老年精神医学雑誌 Vol.32-11
論文名 アルツハイマー病のAβ標的薬:Aβワクチンと抗Aβ抗体
著者名 玉岡 晃
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1133-1140,2021
抄録 アルツハイマー病の臨床試験では,免疫治療も含めて多くの疾患修飾薬の治験が進められてきたが,ほとんどは失敗に終わっている.ごく最近,アミロイドβ蛋白に対するモノクローナル抗体であるAducanumabが,新たな無作為化比較試験(RCT)実施という条件付きながらアメリカ食品医薬品局(FDA)によって迅速承認された.本稿では,代表的な神経変性疾患であるアルツハイマー病の免疫療法について,アミロイドβ蛋白に対する能動免疫(ワクチン療法)と受動免疫(抗体療法)の開発経緯から最新治療実績までを概説した.
キーワード アルツハイマー病,アミロイドβ蛋白,免疫療法,能動免疫,受動免疫
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論文名 Aβを標的としたアルツハイマー病
著者名 田上真次,柳田寛太,池田 学,武田雅俊,大河内正康
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1141-1153,2021
抄録 アルツハイマー病(AD)脳に特徴的な病理変化は,老人斑と神経原線維変化の沈着である.老人斑の主成分は42アミノ酸からなるアミロイドβ蛋白42(Aβ42)が神経細胞外に蓄積したものである.Aβは,アミロイドβ前駆体蛋白(βAPP)がまずβ-セクレターゼ(BACE1)により細胞外ドメインがシェディングされたあと,引き続いてγ-セクレターゼによる膜内蛋白分解を受けて産生される.Aβの蓄積がAD病理の引き金になると考えられており,その産生を阻害したり,修飾する薬剤が疾患修飾薬候補として開発され,これらを用いて数多くの治験が行われてきた.しかし,残念ながらそのいずれも実用化には至っていない.加えて,一部のγ-セクレターゼ阻害剤やBACE阻害剤により,逆に認知機能の低下をきたす反応が認められた.本稿ではこれらの薬剤開発を振り返り,疾患修飾薬を用いたAD治療の今後の見通しについて述べる.
キーワード アルツハイマー病,アミロイドβ蛋白(Aβ),γ-セクレターゼ阻害剤,γ-セクレターゼ修飾薬,BACE阻害剤,γ-バイプロダクト
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論文名 アルツハイマー病に対するタウ標的薬
著者名 角田聡子,宮坂知宏
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1154-1160,2021
抄録 アルツハイマー病に対する抗アミロイド?薬の臨床開発が相次ぎ失敗に終わるなか,代わりに注目が集まったのがタウ標的薬である.塩化メチルチオニニウム(メチレンブルー)を皮切りに高い期待とともに幕開けたタウ標的薬開発であるが,このたいへん注目された凝集阻害薬TRx0237(メチレンブルーの還元体)の第V相試験が2016年に有効性未達に終わるという結果となった.タウ標的薬開発もまた苦難の道なりとなるのか,それとも活路を見いだせるのであろうか.以下,現在までのタウ標的薬開発を述べる.
キーワード tau,Alzheimer’s disease,microtubule,immunotherapy,aggregation 
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論文名 アルツハイマー病に対する非アミロイドβ・非タウ標的の疾患修飾薬開発
著者名 布村明彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1161-1168,2021
抄録 アルツハイマー病(AD)の疾患修飾薬確立に向け,特異的タンパク質を標的にした薬剤の開発のみならず,多元的な治療標的の模索が望まれる.Cummings Jらの『AD創薬パイプライン2021』によれば,治験中の疾患修飾薬候補のうちアミロイド?(A?)あるいはタウを直接的な標的としないものが実に73%に上る.その標的には,炎症・免疫,シナプス可塑性,代謝・生体エネルギー,タンパク質恒常性,血管系要因などが挙げられる.
キーワード アルツハイマー病,疾患修飾薬,多元的治療標的,炎症・免疫,シナプス可塑性,血管系要因
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論文名 タウオパチーおよびその他の前頭側頭型認知症に対する疾患修飾薬開発
著者名 添田義行,高島明彦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1169-1176,2021
抄録 前頭側頭型認知症(FTD)は,60歳以下において最も発症率の高い認知症であるが,根本治療薬はない.その一因としてFTDにおける疾患の理解が十分でなかったことが挙げられるが,現在ではFTDの分子基盤の解明が進み,病因に基づいた疾患修飾薬の開発が進んでいる.具体的には,「タウ」と「プログラニュリン」を標的とした薬剤が主に開発されている.本稿では,このような疾患病態分子を標的とした「FTD疾患修飾薬」の開発状況を解説する.
キーワード タウタンパク質,transactive response DNA-binding protein of 43kDa(TDP-43),タウオパチー,前頭側頭型認知症
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論文名 レビー小体型認知症に対する疾患修飾薬開発
著者名 杉本あずさ,小野賢二郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1177-1183,2021
抄録 ・レビー小体型認知症(DLB)は,パーキンソン病(PD)などとともに,α-シヌクレインが線維状に蓄積・沈着して,神経細胞が障害される疾患群のひとつであり,α-シヌクレイノパチーと総称されている.
・DLBの疾患修飾療法としては,α-シヌクレインを標的としたものやその他があり,主として同じくα-シヌクイレノパチーであるPDの患者を対象として開発が進められている.
・α-シヌクレインを標的とした疾患修飾療法として,凝集阻害や,抗体あるいはワクチンによる免疫療法が検討されている.
キーワード α-シヌクレイノパチー, α-syn遺伝子 (SNCA), α-シヌクレイン凝集阻害, α-シヌクレインオリゴマー抗体, α-シヌクレインペプチドワクチン
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論文名 本邦におけるトライアルレディコホートの構築と研究推進に向けた取組み
著者名 佐藤謙一郎,岩坪 威
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1184-1190,2021
抄録 脳にアミロイド蓄積が始まっているが認知症には至っていない,アルツハイマー病(AD)の前駆段階に対する疾患修飾薬の投与が認知症発症予防の対象として有望視されている.臨床試験の対象として無症候の超早期者をリクルートすることには一般に困難が多く,臨床開発の促進を視野にあらかじめ治験即応コホート(Trial-Ready Cohort)を形成しておく産学連携の取組みが始まっている.ここでは,本邦で2019年11月から開始されたJ-TRCについて,その意義とこれまでの経過について概説する.
キーワード アルツハイマー病,治験即応コホート,Trial-Ready Cohort,J-TRC,プレクリニカル期
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論文名 iPS細胞を用いた認知症疾患修飾薬の開発
著者名 奥宮太郎,坂野晴彦,井上治久
雑誌名
巻/号/頁/年
老年精神医学雑誌,32(11):1191-1201,2021
抄録 ・認知症疾患の疾患修飾療法の開発が急務である.
・iPS細胞技術により認知症患者由来から疾患特異的iPS細胞が作製されている.
・疾患特異的iPS細胞から分化誘導した脳神経系細胞は,疾患モデルとして広く用いられており,病態研究・治療薬候補の探索が進んでいる.
・疾患特異的iPS細胞を用いたドラッグ・スクリーニングとin vitroトライアルは,認知症疾患の治療薬開発に役立つ可能性がある.
キーワード 認知症,iPS細胞,in vitroトライアル,アルツハイマー病,プレセニリン1
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