老年精神医学雑誌 Vol.32-3
論文名 わが国における『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン』作成のこれまで
著者名 秋葉ちひろ,中島 円,宮嶋雅一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):277-283,2021
抄録 2004年の『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン』初版刊行から15年あまりの間に数々の重要な臨床研究が行われ,特発性正常圧水頭症(iNPH)診療に関するエビデンスが次々に確立されてきた.それに伴い診療ガイドラインも改訂を重ね,2020年には第3版が発刊され,iNPH研究の先進国としてのわが国の役割は国際的にも認識されている.本稿では,わが国におけるiNPH診療ガイドラインの流れとそれぞれの特色についてまとめた.
キーワード 診療ガイドライン,SINPHONI,多施設共同研究,evidence-based medicine(EBM)
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論文名 特発性正常圧水頭症の臨床症状と評価方法の最近の進歩;『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第3版』 にみる,精神科での診療ポイント
著者名 鐘本英輝
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):284-292,2021
抄録 "精神科臨床において,特発性正常圧水頭症(iNPH)を診療するうえでのポイントとして,本稿ではiNPH診療ガイドライン 第3版を踏まえつつ,以下の点を概説した.
・iNPHの治療可能性のある認知症としての精神科での鑑別の重要性
・良好な予後を得るための早期診断の重要性とsuspected iNPHの位置づけ
・鑑別のために把握すべき歩行障害,認知障害,排尿障害,行動・心理症状(BPSD)の特徴
・精神科を受診するiNPH患者の症状の特殊性
・タップテストによる評価法と注意点"
キーワード 特発性正常圧水頭症(iNPH),脳脊髄液排除試験(タップテスト),Timed Up & Go test(TUG),Mini-Mental State Examination(MMSE),特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第3版
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論文名 特発性正常圧水頭症の神経画像の最新知見
著者名 宮ア晃一,石井一成
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):293-303,2021
抄録 "・特発性正常圧水頭症の診療では,その特徴的な画像所見を適切に評価することが求められる.
・2020年に版が改まった診療ガイドラインにおいても画像所見は診断の基幹となっている.
・類似疾患との鑑別には水頭症脳の解剖学的特徴を定量的にとらえる指標を的確に用い,それらの閾値の知識が必須である.
・臨床研究としても,未解明である特発性正常圧水頭症の病態を説明しうる報告が神経画像領域から相次いでいる."
キーワード iNPH,DESH,Evans Index,callosal angle,neuroimaging
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論文名 特発性正常圧水頭症のリスク遺伝子,リスクファクター,AVIM
著者名 伊関千書
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):304-310,2021
抄録 "・特発性正常圧水頭症(iNPH)のリスク遺伝子として脳実質内毛細血管壁などに分布するSFMBT1遺伝子(のコピー数欠失)がある.また,家族性正常圧水頭症(fNPH)の原因遺伝子として繊毛構造に影響するCFAP43遺伝子のミスセンス変異が報告されている.
・高血圧などの血管性リスクファクターは,iNPHのリスクファクターとしても疫学的に注目されている.
・iNPHのリスク状態として,AVIM(asymptomatic ventriculomegaly with features of iNPH on MRI)の存在は注目すべきである.
・遺伝子変異,血管性リスクファクター,AVIMは,iNPHの病態やその進展の解明の緒となりうる."
キーワード リスク遺伝子,原因遺伝子,血管性リスクファクター,AVIM,preclinical
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論文名 特発性正常圧水頭症の鑑別診断
著者名 菅野重範
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):311-319,2021
抄録 『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン』が公表されて約16年経過したが,今でも診察医の鑑別診断能力が特発性正常圧水頭症(iNPH)患者の予後を大きく左右する.先天性もしくは発達性の異常に伴う水頭症との鑑別では,iNPHと異なり第三脳室開窓術が推奨される点において重要である.神経変性疾患に関しては,iNPHとの鑑別だけではなく,iNPHと併存している可能性があることを意識する必要がある.併存疾患の存在を踏まえたシャント術の適応判断が,iNPHの診療における今後の課題である.
キーワード Alzheimer’s disease,congenital hydrocephalus,dementia with Lewy bodies,differential diagnosis,idiopathic normal pressure hydrocephalus,progressive supranuclear palsy
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論文名 特発性正常圧水頭症に対するシャント術と内科系医師と脳神経外科医との診療連携
著者名 鮫島直之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):320-325,2021
抄録 特発性正常圧水頭症(iNPH)は,国内2つの多施設共同ランダム化比較試験でシャント術の有効性が示された.とくに脳への穿刺を必要としないLPシャント(腰部くも膜下腔−腹腔短絡術)は,低侵襲な手術として最近注目されてきている.LPシャントの現状と展望について,特有な合併症を回避するための最新の手術法の工夫とともに解説する.iNPHを的確に診断して治療につなげ,術後シャント効果が最大限となるための内科系医師と脳神経外科医の連携の取組みを紹介する.
キーワード iNPH,LPシャント,シャント手術合併症,シャント圧設定,診療連携
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論文名 わが国における特発性正常圧水頭症に対する多施設共同研究;SINPHONIからSINPHONI-3まで
著者名 數井裕光
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(3):326-333,2021
抄録 わが国において,SINPHONIとSINPHONI-2という特発性正常圧水頭症(iNPH)に対する2つの多施設共同研究が実施され,iNPH患者に対して脳室−腹腔シャント術(VPS),あるいは腰部くも膜下腔−腹腔シャント術(LPS)を適切に実施することによって,6〜7割の患者で日常生活上の自立度が改善することが明らかになった.さらに現在,「アルツハイマー病病理を併存しているiNPH患者にシャント術を実施すべきか否か」という臨床疑問に回答するためにSINPHONI-3が実施されている.
キーワード iNPH,シャント術,有効性,安全性,modified Rankin Scale
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