論文名 | 高齢期うつ病の特徴とその診断に関して |
著者名 | 門司 晃 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1253-1259,2021 |
抄録 | わが国の人口の高齢化に伴い,とくに女性を中心に,高齢の気分障害の患者数が大きく増加している ことがしばしば指摘されている.高齢期うつ病は,精神運動制止症状としての記憶障害や反応や動作 の緩慢化が前景に立つために,一見認知症に類似した「うつ病性仮性認知症」と呼ばれている病態を 示すことが多い.一方で,アルツハイマー病(AD)を含む多くの認知症の初期症状が抑うつ状態で あることは周知の事実である.高齢期うつ病の治療に必須なのは,この「うつ病性仮性認知症」と認 知症を鑑別することである.うつ病か認知症かというような横断的な二分法に臨床的意義は乏しく, まずは薬物療法を含む「気分障害」としての治療を先行しながら,将来的な認知症への移行の可能性 を常に想定し,神経画像や認知機能検査を縦断的に行う必要がある.高齢期うつ病にとどまらず,気 分障害全体が認知症,とくにAD のリスク因子となることも繰り返し報告されているが,他のリスク 因子のひとつとして挙げられているのが糖尿病をはじめとする生活習慣病である.うつ病と糖尿病は 双方向性に合併しやすいことが知られているが,うつ病と糖尿病の合併は,心血管イベントによる死 亡リスクや認知症リスクを相加的に上昇させる.し |
キーワード | late-life depression,depressive pseudodementia,dementia,dementia with Lewy bodies, Alzheimer’s disease, diabetes mellitus,metabolic syndrome,inflammation |
論文名 | 高齢期のうつ病における難治性の背景 |
著者名 | 馬場 元 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1260-1265,2021 |
抄録 | 高齢期のうつ病は,一般成人のうつ病と比べて治療に対する反応性が乏しく,難治化しやすい.その 背景には,通常の脳の加齢性変化に加えて,一部の患者では脳血管障害や認知症性の病理変化などが, 脳の器質的ならびに機能的要因として存在するものと考えられる.また,身体的な健康状態や社会的 状況,生活状況の悪化などが心理・社会的背景として難治化に影響を与えるであろう.さらに,こう した加齢による直接的な影響だけではなく,身体合併症やそれに対する薬剤も難治化に影響を与える ので,実臨床においては,こうした患者背景を考慮した対応が求められる. |
キーワード | うつ病,高齢,難治,治療抵抗性,予測因子 |
論文名 | 高齢期うつの脳器質性要因 |
著者名 | 河上 緒・池田研二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1266-1272,2021 |
抄録 | 高齢期「うつ」の生物学的因子に関して,うつ病と認知症は鑑別の対象であるだけでなく,うつ病は 認知症のリスクファクターであることが判明している.高齢期うつは,認知症疾患の初期のみならず, 正常加齢においても頻度の高い症状のひとつである.本稿では,高齢者うつ病の器質的背景となりう る正常加齢に伴う神経病理学的変化についてふれ,アルツハイマー病,高齢者タウオパチーやレビー 小体型認知症などの,高頻度にうつ病の合併を伴う変性性認知症の神経病理像や,うつ病の臨床的特 徴を解説 |
キーワード | 高齢期うつ,leukoaraiosis,アルツハイマー病,高齢者タウオパチー,レビー小体病 |
論文名 | 高齢期「うつ」に関連する心理的要因―― 喪失,孤独,不安,無気力 |
著者名 | 新村秀人 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1273-1279,2021 |
抄録 | 高齢期「うつ」に関連する心理的要因として,喪失,孤独,不安,無気力につき概説した.高齢者は 身体機能・仕事・親役割などの喪失や死別を経験する.夫婦のみ世帯・単身世帯が増え,対人交流が 減り孤独を感じる高齢者が増えている.孤独はうつと関連する.高齢者はIT 機器を使いこなせず社 会生活が不自由と感じる.認知症・寝たきり・死・苦痛に対する不安,経済的不安がある.アパシー は無気力をきたす.コロナ禍での対人交流減少は高齢期うつのリスクとなる. |
キーワード | 高齢,うつ,喪失,孤独,不安,無気力 |
論文名 | 高齢期「うつ」の地域支援 |
著者名 | 藤瀬 昇ほか |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1184-1190,2021 |
抄録 | ・ わが国における大規模縦断研究により,高齢期「うつ」のさまざまな心理・社会的予測因子が報告
されている. ・ 高齢期の「閉じこもり」と「うつ」は密接に関連しており,近年は,精神・心理的および社会的フ レイルという概念も提唱されている. ・ 筆者らが熊本県A 町において2008 年から取り組んでいる高齢期「うつ」の予防介入について概説 した.電話調査の有用性が示唆され,とくにコロナ禍における高齢期「うつ」の対策ツールのひと つとなりうると考えられた. |
キーワード | 高齢期,うつ,閉じこもり,地域介入 |
論文名 | 高齢者のうつ病に対する薬物療法 |
著者名 | 舩槻紀也・加藤正樹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1288-1297,2021 |
抄録 | 日本うつ病学会の『高齢者のうつ病治療ガイドライン』において,薬物療法では,安全性・忍容性の 観点から新規抗うつ薬[SSRI・SNRI・NaSSA・S-RIM]の使用が推奨されている.本稿では,薬物 治療の基本的な概略に加えて,『高齢者の治療抵抗性うつ病』に対しても,その注意点,限界点を示 す.また,薬物療法に加えて,電気けいれん療法(ECT)や反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の適応 や有効性,薬物療法との併用に関しても述べる. |
キーワード | 高齢者,うつ病,治療抵抗性,効果増強療法,ECT,rTMS |
論文名 | 高齢期「うつ」の予防と非薬物的介入の実際 |
著者名 | 長谷川雅美 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1298-1306,2021 |
抄録 | うつ病対策とうつ予防に関する非薬物的なアプローチについては,精神療法をはじめとしたさまざま な療法が実践されているが,本稿は,在宅で高齢期を迎えた人々を対象に,うつ対応と予防に関する 介入の実際について述べた.ここでは看護の視点から,対応時の観察ポイントや言葉かけの注意点を 述べ,筆者自身が経 |
キーワード | 非薬物的介入,予防,高齢期うつ |
論文名 | 新型コロナウイルス感染症と高齢期のうつと関連する病態 |
著者名 | 高橋 晶 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,32(12):1306-1317,2021 |
抄録 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) は, 高齢者にも強い影響を及ぼしている.関連するうつ症状 は大きな問題である.生物学的要因として新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の脳への直接的感染, 血管障害,血栓形成などが指摘されている.一方,社会的要因としては,高齢者を取り巻く社会環境 は変化している.感染制御対策のため,外出が困難になったことによって,身体・精神的な影響を生 じ,社会的な孤立を生み,経済的な要因も影響がある.まだ,未解明の点も多いため,医療的な治療 と,社会的な支援などを適切に行い,患者に害が出ないように,慎重に対応することが求められる. |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19),SARS-CoV-2,うつ病・うつ状態,感染後の後遺 症・遷延する症状(post COVID conditions,long COVID),高齢者 老年精神医学雑 |