visual hallucinations,visual information processing,inner image,cholinesterase inhibitor,atypical antipsychotic
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論文名 パーキンソン病の気分障害
著者名 永山 寛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):716-727,2021
抄録 パーキンソン病(PD)には多彩な非運動症状もみられ,うつは約20%に認められる.PDのうつは,興味,喜びの減退を特徴とし,高度な不安を伴いやすく,従来からアパシー/アンヘドニアといわれる語に相当する.その他,うつ(抑うつ気分)を主とするうつも認められ,それぞれPDの病態と関連した異なるメカニズムにより発症しうることが指摘されている.そのため,まずPD自体の治療を行うことで,それらの改善も期待できる.本稿では,PDのうつの評価方法,抗うつ薬も含めた治療の展望も含めて概説した.
キーワード パーキンソン病,うつ,アパシー,アンヘドニア
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論文名 パーキンソン病における衝動制御障害
著者名 藤本健一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):728-734,2021
抄録 パーキンソン病の患者は,心配性で取り越し苦労をするような性格のことが多い.なにに対しても慎重で,衝動制御障害とは対極の行動を選択する.ところが,治療を開始すると性格が180度変わり,衝動制御障害など脱抑制的な行動障害が出現することがある.薬剤ではドパミン作動薬により誘発されることが多い.視床下核の脳深部刺激でも誘発されることがある.衝動制御障害のために社会生活が破綻することもまれではないので,これらのリスクを勘案して治療に当たる必要がある.
キーワード 病的賭博,買い物依存症,性行動亢進,過食症,ドパミン調節異常症候群,反復常同行動
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論文名 パーキンソン病治療薬と精神症状
著者名 石垣泰則
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):735-742,2021
抄録 パーキンソン病の治療経過が長期に及ぶと,幻覚や妄想などの精神症状にしばしば遭遇する.これらは,患者の素因に加えパーキンソン病治療薬の影響で出現し,薬剤の選択や投与量の調節で解決することもある.しかし,自殺念慮や暴力行為などを有する場合には,精神科医と連携して治療に当たることが必要となる.精神症状が治療薬により引き起こされる事実について,家族や社会に対して啓発し,療養環境を整備することが重要である.
キーワード パーキンソン病治療薬,副作用,精神症状,幻視,医療連携
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論文名 パーキンソン病の痛み
著者名 関 守信
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):743-750,2021
抄録 ・痛みはパーキンソン病(PD)患者で病初期から高頻度に認められる症状だが,客観的に評価することのむずかしさなどの理由でしばしば過小評価されてしまっている.
・病因に基づくFordの分類が臨床上有用である.
・痛みの評価にはKing’s Parkinson’s Disease Pain Scale(KPPS)の使用が推奨されている.
・中枢性疼痛の発症にはドパミンが関与しており,PD患者では痛みの閾値が低下していることも示されている.
・抗パーキンソン病薬の効果が切れたオフ時に増悪することが多く,日内変動の有無をしっかりと把握することが治療のうえで重要である.
キーワード パーキンソン病, 痛み, non-motor fluctuation, Fordの分類,King’s Parkinson’s Disease Pain Scale (KPPS)
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論文名 パーキンソン病の睡眠覚醒障害
著者名 宮本智之,沼畑恭子,赤岩靖久
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):751-756,2021
抄録 パーキンソン病(PD)の非運動症状としての睡眠覚醒障害には,日中過眠,突発性睡眠などの覚醒障害,入眠障害や中途覚醒といった不眠症状のほかに,下肢静止不能症候群,レム睡眠行動異常症,睡眠関連呼吸障害などの睡眠関連疾患が挙げられる.本稿ではPDの代表的な睡眠覚醒障害について,近年,PDの種々の睡眠関連症状に焦点をあてて開発されたParkinson’s Disease Sleep Scale (PDSS) 評価尺度を紹介しながら解説した.
キーワード パーキンソン病,睡眠覚醒障害,PDSS,不眠症,レム睡眠行動異常症
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論文名 パーキンソン病の嗅覚障害
著者名 飯嶋 睦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):757-761,2021
抄録 パーキンソン病(PD)の非運動症状である嗅覚障害,レム睡眠行動障害,便秘などは,運動症状が発症する以前の前駆期(prodromal phase)から出現することから,PD診断におけるクリニカルマーカーとして注目されている.PD患者の嗅覚障害の評価は,患者が嗅覚障害を自覚していない場合があり,主観的評価のみの判定はむずかしい.本邦では,日本人向きに開発された嗅覚同定検査が用いられている.PDの嗅覚障害は,嗅覚閾値,嗅覚同定機能の両者ともに低下するが,何のにおいかわからない,また,まちがったにおいを同定してしまうなどの嗅覚同定障害がより特徴的である.PDにおいて嗅覚障害は,患者による程度が異なるが,全経過で90%に認める.発症早期から重度の嗅覚障害を認める患者では,認知症発症が予測される.
キーワード パーキンソン病,嗅覚障害,早期診断,認知症予測,レム睡眠行動障害
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論文名 パーキンソン病の自律神経障害
著者名 朝比奈正人
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):762-767,2021
抄録 パーキンソン病の主症状は,中脳黒質の神経変性による運動症状のパーキンソニズムである.一方,近年,末梢自律神経病変が中脳黒質病変に先行することが明らかになり,非運動症状に関心がもたれるようになった.患者のQoLを低下させる非運動症状は,運動症状以上に日常診療で治療に苦慮することが少なくない.本稿では,非運動症状のうち,起立性低血圧や臥位高血圧などの血圧調節障害と発汗異常の病態,診断,治療について解説した.
キーワード パーキンソン病,自律神経不全,血圧,発汗
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論文名 パーキンソン病の便秘・下部尿路機能障害
著者名 内山智之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(7):768-776,2021
抄録 便秘と下部尿路症状はともにパーキンソン病で高率にみられる.また,初期または発症前にみられることもある.便秘は,排便回数の減少や排便困難をきたし,硬便であることが多い.下部尿路症状は,頻尿や尿意切迫感といった蓄尿症状が主体だが,排尿開始遅延や尿勢低下などの排尿症状も同時にきたしていることが多い.これらはQOLの低下だけでなく,抑うつ・不安,転倒,睡眠障害などの原因となるため,積極的な介入が必要である.
キーワード 便秘,下部尿路機能障害,神経因性膀胱,排尿筋過活動,排尿筋低活動
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