論文名 | <T.総論:「性の多様性」はいかに尊重されるべきか> セクシュアル・マイノリティ概論 |
著者名 | 河野禎之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):505-511,2021 |
抄録 | 近年,「LGBT」という言葉が広く認知されているように,セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)に関する社会的関心が高まっている.しかし,高齢期の医療・福祉・介護等に携わる多くの専門職の理解は,世間一般と同様に十分とは言い難い.そこで概論である本稿では,近年の国内の社会的な動きとともに,最低限知っておくべき概念や用語を整理することで,セクシュアル・マイノリティに関する本質を理解するための導入とする. |
キーワード | LGBT,セクシュアリティ,性的指向,性自認,セクシュアル・マイノリティ |
論文名 | <T.総論:「性の多様性」はいかに尊重されるべきか> 対策が法制上の義務となった性的指向・性自認に関するハラスメント |
著者名 | 神谷悠一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):512-517,2021 |
抄録 | 本稿は,性的指向・性自認に関するハラスメントについて,職場や医療,福祉の現場の事例を踏まえて検討するものである.また,ハラスメントがメンタルヘルスに及ぼす影響についても検討する.事例を検討したうえで,改正労働施策総合推進法が定めるパワーハラスメント対策,この対策に含まれるSOGIハラ(アウティングを含む)対策について,事業主に課せられている義務を検討する.その際,労働者間のハラスメント対策に準ずる外部との間のハラスメント対応ついて,医療,福祉の現場の事例を踏まえながら検討する. |
キーワード | ハラスメント,性的マイノリティ,SOGI,セクシュアリティ,政策 |
論文名 | <T.総論:「性の多様性」はいかに尊重されるべきか> 高齢トランスジェンダーのメンタルヘルスをめぐって |
著者名 | 三橋順子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):518-524,2021 |
抄録 | 2022年1月1日のICD-11の発効による性別移行の脱精神疾患化の意義,それに伴う性別移行の法システムの整備の必要性を解説し,そのうえでメンタルヘルスを中心に高齢トランスジェンダーをめぐる諸問題,具体的には存在の無化,行き場のなさ,アイデンティティとの相克などについて述べた.また,高齢同性愛者の問題にもふれた.多様性をもつ性的マイノリティを,性的マジョリティと同様に福祉・介護制度に包摂していく必要性を指摘した. |
キーワード | ICD-11,性別移行法,メンタルヘルス,高齢トランスジェンダー,高齢同性愛者 |
論文名 | <U.各論> 高齢の性的少数者の実際と対応の留意点 |
著者名 | 針間克己,石丸径一郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):525-529,2021 |
抄録 | 近年,日本でもLGBTという言葉が広く知られるようになり,性の多様性を尊重することへの認識が高まっている.しかし,高齢の性的少数者の現状はあまり知られていない.筆者らの臨床統計では,性同一性障害で受診した者は,中高年では,結婚歴がある者や子どもがいる者が青年より多くみられた.高齢の性的少数者の生活歴や家族歴は多様である.尊重と敬意をもって高齢の性的少数者に対応することが望まれる. |
キーワード | LGBT,性別違和,同性愛,性的少数者,メンタルヘルス |
論文名 | <U.各論> 性的マイノリティ高齢者の課題と自殺対策 |
著者名 | 藤田幸司,松永博子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):530-537,2021 |
抄録 | 性的マイノリティの高齢者は,高齢化の進行に伴い着実に増加しており,介護や医療,福祉の現場だけでなく,地域で取り組むべき課題でもある.無理解,偏見や差別などの影響によるマイノリティ特有のストレスは,身体的・精神的な健康状態を悪化させ,さまざまな生きづらさをもたらしている.また,性的マイノリティ高齢者は必要な支援につながりにくく,孤立・孤独に陥りやすい.本稿では,自殺対策の観点から,性的マイノリティ高齢者の現状および課題,支援について検討した. |
キーワード | 性的マイノリティ,自殺対策,高齢者,ストレス,社会的孤立 |
論文名 | <U.各論> 介護・地域支援における性的マイノリティ高齢者への対応の現状と課題 |
著者名 | 佐々木宰 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):538-544,2021 |
抄録 | 介護サービスや地域支援における性的マイノリティ高齢者への対応に関する先行研究や近年の取組みを整理し,今後の課題を考察した.介護サービスでは当事者がストレスを感じたり,不適切な対応を受けてきた可能性があるほか,地域では当事者が相談機関等へのアクセスを躊躇しやすく,生活の急変時に支援機関が苦慮することもある.多様な性・生を生きる人々が安心してサービスや資源を受けられるよう,専門職側の想像力,感受性,受容性を今以上に高める必要がある. |
キーワード | 性的マイノリティ高齢者,高齢者介護,地域支援,アウトリーチ,「見えない存在」への想像力 |
論文名 | <U.各論> 高齢者医療における「性の多様性」と「健康格差」;米国における状況とイリノイ州シカゴ市の事例 |
著者名 | Masami Takahashi,Akane Kumagai |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(5):545-550,2021 |
抄録 | 日本でもLGBTQに関する議論が始められているが,LGBTQ高齢者が直面する健康格差など踏み込んだ研究や問題提起は今後の課題であろう.ここでは,欧米における「性の多様性」の根本にある差別・迫害に関するさまざまな問題点を明確にするとともに,それらが当事者と既存の高齢者医療システムの間に溝をつくっている理由を探る.また,シカゴ市などで行われているLGBTQ高齢者のメンタルヘルスに特化したプログラムの紹介をする. General discussion regarding LGBTQ people in Japan had recently emerged, but a more concerted effort to examine specific issues, such as aging and health disparity, is urgently needed. This paper delineates several problems underlying gender-based discrimination and harassment, and how such problems create gaps in the existing medical delivery system through which many older LGBTQ adults fall. In addition, a few innovative mental health programs targeted at the older LGBTQ population in Chicago, Illinois are presented. |
キーワード | LGBTQ,性の多様性,健康格差,高齢者医療,イリノイ州シカゴ市 |