論文名 | 特集にあたって:急性期病院での導入と医師の役割 |
著者名 | 三品雅洋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):795-802,2020 |
抄録 | 認知症患者の増加に伴い,認知症の人の身体疾患での入院も当然増加する.それに対応するため,2016年に認知症ケア加算が保険収載され,「認知症ケアチーム」が普及してきた.本特集「認知症ケアチームの実践のために」を通して,認知症ケアチーム実践のための標準的な手法や知識を提案できれば幸いである. |
キーワード | 認知症ケアチーム,認知症ケア加算,身体疾患,身体拘束,教育 |
論文名 | 認知症ケアチームを効果的に運営する |
著者名 | 酒井郁子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):803-810,2020 |
抄録 | 2016年の診療報酬改定で,認知症ケア加算が診療報酬に導入され,入院時から積極的な認知症ケアを効果的に提供できるような体制整備を行うことへの評価が可視化された.一方,多職種から構成される認知症ケアチームとしては,体制整備は推奨されていても,そのチームアプローチの質を問うものではなく,玉石混交といった状態になっている可能性がある.本論考では,まず,認知症ケア加算を概説し,実際に認知症ケアの質を左右するチームアプローチに必要な基本的な知識を整理して論述する.そして,認知症ケアをチームアプローチにより効果的に運営するためのポイントを解説することを目的とした. |
キーワード | 専門職連携,認知症ケアチーム,チームアプローチ |
論文名 | 入院した認知症患者のアセスメント |
著者名 | 湯浅美千代,佐藤典子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):811-816,2020 |
抄録 | 一般病院に治療のために入院する認知症患者の多くは高齢者であり,看護するうえでアセスメントすべき内容は多く,そこには問題が複雑に絡み合っている.したがって,それを1つずつ紐解くアプローチが必要である.認知症ケアチームと病棟看護師が患者について話し合い,情報を共有してアセスメントを導き,そのアセスメントに基づいた看護を行って成果を実感することが認知症看護の教育につながる. |
キーワード | 認知症患者,看護,アセスメント,認知症ケアチーム,一般病院 |
論文名 | 認知症の人とのコミュニケーション方法 |
著者名 | 高見美保 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):817-822,2020 |
抄録 | 認知症の人とのコミュニケーションでは,「聴く・(相手を)理解する・伝える」という相互の循環的なやりとりが重要であり,このようなコミュニケーションを重ねることで,認知症の人が有している力が引き出され,認知症の人の生活がより安寧なものになっていくことが期待できる.そして,コミュニケーションから始まる日々のケアが“認知症の人の生活や人生にどうつながっていくのか”をイメージすることが,認知症ケアチームの実践力を支える基盤になると考えられる. |
キーワード | 認知症の人,コミュニケーション,ユマニチュード,バリデーション,回想法 |
論文名 | 認知症でのせん妄の予防と対策 |
著者名 | 岸 泰宏 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):823-830,2020 |
抄録 | 認知症はせん妄発症の背景因子として重要なものであり,せん妄発症の最大の危険因子のひとつである.認知症とせん妄は,病状がオーバーラップしていることも多く,鑑別診断は困難なことも多い.認知症症例を対象としたせん妄のスクリーニングはなく,今後の研究・開発が必要な分野である.また,せん妄の予防ならびに治療に対して,薬物療法は高いエビデンスをもつものはない.せん妄発症時には,抗精神病薬が使用されることが多いが,必要時に最低限の期間・量での使用にとどめるべきである.なお,抗精神病薬の予防投与は勧められていない.認知症症例に特化した非薬物療法的せん妄予防法はないが,高齢者に対して有効とされている多面的非薬物療法的介入法の体系的な導入が勧められる.多面的な予防策が必要であり,リエゾンチームのケアの調整としての役割も期待される. |
キーワード | せん妄,認知症,薬物療法,非薬物療法的介入 |
論文名 | 認知症高齢者の摂食嚥下障害;その病態と対応 |
著者名 | 野原幹司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):831-837,2020 |
抄録 | ・人生の最終段階に近づきつつある認知症高齢者において,「食べる」という行為は,栄養摂取以外にもさまざま重要な意義をもつ. ・認知症高齢者の摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)は,「キュア=治す・訓練」ではなく,「ケア=支える・支援」の視点が適している. ・摂食嚥下障害の病態は,認知症の原因疾患によって異なるため,原因疾患に基づいた嚥下リハがポイントとなる. ・医師は,マネジャーとして摂食嚥下ケアチームに参加すべきである. |
キーワード | 摂食嚥下障害,摂食嚥下リハビリテーション,4大認知症,認知症の原因疾患 |
論文名 | 医療現場における認知症の人の意思決定の支援 |
著者名 | 杉原百合子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):838-845,2020 |
抄録 | 認知症を併存している人の医療現場における意思決定支援には,本人の判断指標となるものへの理解が必要である.それには,認知症の進行以前または早い段階から適切な言語的および非言語的コミュニケーションにより,本人の価値観や好み,こだわり等の思いを読み取り,日常のケアにもそれらを尊重して,本人らしい生活のあり方を丁寧に整えることが重要である.そして,入退院時にそれらの情報を関係者間で共有して的確に引き継ぐシステム構築が求められる. |
キーワード | 認知症,意思決定,価値観,日常のケア,情報を引き継ぐ |
論文名 | 認知症の人の家族への支援 |
著者名 | 北川公子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):846-851,2020 |
抄録 | 認知症ケアチームによる家族支援として,@研修会の開催,Aスタッフが相談できる院内体制の構築,B関わり方のモデルの提示,の3点による「医療スタッフの対応力向上への支援」,@レスパイトケア,A制度や介護方法に関する情報提供・指導,B外来機能を用いた中長期支援,の3点による「介護負担の軽減に向けた支援」,さらに拡大チームによる「意思決定を求められる家族への支援」の重要性を指摘した. |
キーワード | 認知症の人,介護負担,家族支援 |
論文名 | 認知症の人への退院後の支援 |
著者名 | 長畑多代 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):852-858,2020 |
抄録 | 2025年に向けた地域包括ケアシステム構築が進むなか,急性期病院は,認知症の人が暮らしている地域や社会背景を理解したうえで,地域との連携体制を構築して,「時々入院,ほぼ在宅」への支援の一端を担うことが求められている.身体合併症を抱える認知症の人の退院後の生活を支えるためには,入院による生活機能の低下を最小限にとどめ,本人のセルフケア能力と家族の介護力を見極めつつ,それぞれの生活スタイルに合った医療管理により在宅生活の継続を支援することが重要となる. |
キーワード | 地域包括ケアシステム,認知症施策推進大綱,身体合併症,身体疾患再発予防,医療と介護の連携 |
論文名 | 認知症看護認定看護師の役割と育成 |
著者名 | 窪田裕子,三品雅洋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):859-866,2020 |
抄録 | 日本は世界に類をみない超高齢社会である.団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は,国民の医療や介護の需要が,さらに増加することが見込まれている.国は,重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう,「地域包括ケアシステム」の構築を推進している.認知症のある人も自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す「認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)」が2015年に策定された.急性期病院における認知症看護は必須であり,認知症の人が安心して治療ができるように認知症看護認定看護師(DCN)として活動している. |
キーワード | 新オレンジプラン,認定看護師(CN),アセスメント,行動制限,倫理 |
論文名 | 認知症ケアチームでの医療ソーシャルワーカーの役割と育成 |
著者名 | 上原嘉子,三品雅洋 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(8):867-871,2020 |
抄録 | 本稿では,身体疾患で入院した認知症の人に対する認知症ケアチームにおける医療ソーシャルワーカーの役割について明らかにした.医療ソーシャルワーカーは,認知症ケアチームの構成メンバーのなかで唯一の福祉職として,本人の退院後の生活を見据えて福祉の立場から支援を行っている.認知症の人,家族,多職種,地域に視点をおいて支援を行っている医療ソーシャルワーカーの役割について考察した. |
キーワード | 医療ソーシャルワーカー,社会福祉士,相談援助,地域包括ケアシステム,入退院支援加算 |