論文名 | 新型コロナウイルス感染症流行の影響;認知症や精神障害がある高齢者の人権という観点から |
著者名 | 粟田主一,笠貫浩史,加藤伸司,川勝 忍,小林清樹,齋藤正彦,真田順子,繁田雅弘,古田 光,池田 学,日本老年精神医学会新型コロナウイルス感染症影響調査ワーキンググループ |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):379-389,2021 |
抄録 | 日本老年精神医学会において,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行が認知症や精神障害がある高齢者に及ぼした影響について調査した.その結果,人権侵害にかかわる5つのテーマ(@高齢者施設等における集団感染発生への備えの不足,Aサービス利用についての差別,B過剰な行動制限と説明責任の不履行,C地域や施設内での社会的孤立,D介護負担や虐待のリスク)が可視化され,今後の対応に関する7領域のテーマ(@高齢者施設等における集団感染発生への備え,A感染者の受け入れ,治療体制,検査体制の整備,B感染予防対策のあるサービスの確保と継続,C社会的孤立への対策,D精神的・身体的健康問題への対策,EICTなどによる新たなモダリティの開発と普及,F感染対策のキャパシティ・ビルディング)が生成された. |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症,認知症,精神障害,高齢者,人権 |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症流行が認知症医療に及ぼした影響 |
著者名 | 新美芳樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):390-396,2021 |
抄録 | 認知症診療において新型コロナウイルスはさまざまに影響する.死亡や重症化のリスクが上昇する可能性があるほか,新型コロナウイルス感染症がさまざまな神経症状や精神症状を合併する可能性がある.また,医学的な影響のみならず,感染予防のための外出抑制などが認知症の症状や行動・心理症状(BPSD),合併症の悪化につながる可能性もある.これらの要因について,日本認知症学会専門医を対象にしたアンケート結果とともに概説した. |
キーワード | 認知症,新型コロナウイルス |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症流行が介護事業所の認知症ケアに及ぼした影響 |
著者名 | 石井伸弥 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):397-403,2021 |
抄録 | 介護施設入所者は新型コロナウイルス感染症死亡者に占める割合が高い.介護施設対象の調査では,面会制限など感染予防のための日常生活上の制限によって行動・心理症状の出現,悪化を含めたさまざまな悪影響が認知症高齢者に現れていること,感染もしくは感染が疑われた際に行動・心理症状によって対応が困難となることが明らかになった.それに対して,認知症対応のための手引きの作成など含めたさまざまな支援の取組みが進められている. |
キーワード | 認知症,介護施設,新型コロナウイルス感染症,感染予防 |
論文名 | 認知症ケアの現場での感染対策;現状と今後の課題 |
著者名 | 加藤伸司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):404-409,2021 |
抄録 | 日本認知症ケア学会が行った調査では,消毒や換気の徹底,配置の工夫,面会制限,スタッフの健康管理と行動制限,オンライン会議の導入など,認知症ケアの現場ではさまざまな感染症対策が行われていた.窓越しやオンライン面会などの工夫もみられたが,面会制限による双方の心理的ストレスや,利用者のマスク着用拒否,受け入れ病院の確保,出勤制限によるスタッフ不足などが課題となっていた.今後は,疲弊するスタッフに対するメンタルヘルスも重要な課題である. |
キーワード | COVID-19,新型コロナウイルス感染拡大,認知症ケア,感染対策,メンタルヘルス |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症の流行が認知症とともに生きる人に及ぼした影響について |
著者名 | 鈴木麻希,橋本 衛,池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):410-417,2021 |
抄録 | 2020年4月の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言後に実施した筆者らの調査から,感染拡大により,@介護者は認知症者以上に心理的ストレスを感じていること,Aそのストレス要因はさまざまで,患者に感染予防対策を徹底させることの困難さや,感染への恐れからサポート資源の利用控えなどの影響が考えられること,を紹介した.またストレス要因を考慮した介護者への心理的サポートや,過度な感染への恐れを軽減する対策の必要性について述べた. |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症,認知症,介護者,介護負担,心理的ストレス |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症を合併した精神障害者治療の経験から |
著者名 | 齋藤正彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):418-423,2021 |
抄録 | 2020年4月1日〜2021年3月31日までの期間に東京都立松沢病院に,新型コロナウイルス感染によって入院した精神障害者は238人に上る.このほか,通常の身体合併症医療,精神科三次救急医療などの行政医療を維持するために,1年間で1,000件を超えるPCR検査を行ってきた.これらの経験から,認知症,統合失調症によって生活の自立が維持できない高齢者の感染リスクの高さ,在宅生活支援の脆弱性が明らかになった. |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症,集団感染,認知症,精神科病院,高齢者施設 |
論文名 | 当院におけるクラスターの発生とその後 |
著者名 | 牧 徳彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):424-428,2021 |
抄録 | 2020年5月に発生した当院関連の新型コロナウイルス感染症の集団発生について,病院管理者として対応に苦慮した点をいくつか挙げた.なかでも,初動対策は非常に重要である.当院では,全患者・職員に対してPCR検査を施行した結果,全体像が速やかに把握でき,その後のゾーニングに役立った.ただ,状況説明やPCR検査実施の同意取得など,高齢患者や認知症患者などへの対応には十分な配慮を要した.病院は速やかに情報整理を行い,運営方針を決定する必要がある.また,通常診療と感染対策との両立は,職員に大きな負担を強いるため,労働衛生管理を常に念頭におく必要がある.職員のメンタルヘルスへの影響は,およそ1年経過する現在も大きい.当院は,重点医療機関として指定を受けた以降は,感染症指定医療機関の後方支援として,急性期の治療を終えた認知症患者を主に受け入れている. |
キーワード | 院内クラスター,初動対策,労働衛生管理,メンタルヘルス |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症流行と高齢者医療介護に関する東京都医師会の取組み |
著者名 | 平川博之 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):429-436,2021 |
抄録 | 東京都医師会は「医療崩壊」と「介護崩壊」は表裏一体ととらえ,介護領域の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に積極的に取り組んできた.本稿では,@「東京都多職種連携連絡会」緊急調査,A「東京都新型コロナウイルス感染症対策医療介護福祉サービス等連携連絡会」設立,B感染予防用具供給支援,C介護現場用感染対策資料作成,D介護福祉分野の要望提出,E広報・啓発活動等,高齢者医療介護に関連する当会の取組みを報告した. |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症,医療崩壊と介護崩壊,感染症対策フローチャート,応援職員派遣事業,感染症回復後要介護高齢者受け入れ事業 |
論文名 | 施設内感染が発生した高齢者施設に対する職員応援体制;宮城県での取組み |
著者名 | 山崎英樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):437-451,2021 |
抄録 | 高齢者施設で新型コロナウイルス感染症が発生すれば,勤務の可能な職員が一気に不足する一方で,業務は一気に増える.法人の枠を超えた職員応援体制がなければ介護崩壊に至る可能性が高い.本稿では,宮城県での取組みとともに,他施設への直接応援と自施設での発生事例を報告した.県域で応援体制を構築するには,法人枠を超えて危機感を共有し,対応策への合意を得る場が事前に準備されなければならない. |
キーワード | 高齢者施設,新型コロナウイルス感染症,介護クラスター,介護崩壊,職員応援体制 |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症禍における高齢者の認知機能への対策;鳥取県伯耆町の取組み |
著者名 | 河月 稔,浦上克哉 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):452-459,2021 |
抄録 | 本稿では,コロナ禍で行われた鳥取県西伯郡伯耆町の2つの認知症関連事業(認知機能低下予防のための教室と認知症検診)について筆者らの考察を交えながら紹介し,@ウィズコロナ社会における地域在住高齢者への支援の必要性,A新型コロナウイルス感染拡大防止のための活動自粛中における生活と認知機能との関連についての分析より考えられた,再度自粛せざるを得ない場合の備えとして必要なこと,について論じた. |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症,認知機能,予防,生活習慣,意識,感染対策 |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症下における大都市の大規模集合住宅に住む高齢者の支援 |
著者名 | 岡村 毅,杉山美香 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(4):460-467,2021 |
抄録 | 新型コロナウイルス感染症の流行下の高齢者支援においては,いわば「守り」としての感染予防と,「攻め」としての孤立回避の介入が必要である.東京都下の大規模団地でcommunity-based participatory research(CBPR)という枠組みで,地域住民と研究者が信頼関係を築き,ともに課題に取り組む研究を行っており,集いの場,専門家による相談応需地域会議,学びの場などの活動をしてきた.本稿では,新型コロナウイルス感染症下においてどのように対応したのかをまとめた. |
キーワード | 団地,新型コロナウイルス感染症,社会的孤立,認知機能低下,情報発信 |