論文名 | 特集にあたって;なぜ,今,炎症なのか |
著者名 | 池田 学 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):685-685,2020 |
抄録 | |
キーワード |
論文名 | <T.総論> 神経炎症とミクログリア |
著者名 | 錫村明生 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):686-692,2020 |
抄録 | ミクログリアは脳内の自然免疫を担う単球系細胞である.多様な精神・神経疾患の病変部位には活性化ミクログリアが認められる.これらは従来,静的な瘢痕(グリオーシス)ととらえられていたが,より活発に病態発現に関与するミクログリア主体の神経炎症と考えられるようになっている.ミクログリアは神経傷害とその修復機構双方に重要な役割を果たしており,神経炎症の慢性的な持続機序にも関与している.ミクログリアを標的とした神経炎症の制御により,新たな治療戦略の可能性が示されている. |
キーワード | ミクログリア,神経変性,神経炎症,精神・神経疾患 |
論文名 | <T.総論> 神経炎症のイメージング |
著者名 | 尾上浩隆 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):693-702,2020 |
抄録 | 神経炎症は,外傷,感染症,神経細胞の変性にミクログリア等の脳内における免疫担当細胞が反応し,さまざまな分子を動員して起こす複雑で動的なプロセスである.陽電子放出断層撮影法(PET)は,生体内で生化学的変化を高感度で検出する方法であり,神経炎症の画像化に有用なツールとして期待されている.アルツハイマー病など,神経炎症がさまざまな神経病理に関与しているという最近の知見から,診断や治療モニタリング,または新しい治療法の開発の指針となるように,神経炎症を描出するための新しいPETプローブの開発が試みられている. |
キーワード | PET,TSPO,COX,プリン受容体,アデノシン受容体 |
論文名 | <T.総論> 精神疾患におけるミクログリア活性化制御をターゲットとした創薬への期待 |
著者名 | 加藤隆弘 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):703-713,2020 |
抄録 | 統合失調症やうつ病といった精神疾患は,古典的には内因性精神疾患と呼ばれ,脳の器質的変化を伴わない病態と理解されており,神経シナプス間での神経伝達異常が定説とされ,ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質のシナプス間での調整に着目した治療薬開発がもっぱら進められてきた.近年,こうした精神疾患においても脳の器質的変化が報告され,器質的変化を引き起こす一因として炎症の関与も示唆されるようになった.本稿では,筆者らが提唱してきた(主に内因性の)精神疾患における脳内免疫細胞ミクログリアを介した病態治療仮説を紹介するとともに,ミクログリア活性化制御作用が期待される薬剤(物質)をいくつか紹介し,今後のミクログリアをターゲットした創薬を展望する. |
キーワード | ミクログリア,脳内炎症,統合失調症,うつ病,認知症 |
論文名 | <U.各論> アルツハイマー病と炎症 |
著者名 | 遠山育夫 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):714-722,2020 |
抄録 | 本稿では,アルツハイマー病(AD)と炎症について,研究の歴史を振り返りながら解説した.ADの脳内にミクログリアの活性化,炎症性サイトカインの増加,補体の活性化がみられることから,神経炎症仮説が提唱され,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による治療が検討された.ワクチン療法が発表されると,ミクログリアによる保護的作用の重要性が指摘されるようになった.さらに最近では,ミクログリアの多様性や全身性炎症との関連も注目されている. |
キーワード | ミクログリア,サイトカイン,老人斑,ミクログリア,抗炎症薬治療,ワクチン療法 |
論文名 | <U.各論> 筋萎縮性側索硬化症,前頭側頭型認知症と炎症 |
著者名 | 小峯 起,山中宏二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):723-729,2020 |
抄録 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)において,病変部位における神経炎症が観察されており,病態における神経炎症の関与が報告されている.ところが,ALSにおける神経炎症の役割については,ALSモデルマウス(変異SOD1マウス)を用いた研究により次々と明らかにされているが,FTDにおける報告はいまだ少ない.本稿では,ALSにおけるミクログリアと免疫細胞の役割についてモデルマウスを用いた基礎研究を中心に概説し,FTDにおけるミクログリアの役割についても議論する. |
キーワード | 筋萎縮性側索硬化症,前頭側頭型認知症,ミクログリア,アストロサイト,免疫細胞 |
論文名 | <U.各論> 老年期うつ病と炎症;インターロイキン-6(IL-6)を中心に |
著者名 | 星川 大,小西勇輝,池ノ内篤子,吉村玲児 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):730-735,2020 |
抄録 | うつ病は異種性の非常に高い疾患群である.その原因は単純ではなく,特定の病態仮説では説明ができない.これまで, うつ病・老年期うつ病の病態仮説として, モノアミン, 受容体感受性, 神経可塑性 (神経栄養因子) など, さまざまな仮説が提唱されてきた.近年は,神経炎症仮説やマイクロバイオーム仮説などが注目されている.本稿では,炎症仮説や炎症性バイオマーカーに焦点をあてて論じる. |
キーワード | 老年期うつ病,炎症,サイトカイン |
論文名 | <U.各論> 老年期発症の統合失調症と神経炎症 |
著者名 | 門司 晃 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):736-742,2020 |
抄録 | 統合失調症は思春期発症が一般的ではあるが,老年期発症の統合失調症も決してまれではない.国際的なコンセンサスでは,40歳以上発症の統合失調症を遅発性統合失調症(late-onset schizophrenia ; LOS) とし, 60歳以上で発症するpsychosis (精神病症状) を最遅発性統合失調症様精神病 (very late-onset schizophrenia ; VLOS,またはvery late-onset schizophrenia-like psychosis ; VLOSLP)と呼称している.40歳以前に発症する早期発症統合失調症(early onset schizophrenia ; EOS)と比較して,LOSやVLOSLPは女性に多いとされ,EOSに比べて遺伝的要素の関与が低いとされるなど,臨床的に明瞭な差異が存在する.本稿では老年期発症の統合失調症の病態生理における神経免疫系システムの異常,とくにミクログリア(microglia)の役割に関して,最新の研究動向を中心に概説を行った. |
キーワード | late-onset schizophrenia,microglia,neuroinflammation,cytokine |
論文名 | <U.各論> パーキンソン病と炎症 |
著者名 | 斉木臣二 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(7):743-749,2020 |
抄録 | パーキンソン病(PD)病態メカニズムとして,小胞体(ER)ストレス増加,ミトコンドリア機能低下・品質管理機能低下,蛋白分解機能低下,および慢性炎症などが挙げられている.なかでも,何らかの炎症がPDの中枢神経病変進行に関与することは確立されているが,疾患発症のトリガーになるとの明確な根拠は示されていない.また,PDではα-シヌクレイン(αSyn)が中脳黒質の残存神経細胞にだけでなく,自律神経支配を受ける全身臓器(唾液腺・皮膚・腸管・心筋など)に沈着することから,それに伴う各組織の局所性炎症,さらに,その波及効果が脳病変と関連する可能性が示唆されている.これら体内の炎症亢進に合致する所見として,末梢血を用いた炎症性蛋白質・代謝産物変化が多数報告されており,バイオマーカーとしての利活用も期待されている.本稿では,PD病態における炎症に関連する知見を,臨床サンプルから得られたものと実験的に得られたものに分けてまとめた. |
キーワード | パーキンソン病,ミクログリア,全身炎症,腸脳連関 |