論文名 | 神経心理検査バッテリー;結果の解釈と落とし穴 |
著者名 | 今村 徹 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):561-569,2020 |
抄録 | Lezakは神経心理検査における基本原則として以下の3項目を指摘している.@検査のスコアの正常/異常を正常対象の得点分布から得られた「正常値」「正常範囲」で判断してはならない,A検査の結果を量的データのみで判断してはならない,B検査の結果だけで認知機能障害を評価してはならない.これらはいずれも,種々の神経心理学的検査バッテリーに共通して重要な点である.本稿では,それらを実例とともに解説する. |
キーワード | 認知機能検査,正常範囲,病前レベル,質的データ,日常生活機能障害 |
論文名 | <知能>ウェクスラー成人知能検査(WAIS-W) |
著者名 | 松田 修 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):570-588,2020 |
抄録 | ウェクスラー成人知能検査第4版(WAIS-W)は,国内外で広く使用されてきた個別式知能検査バッテリーであるWAIS-Vの改訂版である.WAIS-VからWへの改訂では,言語性IQ(VIQ)と動作性IQ(PIQ)の廃止,ノルムの更新・延長,流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度の測定強化,プロセス得点,一般知的能力指標(GAI)の追加などが行われた.WAIS-Wの適用年齢は16〜90歳である.検査時間の短縮化や図版の拡大など高齢者に使いやすいバッテリーに改良された.下位検査は10の基本検査と5つの補助検査で構成される.臨床・研究上の必要性から一部の下位検査を選択して実施する場合もあろうが,全検査IQ(FSIQ),言語理解指標(VCI),知覚推理指標(PRI),ワーキングメモリー指標(WMI),処理速度指標(PSI)を算出するためには,通常,10の基本検査を実施する.結果は個人間差と個人内差から分析する.実施と解釈の手順は複雑で,適切な訓練を受けた者が担当する必要がある. |
キーワード | 知能検査,WAIS,検査バッテリー,個人間差,個人内差 |
論文名 | <記憶@>ウェクスラー記憶検査(WMS-R) |
著者名 | 村山憲男 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):589-596,2020 |
抄録 | ウェクスラー記憶検査(WMS-R)は,主に記憶機能の評価を目的にした心理検査である.高齢者に対しては,面接や簡便な検査で正常範囲と考えられるケースを対象に,軽度認知障害(MCI)などを示唆する記憶機能低下がないかを詳細に検討するために実施する場合が多い.また,ウェクスラー成人知能検査(WAIS)と組み合わせることで,記憶機能が正常範囲にあるごく軽度の健忘型MCI(aMCI)における記憶機能低下の評価も可能である. |
キーワード | ウェクスラー記憶検査(WMS-R),記憶機能,軽度認知障害(MCI),アルツハイマー病,ウェクスラー成人知能検査(WAIS-W) |
論文名 | <記憶A>認知症診療におけるリバーミード行動記憶検査(RBMT) |
著者名 | 數井裕光 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):597-602,2020 |
抄録 | リバーミード行動記憶検査(RBMT)は,記憶障害による日常生活上の困難を明らかにし,またリハビリテーションなどの介入による効果を測定するために開発された検査である.比較的,短時間で,日常生活場面で起こりうる支障を把握できることは,認知症者の診療においても有用で,結果をそのまま患者本人,介護者にフィードバックできる.また健常高齢者,軽度認知障害者,軽度アルツハイマー病者のデータがあり,診断の助けにもなる.さらに同等の難易度の4つの並行検査が用意されているため,繰り返し評価する必要がある臨床場面でも有用である. |
キーワード | 日常記憶,prospective memory(展望記憶),アルツハイマー病,軽度認知障害,特発性正常圧水頭症 |
論文名 | <言語>標準失語症検査(SLTA) |
著者名 | 飯干紀代子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):603-612,2020 |
抄録 | わが国における代表的な失語症検査である標準失語症検査(SLTA)について,高齢者に実施する目的や留意点を言語聴覚士の立場から述べた.脳血管障害や頭部外傷などによる失語症に加えて,変性性疾患による進行性の失語症,とくに,2015(平成27)年に難病指定を受けた意味性認知症の鑑別資料としてSLTAは有益である.また,低下した機能に加えて,保存された言語機能をSLTAで丁寧に評価することで,高齢期の患者のQOLへの貢献,家族・スタッフとの疎通の支援が期待できる. |
キーワード | 標準失語症検査(SLTA),失語症,高齢者,神経心理検査 |
論文名 | <注意>標準注意検査法(CAT);高齢者における実施や解釈の留意点 |
著者名 | 武田景敏 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):613-619,2020 |
抄録 | 注意機能はすべての認知機能の基盤となるものだが,臨床症状としては気づかれにくく,高齢者ではもの忘れとまちがわれる場合もある.また最近の研究では,高齢者の転倒と注意機能低下が関連するとの報告もある.高齢者に神経心理検査を実施するうえで,加齢による変化を理解することは重要である.本稿では,加齢による注意機能の変化についての最近の知見を概説し,高齢者に標準注意検査法(CAT)を実施するうえでの注意点とその結果の解釈について解説した. |
キーワード | attention,alerting,orienting,executive control,older adult |
論文名 | <遂行機能>BADS遂行機能障害症候群の行動評価 日本版 |
著者名 | 斎藤文恵,三村 將 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):620-627,2020 |
抄録 | 遂行機能は高齢になると低下しやすい機能のひとつである.BADSを実施する目的は,日常場面に近い課題に対する実際の行動をみることで,遂行機能の質的側面やより下位の認知機能障害の影響を検討することにある.対象は明らかな生活障害がない軽度認知障害(MCI)水準,または認知症の初期段階までとすべきである.それ以上の認知機能低下が疑われる場合,机上の検査を行うのではなく遂行機能障害の質問表(DEX)の観察者評価を利用することが望まれる.評価は,得点自体よりも反応の仕方を重視する. |
キーワード | BADS,DEX,遂行機能,新奇性,ワーキングメモリ |
論文名 | <行為>標準高次動作性検査(SPTA) |
著者名 | 河村 満,斎藤聖子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):628-636,2020 |
抄録 | 高齢者に対して行為:標準高次動作性検査(SPTA)第2版を実施する目的,その実施や解釈の留意点を述べた.さらに,アルツハイマー型認知症をはじめとする各種認知症における「失行」などの行為障害についてレビューした.SPTAは,古典的に定義されてきた失行だけでなく,各種脳損傷患者や高齢者にみられる運動麻痺,運動失調,不随意運動,全般的精神機能障害では説明しきれないさまざまな行為障害や巧緻動作機能障害を検出し,高次動作性機能障害の鑑別や分析に有用である. |
キーワード | 行為:標準高次動作性検査,SPTA,アルツハイマー型認知症,失行 |
論文名 | <視知覚>標準高次視知覚検査(VPTA) |
著者名 | 高橋伸佳 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年精神医学雑誌,31(6):637-641,2020 |
抄録 | 視知覚障害は視覚性認知障害(対象の形態や色の認知障害)と視空間性認知障害(対象の空間的位置の認知障害)に分けられる.患者の訴え,行動上の異常,画像検査における病変部位などから視知覚障害の存在を疑った場合には,標準高次視知覚検査(VPTA)のなかの対応する検査項目を選択して,視知覚障害の存在を確認することが必要である.ただし,とくに高齢者では,視力・視野や言語機能,運動機能が検査可能な範囲に保たれていることをあらかじめ確認しておく必要がある. |
キーワード | 視知覚障害,視覚性認知障害,視空間性認知障害,半側空間無視,地誌的失見当 |